肝臓で作られるタンパク質の一種が凝集体となって臓器に沈着する病気
金沢大学の研究グループは、ATTRアミロイドーシスにおいて、アミロイドの沈着が起こりやすくなる仕組みを解明したことを発表しました。
ATTRアミロイドーシスは、トランスサイレチン(TTR)と呼ばれる、肝臓で作られるタンパク質の一種がタンパク質凝集体(アミロイド)として全身の臓器に沈着する病気です。この沈着が起こると、臓器が機能しづらくなり、生命の維持に悪影響が現れます。ATTRアミロイドーシスのうち、遺伝子変異が原因のものは、遺伝性ATTRアミロイドーシス、あるいはトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)などと呼ばれます。
今回、研究グループでは、TTRが組織に沈着する際に、細胞から分泌されている「細胞外小胞」が関連する可能性を検証しました。細胞外小胞とは、細胞の中から細胞の外に放出される、脂質二重膜という二重の膜に包まれた小さい袋です。
まず健康な人の血液中にある細胞外小胞にTTRが存在しているかを調べました。すると、細胞外小胞の膜表面にはTTRが確かに存在していました。その上で、TTRを人工的に取り出して、細胞外小胞と反応させたところ、TTRが集まり凝集している様子が確認できました。遺伝性ATTRアミロイドーシスにおいて遺伝子変異が原因で作られる変異型TTRは、変異型ではないTTRと比較して凝集しやすいこともわかりました。
細胞外小胞の影響でTTRアミロイド沈着が促される
さらに、研究グループは細胞外小胞の影響によってTTRが細胞に沈着しやすくなるのかを調べました。すると、変異型TTRだけでは細胞に沈着することはほとんどありませんでしたが、細胞外小胞と一緒に存在した場合には細胞に沈着しやすくなることが判明しました。
また、変異型TTRを持っているATTRアミロイドーシスの患者さんの血液を調べたところ、細胞外小胞の量が健常者よりも増えていることもわかりました。血液中のTTRアミロイドの量は健常者よりも少なく、細胞外小胞によって、体内の各組織にアミロイドの沈着が促されている可能性が考えられました。
研究グループは今回の研究結果より、細胞外小胞を減らすことによってアミロイドの沈着を防ぐことができる可能性があると指摘しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)