原因不明のSGA性低身長、包括的な遺伝子解析により半数近くの遺伝要因を解明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 原因不明のSGA性低身長140人を対象に複数の手法で遺伝要因を解析
  2. およそ半数で遺伝要因が判明し、大部分はインプリンティング疾患だった
  3. インプリンティング疾患のほか、病気に関連するコピー数異常や遺伝子変異も確認

原因不明のまま治療を受ける場合が多い

国立成育医療研究センターの研究グループは、原因不明のSGA性低身長の遺伝子解析を行い、その原因を特定したことを発表しました。

SGA性低身長は、小さく生まれたこと(small for gestational age:SGA)による低身長のことで、生まれた時に週数で考えた基準よりも身長や体重が小さく、2歳までに成長が追いつかない場合に診断され、大人の低身長の原因の約20%となっています。SGA性低身長は、遺伝要因を含めた母親や赤ちゃんそれぞれが持つ要因、環境の要因などから複合的に起こる症状であり、多くの場合原因不明のままに治療が開始されています。

SGA性低身長症の遺伝要因として、インプリンティング遺伝子と呼ばれる遺伝子の制御の欠失によって起こるインプリンティング疾患や、遺伝子の数が通常よりも多かったり少なかったりするコピー数異常のほか、成長に関係する遺伝子の変異によるものなどが知られていますが、これまで遺伝要因を包括的に調べた研究はありませんでした。

今回、研究グループは原因不明のSGA性低身長の患者さん140人を対象として、複数の手法によって遺伝要因を包括的に解析しました。

インプリンティング疾患の影響が大きい

その結果、解析を行った140人のうち42人は原因がインプリンティング疾患の一つであるシルバー・ラッセル症候群であり、このほか4人がそれ以外のインプリンティング疾患であることもわかりました。SGA性低身長の原因としてシルバー・ラッセル症候群を始めとするインプリンティング疾患の影響が大きいことが示唆されました。

さらに、残りの98人を対象として詳しく調べたところ(コピー数解析と次世代シーケンシングを実施)、8人が病気の原因となるコピー数異常、11人が成長に関連する遺伝子の変異を原因としていることが確認されました。

研究グループは、今回の解析で、全体の46%となる65人の原因を特定することができたことでSGA性低身長症におけるインプリンティング疾患の評価を含めた包括的遺伝子解析の重要性を世界で初めて示したと伝えています。また、SGA性低身長の原因を明らかにできたことで、患者さんにとってより良い医学的な管理が可能となり、病気の理解も進むことが期待できると説明しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

関連リンク