生まれつき運動神経が十分に機能せず、全身の力が徐々に弱くなる難病
神戸大学の研究グループは、生まれつき運動神経が障害される難病、脊髄性筋萎縮症 (SMA)を拡大新生児マススクリーニング検査で早期に発見し治療する取り組みにおいて、国内で初めて「重症型」の脊髄性筋萎縮症の患者さんを発見することに成功したと発表しました。
SMAは、生まれつき運動機能が発達せず、次第に全身の力がだんだん弱っていく遺伝性疾患です。重症例では、赤ちゃんの時に運動発達が止まることにより、食事や呼吸ができずに寝たきりとなり、適切な治療がなければ2歳までに亡くなってしまうこともあります。
近年、この病気の運動発達を改善する治療が開発されましたが、高い治療効果を得るためには生後早期に治療を行うことが重要でした。研究グループは、この病気の早期発見の方法として、新生児マススクリーニング検査に注目しました。
国内ですべての赤ちゃんに対して行われている新生児マススクリーニング検査では、生後4日目から6日目の間に採血し、血液をろ紙にしみこませた「ろ紙血」を用いて先天性代謝異常などの検査が行われています。研究グループは、このろ紙血を利用して、SMAを含めた7つの難病の早期発見をするため、赤ちゃんの任意の有料検査(拡大新生児マススクリーニング検査)を2021年2月より兵庫県下17か所の医療機関において開始しました。
重症型のSMAを生後21日に早期発見
その結果、2022年5月までに6,590件の検査を実施し、そのうちの1件において重症型のSMAを新生児期(生後21日目)に早期発見しました。発見された患者さんは精密検査を受けて生後23日目でSMAの診断が確定、すでに全身の筋力が低下する症状があり重症型であることがわかりました。生後25日目に治療を開始し、生後3か月では運動発達の改善が見られ、呼吸困難などの症状は認められませんでした。
2022年7月時点では、兵庫県の他、千葉県、熊本県、大阪府など限られた地域でSMAを対象にした拡大新生児マススクリーニングが行われています。
研究グループは、早期発見によって、重症型の患者さんに対しても効果の高い治療が行われることに期待しています。今後は、さらに参加施設を増やし、多くの赤ちゃんを検査して、SMA患者さんの早期治療に結び付けたいと伝えています。(遺伝性疾患プラス編集部)