遅発型ポンペ病、AAV遺伝子治療の対象者拡大につながる開発の契約を製薬企業が締結

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 遅発型ポンペ病のアデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療と併用する薬の候補として「IdeXork(Xork)」の開発を進めることを発表
  2. Xorkは遺伝子治療用AAVカプシドに反応する抗体を切断する効果が期待されるIgGプロテアーゼ
  3. 臨床試験や治療の対象とはならない可能性のある患者さんに治療の機会をもたらす可能性

ライソゾームのGAA酵素が正常に働けなくなることで起こる疾患

アステラス製薬株式会社は1月10日、米国に本社を置くSelecta Biosciencess, Inc.(Selecta社)と契約を締結し、ライソゾーム病の1種である遅発型ポンペ病のアデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療と併用する薬の候補として「IdeXork(Xork)」の開発を進めることを発表しました。

ライソゾーム病は、細胞小器官であるライソゾームの酵素が正常に働けなくなることによって起こる遺伝性疾患で、問題のある酵素の種類によって40種類程度に分類されます。遅発型ポンペ病は、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子変異により発症し、個人差はありますが筋力の低下や心筋症などの症状が見られます。

アデノ随伴ウイルス遺伝子治療における「抗体」の問題を解決

アステラス社は、遅発型ポンペ病の成人患者を対象とした治療法として、AAVベクターを使用して骨格筋や心筋などの組織で直接GAA遺伝子を働かせる、新しい遺伝子補充療法AT845を開発してきました。しかし、遺伝子治療用のAAVの外殻(カプシド)に反応する抗体が体内に出来ていて、AAV遺伝子治療の臨床試験の適格基準を満たさない患者さんが多くいることがわかっていました。

Selecta社の開発したXorkは、ヒトIgG抗体を切断する酵素(IgGプロテアーゼ)で、このAAVカプシドに反応する獲得済み抗体を除去することが期待されています。Xorkは、もともと血液中にある抗体と予期せぬ反応を起こしにくく、これは、開発されている多くの他のIgGプロテアーゼと異なって優れた点です。

同社は、「この提携が、臨床試験または治療の対象とはならない可能性のある特定層の遅発性ポンペ病の成人患者さんに対して、革新的な遺伝子治療を提供する機会をもたらす可能性がある」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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