遺伝性網膜ジストロフィーの遺伝子パネル検査システム、国内初承認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. IRDは網膜色素変性症・アッシャー症候群などが含まれる遺伝性の網膜疾患の総称
  2. 原因遺伝子の情報に基づく、より個別化された診断の重要性が高まる
  3. 82のIRD原因遺伝子を同定する遺伝子パネル検査システム

網膜色素変性症などのIRD、遺伝子治療薬承認で個別化診断の重要性が高まる

シスメックス株式会社は、遺伝性網膜ジストロフィー(Inherited Retinal Dystrophy:IRD)の疾患原因遺伝子の情報を取得する「PrismGuide(TM) IRDパネル システム」が、IRDの遺伝子パネル検査システムとして国内で初めて製造販売承認を取得したと発表しました。

IRDは、遺伝子変異により網膜の機能に進行性の障害をきたす一連の疾患の総称です。具体的には、指定難病対象疾病網膜色素変性症、アッシャー症候群、黄斑ジストロフィーなどが含まれます。これらIRDの疾患の多くは、暗い場所でものが見えにくくなる、視野が狭くなるなどの症状が若年期より始まり、失明に至ることもあります。

IRDは、その原因遺伝子により、症状の重症度や進行度が多様です。2023年6月には、IRDの原因遺伝子の1つをターゲットとした遺伝子治療薬が日本でも承認されました。そのため、IRD診断では、従来の臨床所見に加えて、原因遺伝子の情報に基づく、より個別化された診断の重要性が高まっています。

IRDの原因となる82の疾患原因遺伝子を同定

同社は、2020年2月に締結した包括連携契約に基づき、神戸市立神戸アイセンター病院と同システムの共同開発を進めてきました。その後、2021年9月に、同システムを用いた「遺伝子パネル検査による遺伝性網膜ジストロフィーの遺伝子診断」が先進医療Bとして承認。神戸アイセンター病院と東京医療センターで、同システムの臨床性能や遺伝カウンセリングへの有用性について評価が行われてきました。

今回承認された同システムは、IRDの原因となる82の疾患原因遺伝子の同定を目的としています。IRD患者さんまたはIRDと疑われる患者さんの血液から、包括的なゲノムプロファイルを取得します。取得した測定結果に基づき、関連学会が提示する要件を満たすさまざまな分野の専門家(眼科医、臨床遺伝専門医、分子遺伝学やゲノム医療に関する専門家など)、分子遺伝学やゲノム医療に関する専門家など)が、自覚症状、臨床症状、他の関連する検査結果とあわせて、IRD患者さんの原因遺伝子を総合的に決定します。

原因遺伝子にあわせた治療計画などが策定されたり、遺伝カウンセリングが実施されたりすることで、早期に適切な治療を開始することができます。また、発症リスクや症状の進行予測を踏まえた就学・就職準備など、患者さんのライフイベントに合わせた事前対応が可能となることが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)

関連リンク