免疫において重要なタンパク質の遺伝子変異による病気
東北大学を中心とした研究グループは、周期性発熱、炎症性腸疾患、自己免疫性疾患などを発症した5人の患者さんで、RelAタンパク質の設計図であるRELA遺伝子の変異による新規病型を同定したことを発表しました。
RelAは、DNAと結合することで遺伝子の働きを調節するタンパク質で、病原体から体を守るための免疫の仕組みにおいて、炎症や細胞増殖などを制御するNFκBシグナル経路で重要な役割を持ちます。このタンパク質の設計図であるRELA遺伝子のハプロ不全(半量不全)変異は、皮膚や粘膜に潰瘍ができる軽度の自己炎症疾患を引き起こすことが知られていましたが、自己免疫性の血球減少や炎症性腸疾患といった、重症の病型が引き起こされる原因は不明でした。
今回、研究グループはRELA遺伝子変異を持つ6人の患者さん(5家系)において、重症な症状が引き起こされる原因を探索しました。
変異タンパク質が正常なタンパク質の機能を阻害
解析の結果、これらの患者さんでは、異常なRelA変異タンパク質が体内で作られていること、この変異タンパク質は、正常なRelAタンパク質に結合して機能を阻害すること(優性阻害効果)が明らかになりました。
次に、患者さんの白血球を解析したところ、免疫を活性化する物質である「I型インターフェロン」によって誘導される遺伝子群の発現上昇が認められ、I型インターフェロンが過剰に作られることで発症する、「I型インターフェロン症」と呼ばれる病気と似た状態を示していることがわかりました。
また、さらに白血球の解析を進めたところ、白血球の一種であるリンパ球や樹状細胞、白血球に分化する前の骨髄球細胞において、I型インターフェロンを作り出すのに重要なTLR7、IRF7、MyD88遺伝子の発現上昇が見られました。IRF7は、NFκB経路により制御されることが知られており、それらのことから優性阻害効果を持つRelA変異タンパク質が、TLR7やIRF7遺伝子の発現を強く誘導し、I型インターフェロンの分泌が増強されると考えられました。
研究グループは、この研究成果は、RelA異常症の新しい病型を見出し、効果的な治療薬の選択に貢献するだけでなく、I型インターフェロンの制御機構の解明にもつながる重要な発見である、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)