ミトコンドリア病の遺伝学的検査、保険診療での受付がスタート

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ミトコンドリア病遺伝子パネルシーケンスが保険適応検査として順大病院で受付開始
  2. ミトコンドリアDNA全周+核のDNAにコードされた367原因遺伝子が対象の検査
  3. 診断がつかない研究同意患者さんは研究として遺伝子解析を引継げる体制を構築

令和4年度診療報酬改定で保険収載され、病院での検査実施体制を整備

順天堂大学の岡﨑康司教授らの研究グループは、これまでに開発したミトコンドリア病遺伝子パネルシーケンス検査について、2023年11月1日より、順天堂大学医学部附属順天堂医院(以下、同大病院)臨床検査部(ISO15189認証取得)における保険適応検査として受付を開始したことを報告しました。

ミトコンドリア病は5,000人の出生のうち1人が発症する先天性代謝異常症です。研究グループは十数年にわたり、全国から寄せられるミトコンドリア病疑い症例の遺伝子診断に取り組んできました。計算上では、同グループは毎年誕生する約200人のミトコンドリア病の赤ちゃんの半数以上の遺伝子検査を行ってきたことになります。

ミトコンドリア病の原因となる遺伝子は、ミトコンドリア内に存在するミトコンドリアDNAだけにではなく、核のDNAにも多数存在しますが、これまでの臨床検査項目では、ミトコンドリアDNAの一部の塩基配列を調べる検査しかありませんでした。このたび、厚生労働省の令和4年度診療報酬改定において、ミトコンドリア病の遺伝学的検査が保険収載されたことを受け、研究グループは、これまで研究の一環として行ってきた「ミトコンドリア病遺伝子パネルシーケンス」を保険適応検査として実施するため検査実施体制を整備しました。

診療から研究までカバーできる体制で検査を実施

開発されたミトコンドリア病遺伝子パネルは、ミトコンドリアDNA(全周16.6kb、キロベースペア、1万6,600塩基対)だけでなく、核のDNAにコードされた合計367個の原因遺伝子も対象としています。研究グループは、この方法を用いてこれまでに600人を超える患者さんの解析を行ってきました。

2020年1月~2022年12月の3年間にこの検査方法で解析した449人のデータを分析したところ、遺伝子診断がついた人は105人(23.4%)で、このうち核DNAの遺伝子変異を原因とする人が38人(8.5%)、ミトコンドリアDNA変異を原因とする人が67人(14.9%)でした。また、臨床的意義不明バリアント(VUS)をもつ人が35人(7.8%)見つかり、これらの患者さんについてはさらに詳細な解析が進められています。

同大病院臨床検査部で行われるミトコンドリア病遺伝子検査の概要としては、まず保険適応のミトコンドリア病遺伝子検査として遺伝子パネルシーケンスを実施し、既知変異についての結果を報告します。その後、研究に同意されている患者さんについては研究グループが行う研究により詳細な解析が行われます。こうした「ミトコンドリア病の診療から研究までカバーできる体制」の構築は、AMED難治性疾患実用化研究事業でミトコンドリア病研究プロジェクトを率いてきた村山圭教授が、2023年7月1日より同大病院で小児科・思春期科での外来診療を開始したことで実現しました。

研究グループは、「ミトコンドリア病遺伝子パネルシーケンス検査のみでは遺伝子診断がつかない患者さんの中で、採血の際に研究参加への同意を表明(署名)した患者さんに対しては、研究として遺伝子解析を引継ぎ、全ゲノムシーケンス・RNAシーケンス・機能解析実験などより詳細な解析を行い、遺伝子診断確定を目指していく」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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