膿疱性乾癬(汎発型)、MEFV遺伝子バリアントの関与が新たに判明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 6つの疾患関連遺伝子が知られる膿疱性乾癬(汎発型)、これらにバリアントを持たない場合も多い
  2. 日本人患者さんの網羅的遺伝子バリアント解析で、MEFV遺伝子の2つのバリアントの関与が判明
  3. このバリアントを持つ人は、パイリンインフラマソーム関連の炎症経路が発症に関与する可能性

発熱や膿疱の出現が見られる炎症性の皮膚疾患

名古屋大学の研究グループは、膿疱性乾癬(汎発型)の疾患関連遺伝子として、新たにMEFV遺伝子を同定したと発表しました。

膿疱性乾癬(汎発型)は、発熱と一緒に全身の皮膚が赤くなり、無菌性の膿疱が体中に多数できる慢性炎症性皮膚疾患です。全身性炎症による臨床検査値異常、粘膜症状、関節炎のほか、重篤な合併症により命に関わることもある病気で、再燃と寛解を何度も繰り返します。

膿疱性乾癬(汎発型)の疾患関連遺伝子としてこれまでに6種類の遺伝子(IL36RN、CARD14、AP1S3、SERPINA3、MPO、BTN3A3)が報告されており、少しずつ病態の解明が進められています。しかしこれらの遺伝子にバリアント(DNA配列の違い)を持たない患者さんも多いことから、さらなる疾患関連遺伝子の発見が求められていました。

研究グループは、日本人の膿疱性乾癬(汎発型)患者さん24人について、網羅的遺伝子バリアント解析を行いました。

2つのMEFV遺伝子バリアントを持つ頻度が高いと判明

解析の結果、患者さんの集団において、MEFV遺伝子のバリアントを持つ頻度が一般の人における頻度よりも高いことが明らかになりました。

MEFV遺伝子は、パイリンと呼ばれるタンパク質の設計図となる遺伝子で、自己炎症性疾患である家族性地中海熱の疾患関連遺伝子です。パイリンは、インフラマソームと呼ばれるタンパク質複合体の一部となり、免疫システムにおいて炎症反応を制御しています。家族性地中海熱では、MEFV遺伝子バリアントにより、パイリンインフラマソーム関連の炎症が異常に活性化し、さまざまな組織に好中球が集まると考えられています。

膿疱性乾癬(汎発型)患者さんの集団では、「p.Arg202Gln」と「p.Ser503Cys」と呼ばれる2つのMEFV遺伝子バリアントを持つ頻度が高く、日本人の患者さんの約21%がp.Arg202Gln、約13%がp.Ser503CysのMEFV遺伝子バリアントを持っていることがわかりました。

さらに、無菌性膿疱を形成する他の膿疱性皮膚疾患(急性汎発性発疹性膿疱症、稽留性肢端性皮膚炎など)を加えた患者さんでも同じ解析を行ったところ、この集団でも2つのMEFV遺伝子バリアントを持つ頻度が高いことがわかりました。

これらの結果から、MEFV遺伝子にバリアントを持つことにより、パイリンインフラマソーム関連の炎症経路に異常が生じることが膿疱性乾癬(汎発型)発症に関与している可能性が示唆されました。

研究グループは、「MEFV遺伝子変異を持つ膿疱性乾癬(汎発型)患者さんでは、関連する炎症経路を標的とした治療法が有効となる可能性が期待される」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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