遺伝性ATTRアミロイドーシス、QOLの維持・向上に重要な具体的要素が調査で判明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 複雑な病態の遺伝性ATTRアミロイドーシスは、生活のあらゆる面に影響を及ぼす
  2. 遺伝性ATTRアミロイドーシス患者さんの健康関連QOLを調査
  3. 精神的QOLは家族機能と、身体的/社会的QOLは不安や日常生活動作と関連していた

末梢神経や自律神経の障害、心筋症などの症状により生活のあらゆる面に影響

Alnylam Japan株式会社(アルナイラム)と特定非営利活動法⼈ASridは、「遺伝性ATTRアミロイドーシス患者当事者・家族の健康関連QOLとその関連要因に関する調査研究」の結果を発表しました。

遺伝性ATTRアミロイドーシスは、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)とも呼ばれ、肝臓でビタミンAの輸送体として働くTTRタンパク質の設計図である、TTR遺伝子の変異が原因で引き起こされる遺伝性疾患です。この病気では、異常なアミロイドタンパク質が蓄積することで末梢神経や心臓などの臓器・組織を傷つけ、末梢神経障害や自律神経障害のほか、心筋症などが引き起こされます。進行性で死亡率も高いだけでなく、複雑な病態のため、患者さんの生活のあらゆる面に影響を及ぼします。

今回の調査研究は、遺伝性ATTRアミロイドーシス患者さんの健康関連QOL(身体/精神・役割/社会的側面)と、その関連する要因を探索的に明らかにすることを目的に行われました。2021年12月~2022年6月の期間に、複数の患者団体から参加者を募り、質問票による定量調査、インタビューが実施されました。

QOLの高さには、家族機能・不安・日常生活動作などが関連

研究グループは、20歳以上の遺伝性ATTRアミロイドーシス患者さん25人と患者さんご家族15人から回答を得て、その解析を行いました。

解析の結果、患者さんの精神的側面でのQOLは国民平均と有意な差はなかったものの、身体的側面・役割/社会的側面のQOLは、国民平均よりも有意に低いことが明らかになりました。また、精神的側面の得点は、家族機能と中程度の正の相関が見られた一方、役割/社会的側面の得点は、「不安」と中程度の負の相関、移乗動作、着替え、食事といった「日常生活動作」と有意な中程度の正の相関があることがわかりました。

また、インタビューによる調査では、遺伝性ATTRアミロイドーシス患者さんの認識する家族機能に関するスコアは、家族の疾患への理解や情緒的なサポート、疾患や現状の情報取得と共有、介助/介護などの生活支援がある場合に高いことが示されました。

さらに、患者さんの不安は、症状の進行と関連が見られ、治療(肝移植や治療薬)によって症状の進行抑制が効いている場合には低く、改善が難しい症状や眼のアミロイド沈着のように治療に関わらず進行する症状がある場合や、医療情報・アクセスに地域差を感じている場合には強いことも明らかになりました。

これらの結果から、健康関連QOLの高さには、家族機能の高さ、不安の低さ、日常生活動作(ADL)の高さが関連する可能性があることが示唆されました。これらの結果は、第41回日本神経治療学会学術集会で発表されました。

研究グループは、患者さんの症状を治療するだけでなく、患者さんの症状や治療経緯、居住地の特徴などを踏まえた不安を解消するための適切な関わりが、遺伝性ATTRアミロイドーシス患者さんのQOLの維持・向上に資することが示唆される、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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