メンケス病、女児患者さんの発症メカニズムの一端を解明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. X染色体劣性(潜性)遺伝形式をとるため、多くの女性は保因者となるメンケス病
  2. メンケス病を発症した女児患者さんの家系3世代を解析
  3. X染色体の不活化が片方に偏る家系と判明、患者さんは正常遺伝子側が不活化で発症

神経症状や結合組織などにさまざまな症状が現れる遺伝性疾患

自治医科大学の研究グループは、メンケス病の女児患者さんの家系を3世代にわたり解析し、その発症メカニズムを解析した結果を発表しました。

メンケス病は、ATP7A遺伝子変異により、体の中の銅の吸収や利用がうまくいかなくなり、神経症状、関節・臓器・血管などを支える結合組織などにさまざまな症状が現れる遺伝性疾患です。国の指定難病対象疾病であり、小児慢性特定疾病の対象疾患です。メンケス病は、X染色体劣性(潜性)という遺伝形式をとるため、多くの場合、女性は保因者となり発症しません。一方、まれに女性でメンケス病を発症する方がいます。今回は、メンケス病を発症した女児患者さんの家系を対象に研究が進められました。

患者さんの祖母・母は、原因遺伝子を含む染色体が優先的不活化で発症せず

今回の研究では、メンケス病を発症した女児患者さんの家系を3世代にわたり解析しました。具体的には、X染色体の不活化率の偏りの解析、RNAシークエンシング(遺伝子発現量の網羅的解析)、全ゲノムシークエンシング(遺伝配列の網羅的解析)を行いました。

研究の結果、この患者さんの家系ではX染色体の不活化が片方のX染色体に極端に偏った状態が3世代で確認されました。患者さんの祖母と母については、メンケス病の原因遺伝子を含む染色体が優先的に不活化されていたために、発症していませんでした。一方、メンケス病を発症した女児患者さんでは、正常遺伝子を含む染色体のほうが優先的に不活化されていたためにメンケス病が発症したことがわかりました。

X染色体不活化の偏り、メカニズム解明に期待

これまでにも、X染色体の不活化の偏りの向きが、親子やきょうだいで逆になる症例の報告はありました。しかし、X染色体組み換えの位置を同定して、メカニズムを検討した報告は今回が初めてです。今後、今回のような症例が蓄積されていくことで、X染色体の不活化の偏りのメカニズムが明らかになることが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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