血友病治療薬「アレモ」、インヒビター非保有も出血傾向抑制で追加承認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 非常に血が止まりにくくなる遺伝性疾患「血友病」
  2. 1日1回皮下投与で出血を予防する治療薬「アレモ」、インヒビター保有で既に承認
  3. インヒビター非保有血友病A・Bでも出血減少で追加承認

不足する血液凝固因子が第VIII因子は「血友病A」、第IX因子は「血友病B」

ノボ ノルディスク ファーマ株式会社は6月24日、「アレモ(R)皮下注15mg、同60mg、同150mg、同300mg(一般名:コンシズマブ(遺伝子組換え))」について、「血液凝固第VIII因子または第IX因子に対するインヒビターを保有しない先天性血友病患者における出血傾向の抑制」を追加適応とする製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表しました。

血液凝固因子の活性が全くない、もしくは十分な活性が得られないために非常に血が止まりにくくなる遺伝性疾患「血友病」。不足する血液凝固因子が第VIII(8)因子の場合は「血友病A」、第IX(9)因子の場合は「血友病B」と呼ばれます。血友病は、X連鎖劣性(潜性)遺伝という遺伝形式をとることから、男性は患者さん、女性は保因者となることがほとんどです。

先天性血友病患者さんの中には、体内にインヒビターと呼ばれる抗体が作られている人もいます。インヒビターがある場合、凝固因子製剤による治療を続ける中で、体内で凝固因子が「異物」と認識されて治療の効果が期待できなくなります。現在、先天性血友病A患者さんの30%、先天性血友病B患者さんの1~10%がインヒビターを保有していると推定されています。

TFPI阻害で血液凝固因子「トロンビン」産生を促進、出血を防ぐ治療薬

アレモは血液凝固を阻止する体内のタンパク質「Tissue Factor Pathway Inhibitor:TFPI」を阻害するようにデザインされた、抗TFPIモノクローナル抗体です。TFPIを阻害することで、血液凝固因子「トロンビン」の産生を促進し、血液凝固を助け、出血を防ぐ仕組みです。

同剤は、あらゆるタイプの血友病に対し、1日1回の皮下投与で出血を予防する(長引く自然出血を予防するための定期的投与)薬剤として開発されました。2023年9月にインヒビターを保有する先天性血友病患者さんにおける出血傾向の抑制を適応症として承認。今回、世界で初めて、日本でインヒビターを保有しない先天性血液凝固第VIII因子または第IX因子欠乏患者さんでの出血傾向の抑制が、適応症として追加承認されました。

臨床試験で自然出血・外傷性出血を有意に減少

今回の追加承認は、主に、新たに得られた第3相臨床試験Explorer 8の結果に基づくものです。同試験の主要解析の結果、インヒビターを保有しない血友病A患者さんにおいて、出血予防を行わなかった群の年間出血回数19.3回に対し、アレモ投与群の年間出血回数は2.7回。インヒビターを保有しない血友病B患者さんでは、出血予防を行わなかった群の年間出血回数14.8回に対し、アレモ投与群の年間出血回数は3.1回。こうして、血友病AおよびB患者さんで、自然出血および外傷性出血が有意に減少したことが示されました。

なお、同試験における同剤の安全性・忍容性プロファイルは予測された範囲内であり、治験再開後に血栓塞栓性事象は報告されませんでした。(遺伝性疾患プラス編集部)

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