難病アミロイド病、治療薬への応用が可能な新規化合物の創製に成功

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 既存薬より効果の高い全身性アミロイドーシスの治療薬開発が望まれていた
  2. 尿酸排泄促進薬のベンズブロマロンを基盤とした新規化合物を合成
  3. アミロイド線維形成の阻害効果が強く、TTRへ特異的に結合する化合物の創製に成功

アミロイド線維が全身の臓器に沈着し機能障害を引き起こす

富山大学の研究グループは、アミロイド病(全身性アミロイドーシス)の新たな治療薬へ応用可能な化合物の創製に成功したと発表しました。

全身性アミロイドーシスは、アミロイドと呼ばれる線維状の異常なタンパク質が、末梢神経・心臓・眼などの全身の臓器に沈着して重篤な機能障害を引き起こす病気で、指定難病対象疾病となっています。

トランスサイレチン(TTR)は主に肝臓で合成されるタンパク質で、甲状腺ホルモンであるチロキシンやビタミンA1として知られるレチノールの輸送を担っています。TTRは通常は安定したタンパク質ですが、特定の条件や遺伝的要因によって、構造が変化し凝集することによって不溶性アミロイド線維を形成し、トランスサイレチン型(ATTR)アミロイドーシスを引き起こします。

ATTRアミロイドーシスの治療法としては、肝移植が有効ではあるもののドナー不足が大きな課題です。また、現在有効な医薬品として、タファミジス(製品名:ビンダケル(R))がありますが、病気の進行を十分に抑制できない場合があり、タファミジスよりも効果の高い新たな治療薬の開発が求められていました。

研究グループは、これまでの研究で尿酸排泄促進薬として用いられている「ベンズブロマロン」と「ベンジオダロン」が、血液中のTTRに対して特異的に結合し、アミロイド線維形成を阻害することを明らかにしていました。そこで今回、ベンズブロマロンを基盤とした新規化合物の設計と合成を試みました。

約50種類の新規誘導体を合成、アミロイド線維形成の阻害効果強い化合物を発見

研究グループは、約50種類の新規ベンズブロマロン誘導体を化学合成し、アミロイド線維形成の阻害効果が強い化合物の創製に成功しました。また合成した誘導体間での化学構造を比較したところ、活性を示すために必須となる部分構造を特定することにも成功しました。

次に、開発した化合物がTTRに対して特異的に結合するかを調べたところ、ヒト血液中のTTRに選択的かつ強力な結合力を示すことが明らかになりました。

研究グループは、「今回新たに化学合成した化合物は、タファミジスよりも強く結合し、アミロイド線維形成を強力に阻害することから新たなアミロイド病治療薬として有望であると期待される」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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