満足のいく治療効果を得るために全長ジストロフィンが必要
米インディアナ大学医学部は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の新たな遺伝子治療法として、全長のジストロフィンタンパク質を体内で生成できる方法を開発したと発表しました。
DMDは、ジストロフィン遺伝子の変異が原因となり正常なジストロフィンタンパク質が作られず、進行性に筋肉が変性していく遺伝性疾患です。
米国食品医薬品局(FDA)は、2024年6月に、「マイクロジストロフィン」と呼ばれる短縮型のジストロフィンを筋肉内で作らせる遺伝子治療を承認しました(関連ニュースはコチラ)。しかし、短縮型のジストロフィンでは、満足のいく治療成果を得ることができないため、同大医学部小児科教授のレンジー・ハン博士(Renzhi Han, PhD)らの研究グループは、新しい遺伝子治療法を研究しました。そして開発されたのが、「トリプルアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターシステム」です。
「トリプルAAVベクターシステム」仮特許出願中、臨床応用へ
このシステムをさらに最適化し、巨大なジストロフィンタンパク質の全長を効果的に筋肉で生成することに成功。さらに、DMDモデルマウスの骨格筋と心筋の両方で全長ジストロフィンタンパク質が正常に作られ、筋肉の健康、強度、機能が著しく改善されることを確認しました。同システムは、仮特許の出願中だそうです。
ハン博士は「この新しい遺伝子治療法は、現在利用できる治療法よりも患者さんに大きな利益をもたらすと考えており、今後さらに臨床開発に進めていきたい」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)