CMT病などに関わるTRPV4イオンチャネル、発汗のメカニズムにも関わることが判明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 温度感受性TRPV4チャネルは、アノクタミン1と一緒に唾液などの分泌に関わる
  2. TRPV4欠損マウスの足底発汗量低下は、アノクタミン1阻害剤などで抑制可能
  3. 難病の特発性後天性全身性無汗症患者さんの汗腺でTRPV4発現低いことも判明

TRPV4イオンチャネルの新たな機能を検証

自然科学研究機構生理学研究所を中心とした研究グループは、温度感受性TRPV4イオンチャネルとアノクタミン1の機能連関がマウスにおける発汗にも関与することを明らかにしたと発表しました。

温度感受性TRPチャネルは、冷たい温度から熱い温度までさまざまな温度を感知して体内に伝えるセンサーとして働くタンパク質で、これまでに11種類のタイプが知られています。その中でも、TRPV4チャネルは、TRPV4遺伝子が設計図となり作られるイオンチャネルで、皮膚表皮細胞や骨・筋肉・神経の細胞で働き、体温に近い温度や接触などの機械刺激、細胞膜由来の脂質などで活性化されることがわかっています。

TRPV4遺伝子の変異によるTRPV4イオンチャネル機能異常は、シャルコー・マリー・トゥース病TRPV4異常症といった、骨・筋肉・神経などに症状が見られる遺伝性疾患を引き起こすことが知られています。

研究グループはこれまで、このTRPV4チャネルと、アノクタミン1と呼ばれる別のイオンチャネルの機能が関わり合って、脳の脳脊髄液・唾液・涙の分泌に重要な役割を果たすことを明らかにしてきました。

そこで今回、TRPV4チャネルとアノクタミン1が、汗腺からの発汗にも関与しているのではないかと考え、マウスを用いた解析を行いました。

TRPV4欠損マウス、室温が上昇しても発汗量は低いまま

研究グループがマウス足底の汗腺の分泌細胞を調べたところ、TRPV4チャネルとアノクタミン1が汗腺の分泌細胞に、一緒に発現していることが明らかになりました。

次に、正常なマウスと、TRPV4が働かないTRPV4欠損マウスの足底の発汗の程度を比較したところ、正常なマウスでは25度から35度への室温上昇で発汗量が増加しましたが、TRPV4欠損マウスでは室温が上昇しても発汗量は低いままでした。

さらに、正常なマウスで、TRPV4とアノクタミン1の機能を阻害するメントールや、アノクタミン1の阻害剤を塗布したところ、発汗量は減少しました。これらの結果から、TRPV4やアノクタミン1が発汗に重要であることが明らかになりました。

研究グループが、TRPV4欠損マウスにツルツルの斜面を登らせてみたところ、登るのを失敗する例が多いことがわかり、発汗が少ないために足底の摩擦力が小さく、踏ん張りがきかないと解釈されました。

ヒトにおいても難病である特発性後天性全身性無汗症の患者さんの汗腺において、TRPV4タンパク質の発現が低いことがわかり、ヒトの発汗でもTRPV4が重要な働きをしていることがわかりました。

研究グループは、発汗のメカニズムが明らかになったことによって、新たな発汗制御薬の開発にもつながることが期待される、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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