血友病Aの治験薬「Mim8」、インヒビター保有/非保有の小児対象臨床試験で良好な結果

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 1~11歳のインヒビター保有/非保有の血友病A対象の臨床試験、中間解析データ発表
  2. 全体の74.3%で治療を要する出血が生じなかった
  3. 身体機能スコアやQOLも改善、安全性に関する重要な懸念なし

血友病Aで欠損している第VIII因子の機能を代替する薬

ノボ ノルディスクファーマ株式会社は、インヒビター保有または非保有の血友病Aの1~11歳の小児患者さんを対象に行われた臨床試験「FRONTIER3試験」の中間解析データにおいて、週1回の治験薬「Mim8」の定期投与を受けた患者さんで良好な忍容性と有効性を示したと発表しました。

血友病は、血液の凝固機能に異常が生じる遺伝性疾患で、世界の患者数は約112万5,000人と推定されています。血友病は機能が低下している、あるいは欠乏している凝固因子の種類によってタイプがあり、血友病Aは血液凝固第VIII因子(FVIII)が欠乏あるいは機能が低下していることで引き起こされます。

Mim8は、インヒビター保有または非保有の血友病A患者さんに対し、週1回、2週に1回、月1回の定期投与で持続的に出血を抑制することを目的として開発されました。Mim8は第IXaと第X因子を架橋する作用を持ち、第VIIIa因子機能の代わりとなるバイスペシフィック抗体(2種類の抗原と結合する抗体)の治験薬です。

以前の治療よりもMim8治療を選好するご家族/介護者が98%

FRONTIER3試験は、血友病Aの1~11歳の小児患者さん70人(インヒビター保有の患者さん14人、インヒビターを保有しない患者さん56人)を対象に、Mim8定期投与の有効性と安全性プロファイルを評価した第3相臨床試験です。

この試験は、参加した全員に26週間、Mim8の皮下投与を週1回実施し長期間の自然出血の抑制について評価するパート1の後、次の26週間に、Mim8の月1回の定期投与へ変更するか、Mim8の週1回の定期投与の継続を患者さんが選択するパート2、の2つのパートで構成されています。

中間解析の結果、パート1で週1回の定期投与を受けた患者さんの治療を要する出血の年換算出血率(ABR)の平均値は0.53、中央値は0で、治療を要する出血が生じなかったのは全体の74.3%でした。インヒビターを保有する患者さん14人には治療を要する出血の報告はありませんでした。パート1の終了後、45%の患者さんが月1回の投与に移行し、55%の患者さんは週1回投与を継続しました。

またパート1の後、患者さんとご家族/介護者が報告した効果に関するデータによれば、26週目には、身体機能スコア(ランニングなどの身体活動を毎日実施する小児の能力の評価基準)と生活の質(QOL)スコアの平均がベースラインと比較して改善する傾向が見られました。また、98%のご家族/介護者が以前の治療よりもMim8による治療を選好すると回答し、そのうち73%は、「非常に強く」選好すると答え、Mim8により治療の負担が軽減し、身体機能とQOLが改善されることが示唆されました。

また、過去の試験と同様に、Mim8に関して安全性に関する重要な懸念は観察されませんでした。

同社は、2025年内に欧米の規制当局にMim8の製造販売承認申請を行う予定で、日本における承認申請は未定と伝えています。継続中の臨床試験データは、2025年と2026年に予定されている学会や論文で公開される予定です。(遺伝性疾患プラス編集部)

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