先天性免疫異常症、特定の遺伝子変異による発症メカニズムを解明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 先天性免疫異常症の原因の一つはBCL11B遺伝子のミスセンス変異
  2. BCL11B遺伝子のミスセンス変異を持つモデルマウスを作製
  3. BCL11B遺伝子変異が病気を引き起こす仕組みをモデルマウスで解明

BCL11B遺伝子のミスセンス変異は先天性免疫異常症を引き起こす

理化学研究所は、BCL11B遺伝子に生じたミスセンス変異が先天性免疫異常症(原発性免疫不全症)を引き起こすメカニズムをモデルマウスの解析から明らかにしたと発表しました。

先天性免疫異常症は、免疫機能に重要な役割を担う遺伝子の変異が原因で発症する遺伝性疾患です。BCL11B遺伝子は免疫担当細胞の一つであるT細胞の発達や機能に必要な遺伝子で、T細胞減少症や欠損症の患者さんでBCL11B遺伝子の変異が報告されています。

BCL11Bタンパク質の441番目のアミノ酸であるアスパラギン(N)がリジン(K)に変わる変異(N441Kミスセンス変異)は、T細胞欠損症を呈する小児の患者さんで見つかった変異です。これまでの研究で、N441K変異BCL11Bタンパク質が正常なBCL11Bタンパク質の機能を阻害することが明らかになっています。

モデルマウスを使って発症メカニズムを解明

研究グループは、先天性免疫異常症の発症メカニズムを明らかにするために、ヒトのN441Kミスセンス変異に相当するマウスBcl11b遺伝子のN440Kミスセンス変異を有するモデルマウス(N440K変異マウス)を作製しました。

N440K変異マウスは、患者さんと同じようにT細胞減少症を示しました。そこで、生まれたばかりのN440K変異マウスの胸腺(T細胞が成熟する器官)を調べたところ、T細胞の発達が遅いだけでなく、健常な胸腺には観察されない異常な細胞グループが出現することがわかりました。さらに解析した結果、マウスでも変異があるBcl11bタンパク質が正常なBcl11bタンパク質の機能を阻害することでT細胞の発達に異常が生じ、T細胞減少症が引き起こされることが明らかになりました。また、異常な細胞が出現したのは、N440K変異Bcl11bタンパク質が免疫機能に関わる別のタンパク質の働きも妨げたためだったことがわかりました。

今回の研究成果から、先天性免疫異常症の発症メカニズムに対する理解が深まることが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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