アミロイド線維の心臓への蓄積が原因となる疾患
アレクシオンファーマ合同会社は、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)治療薬として、ビヨントラ(R)錠(一般名:アコラミジス塩酸塩、以下、ビヨントラ)が、日本での製造販売承認を取得したことを報告しました。
ATTR-CMは、トランスサイレチン(TTR)と呼ばれるタンパク質が、異常な構造となって凝集し、アミロイド線維として心臓に沈着することによって引き起こされるアミロイドーシスです。この疾患は、遺伝子変異が原因となる遺伝性TTRと、遺伝子変異が原因ではない野生型TTRの2つに分類されます。アミロイド線維の心臓への蓄積は、心筋症や心不全を引き起こす可能性があります。そして、疲労、呼吸困難、意識消失、下肢や足首の腫れ、不整脈、手根管症候群、脊柱管狭窄症などのさまざまな症状や、他の疾患にも似た漠然とした症状が見られることから、診断が複雑となることの多い疾患です。
ビヨントラは、TTRタンパク質を正常な4量体の形に保つことで、原因となる有害なアミロイド線維の形成を防ぎ、病気の進行を抑える次世代の安定化剤です。体内のTTRタンパク質の90%以上を正常な形に保つ強力な安定化作用を持っているとされています。
良好な忍容性、安全性の懸念は特定されていない
今回の承認は、ビヨントラの安全性および有効性を評価した、国際共同第3相試験であるATTRibute-CM試験と、日本国内における第3相非盲検試験における肯定的な結果に基づいて行われました。
国内の第3相非盲検試験は、ATTR-CMの日本人成人患者さん25人を対象に行われ、うち22人が30か月後に試験を完了しました。主要評価項目は、12か月目の6分間歩行距離のベースラインからの変化、ならびに30か月間にわたる全死因死亡率および心血管関連入院の頻度でした。国内試験の結果は、ATTRibute-CM試験と一貫しており、試験開始30か月目までに死亡の報告はありませんでした。また、患者1人・1年あたりの心血管関連入院の発生頻度は、ATTRibute-CM国際共同試験のプラセボ群(0.45)に対し、国内試験での頻度は低値(0.13)でした。30か月間の治療を完了した患者さんは、長期延長期間に移行することが認められ、現在も治療が継続中です。
また、ビヨントラは良好な忍容性を示し、臨床的な懸念として考えられるような安全性シグナルは特定されていません。(遺伝性疾患プラス編集部)