「ゲノム医療推進法」は遺伝性疾患にどう関わる?読者の質問に専門家が回答!

遺伝性疾患プラス編集部

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2023年6月、ゲノム医療の推進に関する法律「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」(以下、ゲノム医療推進法)が施行されました。ゲノム医療とは、遺伝子を含む「ゲノム情報」に基づいて診断や治療を進める、個人の特徴に合わせて行われる医療のことです。ゲノム医療推進法は、その名の通り、ゲノム医療を推進していくために作られた法律ですが、推進していくうえで、ゲノム情報が医療で活用されることをきっかけに、患者さんに不利益が生じるようなことがあってはいけません。この法律は、それを防ぐための第一歩としてスタートした法律でもあります。今のところゲノム医療は、「がんゲノム医療」など、がんに関して耳にすることが多くありますが、遺伝性疾患のゲノム医療に対して、この法律はどのように関わってくるのでしょうか?ゲノム医療の倫理的、法的、社会的課題についての研究を進められている第一人者、東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授の武藤香織先生に、詳しくお話を伺いました。後半では、読者から寄せられた質問にもたくさんお答え頂きました。

Dr Muto Main
東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授 武藤香織先生

「ゲノム医療推進法」の基本

ゲノム医療推進法とは、一言で言うとどのような法律ですか?

「ゲノム医療の総合的な推進と、その延長線上で発生するかもしれない生命倫理の問題や、差別の防止をするための基本計画を決める法律」です。

ゲノム医療推進法が作られることになったきっかけを教えてください

ヒトの全遺伝情報を解読する目的の国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」が1990年に開始され、その7年後の1997年、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)は、一人一人の尊厳と多様性を尊重するため、「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」を発表しました。これを受け、米国をはじめとした世界各国では遺伝に関する差別を規制する政策をつくりながら、ゲノムを本格的に活用した医療を行う時代に備えてきました。

しかし、日本では、ゲノム医療に対する社会の関心が薄い時期が続きました。ゲノム医療や遺伝医療の専門家が少なかったこと、一部の遺伝性疾患の人だけの問題だと思われていたことなどにより、ゲノム医療の実用化に向けた研究開発が遅れました。インターネット上で購入できる遺伝子検査については、何も規制がない中で、ゲノム医療が充実しないことへの懸念が高まっていました。さらに、2007年に京都大学の山中伸弥教授がヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)をつくる技術を発見し、社会の注目や多くの研究費がiPS細胞の研究に集まりました。他の先進国と比べて大きく遅れた状況を改善するため、日本政府は、2015年からゲノム医療の実用化に向けた戦略をつくりはじめました。

しかしながら、ゲノム医療の実用化が本格化するなかで、遺伝性疾患の方々がずっと不安に思ったり、苦しんだりしてきた遺伝に関する差別については、置き去りになっていました。適切なゲノム医療の推進や遺伝に関する差別に対して問題意識を持っている大学教員や医療関係者が、国会議員の方々に相談したところ、ゲノム医療は生命倫理の問題を含んでいることから、政党の考え方によらず、与党も野党もみんなでこの問題に取り組む体制が必要だという判断となり、2015年に超党派の国会議員の勉強会が始まりました。そして、2018年に超党派の議員連盟ができました。

議員連盟ができてからゲノム医療推進法ができるまで長い時間がかかりましたが、なぜですか

多くの市民と同じように、国会議員の方々にとっても、ゲノムやゲノム医療は馴染みのない存在でした。「ゲノムとは何か?」「自分の暮らしとどういう関係があるのか?」というところからスタートして、少しずつ話が進められていきました。法律を作るには、大臣や副大臣などが提案する方法(閣法)と、国会議員が提案する方法(議法)があり、そのどちらにするかについても時間を費やしました。また、この間に計5回の国政選挙があって、議員の入れ替えもありました。さらに、国会議員は多数の政策を抱えていますので、他に優先順位の高い出来事があれば、議論が行われない時期もありました。

ただ、この5年間に、がん遺伝子パネル検査のように、多数の遺伝子を調べる検査や、難病の遺伝学的検査でも多数が保険適用になるなど、ゲノム医療そのものが飛躍的に進展し、遺伝学的検査を受ける人たちが急増しました。遺伝に関する差別についても、先送りにはできない状況となりました。

最終的には、2022年4月に日本医学会や日本医師会から声明が出されたこと、2022年10月からゲノム医療推進法の早期成立に向けた要望書を何度も国会に持っていったことなどが、国会議員の方々に熱意として伝わったと思います。この要望書に賛同頂き、団体名を署名のような形で記載した学術・医療関連団体は計58団体、患者・障害児者・家族関連団体は計184団体で、遺伝性疾患に関わる団体も多数含まれていました。遺伝性疾患に関わる団体の中には、代表者の氏名を出すことはできないと苦渋の決断をしてくださった方がおられます。賛同団体の中に、臨床検査や製薬の企業も含まれていたことも重要なポイントで、「産業界も含めて関係するみんなが求めている法律なんだ」ということが伝わり、強い力になったのではないかと思います。

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提出された要望書の冒頭部分(武藤先生ご提供)
ゲノム医療推進法は、遺伝性疾患の当事者・ご家族へどのように影響しますか?

日本で初めて「ゲノム情報による不当な差別が行われることのないようにする」(法第3条)という内容を明記した法律が出来たというのは、間違いなくプラスに影響するでしょう。具体的には、「遺伝に関して差別されるようなことがあったら、それは怒っていいことなんですよ、泣き寝入りすることじゃないし文句を言っていいことなんですよ」と、法律に基づいて堂々とお伝えできるようになったことは、とても大きなことだと思っています。

それから、遺伝学的検査などにより遺伝性疾患の診断がついているけれど、根本的な治療法がまだ無いという方々にとっては、国としてゲノム医療を推進し、「その恵沢を広く国民が享受できるようにする」という理念が示されたことが明るい灯になればと思います。

ゲノム医療推進法はまだ作られたばかりで、今は、この法律の下で具体的にどうやってゲノム医療を推進していくかという「基本計画」を立てる検討が始まった段階です。その基本計画が充実したものとして作られるほど、多くのプラス面が出て来ることになります。基本計画は、恐らく2024年の夏ぐらいに出来るだろうと言われています。

読者からの質問

<差別・偏見>

罰則のない法律ですが、遺伝に関わる差別は具体的にどのように防ぐ想定なのでしょうか?

どのような行為が「ゲノム情報に基づく不当な差別」にあたるのかについて、個人的には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下、障害者差別解消法)を作った時のような流れで進めたら良いのではないかと思っています。障害者差別解消法を作った際、「障害者差別とは何か」について、内容を合意するために事例を集めていったんです。不当な差別とまではいえない行為や、許容される区別にあたる行為など、グレーな行為も検討されていくなかで、徐々に障害者差別のイメージが具体的に合意されるようになってきて、最終的には「合理的配慮の不提供」と「差別的言動」が障害者差別にあたるというところに絞り込めました。ですので、「ゲノム情報に基づく不当な差別」についても、自分たちが「これは差別ではないか?」思うことが、ちゃんと調査されて、集約されて、それについての取り扱いが合議される場所をまず作っていく必要があると思うんです。集まった事例の内容に合わせて、ガイドラインを作るとか、教育や啓発をしていくとか、罰則を作るとか、さまざまな政策の選択肢を動かしていくことになると、適切な形でいろいろ決まっていくのかなと思っています。

ただし、法律で規定しているのは、あくまでも「ゲノム情報による不当な差別」に限られていることに注意が必要です。遺伝性疾患の方々にとっては、ゲノム情報を使っていなくても、遺伝に関して勝手に憶測されて、土足で踏み入られるような発言に傷つかれるというご経験も少なくないのではないかと思います。遺伝に関する話題は誰にとっても身近なものであるがゆえに、人々の意識やマナーに働きかけるような啓発や教育に関する政策が重要だと考えています。「ゲノム情報による不当な差別」に当てはまる行為がどのような行為なのか、具体的な事例を集めて整理するなかで、遺伝に関する偏見や無理解が解消していくように進めるべきだと考えています。

リピート伸長病など将来の発症リスクが遺伝学的検査でわかっている場合、未発症時の民間の保険加入についてどのような影響がありますか?

ゲノム医療推進法の制定に向けて動いているときに、日本医学会の会長と日本医師会の会長から、「遺伝情報・ゲノム情報による不当な差別や社会的不利益の防止」についての共同声明が発表されました。この共同声明をきっかけに、保険業界から医療従事者に向けた見解が発表されました(生命保険協会の見解損害保険協会の見解)。

その内容は、引受・支払実務において遺伝学的検査の結果は収集していないこと、病名、家族の病歴、医師による遺伝カウンセリングの実施記録等から遺伝学的検査と同等の情報を特定し得る場合であっても、利用していない、というものでした。ただし、新たな課題が認識された場合には見直される可能性があるとも書かれています。しかし、現時点においては、この見解について、個々の保険会社の社員一人一人、全ての医療従事者に浸透することが必要だと考えます。なぜなら、この見解の存在を知らない保険会社によって、詳しい調査が入る事例も報告されているからです。

一方で、保険会社側の主張も一考に値します。保険金詐欺を防ぎ、加入者の公平性を保つことも保険会社の使命だからです。こうした観点を踏まえて、英国では、リピート伸長病のうちハンチントン病の家系の未発症者が、標準的な金額を超えるような高額な生命保険に加入する場合には、保険会社は発症前遺伝学的検査結果の提出を求めても良いという取り決めがなされています。他の欧州諸国では、疾患の種類を問わず、契約する金額が高額である場合には、保険会社が遺伝学的検査の結果を問い合わせることができるというルールにしている国があります。日本では、保険業界の声明を信じて、ひとまず見守るのが良いのではないかと思っています。

ゲノム医療推進法により、遺伝性疾患の当事者だけではなくそのきょうだい児(遺伝子変異が受け継がれてない場合も含める)にもポジティブな影響はありますか?

遺伝性疾患に限らず、きょうだいが重い病気だったり障がいを持っていたりすると、根拠なくリスクを見積もられて、交際や結婚を反対されるという例を、今でも見聞きします。先ほども話に出ましたが、今後、基本計画が作られ、それに基づいて遺伝に関する偏見に基づく差別を防ぐような社会啓発が進むことで、この件に関してもポジティブな影響があればいいなと願っています。

この法律は、出生前診断にも関わりがありますか?

関わってくると思います。着床前診断や、将来的に始まる可能性のある、生殖細胞系列に対するゲノム編集治療などは、視野に入っていると考えています。

<ゲノム情報の扱われ方・向き合い方>

第十一条(情報の蓄積、管理及び活用に係る基盤の整備)の意味を、詳しく知りたいです。

これは、現在国内に複数存在している、バイオバンクやゲノムデータベースを整備するための条項です。その目的は、ゲノム医療の開発に向けた研究などのために、国内に蓄積された患者さんの検体やデータをより利活用しやすくすることです。

ゲノムデータを研究に活用すると聞くと、どのような活動にデータが使われるのか、同意取得がどうなっているのか、気になる方もおられると思います。研究のために採血をしたり、新たにアンケートに答えたりする場合には、研究内容を詳しく説明され、同意文書に署名するのが一般的です。一方、診断や治療のために使ったカルテの内容や検査のデータ、検査に使って余った血液などを研究に使う場合には、そのような手続きが行われない場合が多いです。その状況は医療機関や研究機関のウェブサイトで情報公開されるので、それらの情報を見たうえで、研究利用をして欲しくない場合に、ご自身から「使わないで欲しい」と伝え、データ使用停止の手続きが取られるのが基本です。しかし、いずれの場合も、それが誰のものなのかをわからないようにしたうえで、データの収集・共有がなされます。心配な方は、おかかりの病院に尋ねてみるのが良いと思います。

(情報の蓄積、管理及び活用に係る基盤の整備)

第十一条 国は、個人のゲノム情報及びその個人に係る疾患、健康状態等に関する情報を大量に蓄積し、管理し、及び活用するための基盤の整備を図るため、これらの情報及びこれに係る試料を大規模かつ効率的に収集し、並びに適切に整理し、保存し、及び提供する体制の整備、極めて高度な演算処理を行う能力を有する電子計算機による情報処理システムの整備及び的確な運用、国際間における情報の共有の戦略的な推進その他の必要な施策を講ずるものとする。
将来的に、マイナンバーと遺伝情報が紐付けられることで、情報の悪用や流出の可能性はないでしょうか?

マイナンバーと遺伝情報を直接紐づけることは、計画されていません。ただし、旅行先でも受診して同じカルテを利用できるようにするといった目的のため、個人のカルテ情報を活用できるようにする仕組みは議論されています。その場合でも、マイナンバーとカルテ情報が直接紐づくことはありませんし、ましてマイナンバーと遺伝情報が直接結びつくことは想定されません。今、国際的にもさまざまな個人データの利用について、悪用や流出の場合の罰則が強化されており、罰金などもとても重くなってきています。こうした流れにより、個人情報の流出は抑止されていく方向にあると感じています。

今までの「わからない」怖さとは異なる、ゲノム医療による「わかる」怖さが生じる可能性があると思います。こうした「わかる」怖さとはどのように向き合っていけば良いでしょうか?

医療全体の今の方向性は、超早期発見、超早期治療介入となってきています。諸外国では、胎児や赤ちゃんの段階で全ゲノムを調べるというプロジェクトやビジネスもありますが、本人に無断で親が調べることに対しては批判的な意見もあります。人の生き方を考えたとき、「自分の未来は決まっていないから希望が持てる」という側面は重要で、知ることで不安を解消できるとは限らないわけです。そのため、1990年代に自分の遺伝情報を「知らないでいる権利」が確立されました。無理に知らされるものが増えないようにしたいと私は思っています。そして、知らされたとしても、忘れる、無視するといったことも、場合によっては大事かなと思っています。

<その他>

自分は疾患当事者で医療従事者の立場ですが、ゲノム医療推進法に使われている言葉は難しく、理解に時間がかかりました。もう少し、噛み砕いた言葉での発信などは検討されていますか?

現時点で政府が具体的に検討しているという話は聞いておりません。ですが、今後、ゲノム医療推進法に基づき、具体的な行動に関する基本計画が作られたら、それについてのシンプルでわかりやすいウェブサイトや啓発資料はぜひ公開していってほしいです。また、一人の研究者としても、公式情報とは別に、何か取り組んでみたいと思っています。

ゲノム医療推進法は、どれくらい社会に認知されているのでしょうか?

関心を持つごく少数の人たちの間では話題になっていますが、今のところ社会全体に対しての認知度は、とても低いと思います。法律が出来たときに、新聞やテレビで「遺伝的な差別を防止するための法律ができた」といった形で記事にしてもらって以来、大きく取り上げられることもありません。ただ、今後基本計画が作られて、それが土台になって新たなゲノム医療が保険適用になったり、差別に対する教育や啓発が進んだりしたときには、「ゲノム医療推進法のおかげだったね」というふうに、後から意味づけられる形で世の中に広く知られることがあるかも知れませんね。

今回質問をお寄せいただいたような、遺伝性疾患プラスの読者の方々は、「関心を持つごく少数の人たち」に含まれると思います。もしも、ゲノム医療推進法について、今後動向を追っていきたいと思われた場合、ニュースで取り上げられる可能性はあまり高くないため、直接、政府のウェブサイトを確認しに行くのが良いと思います。例えば、健康医療・戦略本部には「ゲノム医療協議会」があり、データの活用を実現するための議論が行われています。また、厚生労働省の「ゲノム医療推進法に基づく基本計画の検討に係るワーキンググループ」のサイトからは、基本計画を作るために行われている会議の議事録や資料を閲覧することができ、そこから傍聴の申し込みをすることができます。今後、基本計画についてはパブリックコメントも行われると聞いています。難しい表現や内容も多いのですが、一次情報にアクセスすることで、正確な最新の情報を得ることができますので、ご興味があればぜひ覗いてみて頂ければと思います。ただ、一人で読んでいると、とても辛いので、患者会などで勉強会ができるといいですね。機会があれば私もご協力します。

ゲノム医療推進法は、地方公共団体にはどう影響するのでしょうか?

ゲノム医療推進法の第五条に、「地方公共団体の責務」があります。これは、地方公共団体は必要に応じてゲノム医療に取り組む責務があります、という内容です。これまで、ゲノム医療は主に国が進めるものでしたが、難病もがんも、地域の拠点病院が出来るなど、都道府県でのゲノム医療の状況が明らかになってきて、地域ごとの格差を解消することが大きな課題となっています。地方公共団体と協力してゲノム医療の推進に取り組めば、その地域に特有の差別の課題についてもより丁寧に、具体的に取り扱えるようになることが期待できます。

(地方公共団体の責務)

第五条 地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、ゲノム医療施策に関し、国との連携を図りつつ、その地域の状況に応じて、施策を策定し、及び実施する責務を有する。

ゲノム医療をうたって悪質な治療を行っている病院も出てきていると聞きます。こうした、いわゆるトンデモ医療を規制する法律が今後策定される予定はありますか?

現時点でそうした法律が作られる予定はありませんが、遺伝性疾患だけでなく、美容関連なども含め、医学的根拠に基づかなかったり、莫大な料金を請求したりするような悪質な自由診療を規制する法律があった方が良いのではないかという議論は出ています。ゲノム医療だけでなく、遺伝子治療や細胞治療、免疫療法などをうたうクリニックの宣伝は、インターネットの動画やSNSなどで多く見られる印象ですが、特に希少難病や遺伝性疾患の治療法を探している方の目に留まりやすいように作られていると感じます。大きな字で易しく、わかりやすく作られているのは皮肉なことだと思います。こうしたことに対する問題意識は持っていますし、疾患当事者の方々には、ぜひ目を肥やして、騙されないようにして欲しいと願っています。

最後に先生から遺伝性疾患プラスの読者に一言メッセージをお願いします

まず、ゲノム医療推進法に関心を持ってたくさんご質問をいただいたのが、ちょっとびっくりして嬉しい気持ちになりました。ゲノム医療推進法は、これから作られる基本計画次第で、具体的にどういった場面でどれくらい皆さんに関わってくるかが決まってくることになります。しかし、いろいろな立場の人が必要だと思ったことで、多くの政党の議員の合意のもとで作られた、今後のゲノム医療推進の枠組みとなる法律であることは間違いありません。ですので、ぜひ、大事に皆さんと一緒に育てていきたいなと思います。これからも、折に触れて、この法律に関心を向けていただけたら嬉しいです。


ゲノム医療の推進と、遺伝的な差別を防止するための第一歩として作られた「ゲノム医療推進法」。遺伝性疾患にも大いに関わる法律であり、いま、その具体的内容となる「基本計画」が作られているところであるとわかりました。記事内で武藤先生からご紹介のあった、基本計画の検討を行っている厚生労働省のワーキンググループには、遺伝性疾患プラスアドバイザーの菅野純夫先生も、構成員として参加されています。資料や議事録は、武藤先生がおっしゃった通り、なかなか難解なところもありますが、遺伝性疾患プラスは数少ない「関心を持つ者」として情報を追い、読者の皆さんにわかりやすくお伝えしていきたいと考えています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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武藤 香織 先生

武藤 香織 先生

東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター公共政策研究分野教授。博士(保健学)。1993年に慶應義塾大学文学部を卒業、1995年に同大学院社会学研究科修了(社会学修士)。2002年に東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻にて博士(保健学)取得。財団法人医療科学研究所研究員、米国ブラウン大学研究員、信州大学医学部保健学科講師を経て、2007年より東京大学医科学研究所准教授、2013年より現職。2024年より理化学研究所生命医科学研究センター生命医科学倫理とコ・デザイン研究チームのチームリーダーを兼務。