神経筋疾患の原因になるリピート伸長病を解析する遺伝子診断法を開発

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 神経筋疾患の原因になるリピート伸長病の遺伝子診断法を開発した
  2. ロングリードシーケンス技術で病的リピート伸長変異を網羅的に解析
  3. 従来法に比べると簡便で、より正確に病気を診断できることを確認

リピート伸長病はPCRを中心とした従来法では解析困難

横浜市立大学の研究グループは、神経筋疾患の原因になるリピート伸長病を従来よりも簡単に、しかも短時間で解析できる遺伝子診断法を開発したと発表しました。

リピート伸長病は、遺伝子内の特定の繰り返しの塩基配列が、変異によって正常範囲を超えて繰り返すことで起こる遺伝性疾患で、代表的な病気として、脊髄小脳変性症ハンチントン病などが知られています。リピート伸長病では多くの場合3~6塩基を一単位として同じ方向に連なって繰り返す縦列反復配列(タンデムリピート)が認められます。現在およそ60種類の病気に関連したリピート配列が発見され、その大部分が神経筋疾患の原因となることがわかっています。

従来行われていたPCRを中心とした遺伝子解析の方法は、リピート伸長病のような塩基配列の繰り返しを正確に検出することが困難でした。また、一つの疾患に絞り込んで解析するのではなく、可能性のある複数の病気を一度に網羅的に解析したい場合には大変な手間がかかることが課題でした。

一方で、近年新たに開発されたロングリードシーケンス技術は、長い塩基配列を一続きの配列として解読し、繰り返しの塩基配列を検出しやすい特徴があります。

今回、研究グループは、オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ社が開発したGridIONシーケンサーに搭載の「アダプティブサンプリング」という方法を用いて研究を行いました。リピート伸長病の原因になる59か所の遺伝子領域を選択して、アダプティブサンプリングにより網羅的にシーケンスする手法を検討しました。

従来法では難しかった解析を可能に

こうしてロングリードシーケンス技術を用いることで、神経筋疾患を網羅的に解析し、原因となるリピート伸長変位を検出することが可能であることが確認されました。具体的には、既に神経筋疾患と診断がついている12の症例について、あらためてロングリードシーケンス技術による解析を行い、すべての患者さんの疾患関連リピート伸長変異を検出できました。

次に症状などから脊髄小脳変性症と診断されたものの、遺伝学的な診断が付いていなかった10の症例に対して解析を行い、7症例で正常の範囲を超えるリピート伸長変異を検出しました。これらの症例については従来法でも解析を試み、同様な診断は困難という結果でした。

今回開発した方法は4日以内に既知の全リピート伸長疾患の遺伝子領域における網羅的解析が可能で、従来法よりも優れていると研究グループは説明しています。今後、正確な診断や病気の原因解明につながることが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

関連リンク