日本人の重い脳小血管病の実態を明らかに、半数近くに遺伝性の原因を確認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 日本人の重い脳小血管病106例の遺伝子検査を実施、症状や画像検査の情報から特徴を分析
  2. 半数近くに遺伝性の原因を確認し、主に3つの遺伝子の関与を確認
  3. 家族歴がなくても、血圧が正常で発症年齢が低い場合は遺伝性の割合が高いと確認

原因がよくわかっていない脳小血管病

新潟大学脳研究所の研究グループは、日本人の脳小血管病の背景にある遺伝子変異の実態を明らかにしたと発表しました。

脳小血管病は、脳の細い血管に異常が起こる病気の総称で、頭の回転が悪くなったり、歩いているときにふらついたりする症状が現れます。これは脳血管性の認知症の一部として分類されます。

脳小血管病は加齢が最大の危険因子ですが、まれに遺伝子の異常によって引き起こされることが知られていました。それらは「NOTCH3」および「HTRA1」という遺伝子の異常によって起こる脳小血管病で、「NOTCH3変異で生じる皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体顕性脳動脈症(CADASIL)」、および「HTRA1変異で生じる禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体潜性白質脳症(CARASIL)」として国の指定難病となっています。しかし、日本人の重い脳小血管病の中に遺伝子変異を持つ人がどの程度存在するのかは、はっきりわかっていませんでした。

今回、研究グループは、日本全国の施設から、重い脳小血管病の症例を集めて、症状や画像検査の情報、遺伝子検査を行うための検体を調べることにしました。研究グループは106例を55歳以下で発症した75例と、56歳以上で発症し家族歴がある31例に分類。NOTCH3とHTRA1の遺伝子検査を実施し、それらの遺伝子変異が認められなかった場合には、遺伝子を網羅的に調べる全エクソン解析を行いました。

原因遺伝子の9割以上を3つの遺伝子が占める

こうしてわかったのは、日本人の重い脳小血管病の中のおよそ半数に遺伝子変異が存在し、特定の3つの遺伝子変異が全体の9割以上を占めることです。具体的には、106例のうち50例に何らかの遺伝子変異が確認され、遺伝子変異の60%はNOTCH3、22%がHTRA1、12%がABCC6と呼ばれる遺伝子でした。これら3つの遺伝子変異を合計すると94%となりました。ABCC6は皮膚や目の病気や脳梗塞を起こす弾性線維性仮性黄色腫の原因遺伝子で、これが脳小血管病の原因になりうることが示されました。

また、「第一度近親(両親、子供、兄弟姉妹)に家族歴があるか」「高血圧があるか」「発症年齢が43歳以下か」という条件に基づいて患者さんを分類したところ、第一度近親の家族歴がなく、高血圧がなく、発症年齢が43歳以下のグループ、もしくは第一度近親の家族歴があるグループでは、7割以上が遺伝性脳小血管病であると確認されました。これは診断に役立つ可能性があります。

研究者は今後、最適な診断と診療の開発が可能になると見通しを示しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

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