開発中のデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬、FDAと治験計画合意

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. DMDの筋機能改善が期待されるエクソンスキップ治療
  2. 日本で承認されているビルトラルセンに続く、2番目の開発薬
  3. 日本の医師主導治験でジストロフィンタンパク質の発現回復を確認

エクソンスキップ治療で用いるエクソン44スキップ薬

国立精神・神経医療研究センターは、開発中のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)治療薬「NS-089/NCNP-02」について、米国食品医薬品局(FDA)と第2相試験の治験計画合意に至ったと発表しました。この薬は、日本新薬株式会社と共同で開発を進めているものです。

DMDは、ジストロフィン遺伝子の変異により、筋肉の細胞膜からジストロフィンタンパク質が失われることで筋力が低下する筋ジストロフィーです。この病気は、ほとんどが男児に発症します。これまで、DMDではエクソンスキップ治療という治療法が開発されてきました。この治療法によってつくられるタンパク質は、正常なジストロフィンタンパク質と比べると一部が短くなるものの、機能が保たれたジストロフィンタンパク質となります。そのため、筋機能の改善が期待されています。

「NS-089/NCNP-02」は、エクソンスキップ治療で用いるエクソン44スキップ薬です。NS-089/NCNP-02の治療対象となるのは、ジストロフィン遺伝子で「エクソン45」という部分が欠けているために、正常なジストロフィンタンパク質が作られないタイプのDMD患者さんです。

News230407
国立精神・神経医療研究センター プレスリリースより

ビルトラルセンが適応とならない患者さんへ、別のエクソンを標的とした薬を開発

エクソンスキップ治療について日本では、これまでに核酸医薬品「ビルトラルセン」(製品名:ビルテプソ)が承認されています。この薬は、「NS-065/NCNP-01」を有効成分とした、エクソン53スキップ薬です。

一方、エクソン53スキップ薬が適応とならない患者さんに対して、別のエクソンを標的とした薬の開発が求められています。今回発表されたNS-089/NCNP-02は、NS-065/NCNP-01に続く2番目の開発薬です。

日本での医師主導治験でジストロフィンタンパク質の発現回復、運動機能も改善傾向

NCNP病院と鹿児島大学病院で実施したNS-089/NCNP-02の医師主導治験の結果、ジストロフィンタンパク質の発現が平均15.79%回復したことが認められました。運動機能の維持または改善傾向が示唆されており、DMDへの治療効果が期待されています。

米国での開発は、日本新薬の米国子会社NS Pharma,Inc.が実施する予定です。なお、同社は日本でも、医師主導治験に参加した6人を対象に継続投与試験を実施しています。(遺伝性疾患プラス編集部)

関連リンク