フェニルケトン尿症治療薬パリンジック発売、日本で約30年ぶりの新規治療薬

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. フェニルケトン尿症は、酵素PAHの変異で発症する
  2. PAHの酵素活性を代替する治療薬が成人を対象に発売
  3. 血中フェニルアラニン濃度変化量、プラセボと比較で統計学的に有意な差

指定難病・小児慢性特定疾病の対象疾患

 BioMarin Pharmaceutical Japan株式会社は5月24日、成人のフェニルケトン尿症治療薬「パリンジック(R)皮下注 2.5mg/10mg/20mg」(一般名:ペグバリアーゼ(遺伝子組換え))の販売開始を発表しました。

フェニルケトン尿症は、フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)遺伝子変異により発症する希少遺伝性疾患指定難病小児慢性特定疾病の対象疾患です。フェニルアラニンをチロシンに変換するのに必要なPAHに変異が生じることで、血液中にフェニルアラニンが蓄積。蓄積したフェニルアラニンが脳に影響を及ぼし、チロシンが少なくなることで色素が正常に作れなくなるなどして、さまざまな症状が現れます。

また、フェニルケトン尿症は、新生児マススクリーニング検査の対象疾患の1つです。万が一、新生児マススクリーニング検査で発見されずに無治療の状態が続く場合、生後数か月~2歳頃までに脳の発達障害をきたすとされています。成人患者さんで治療を中断した場合、頭痛、うつ状態、神経症、認知機能の低下などの症状が現れます。

米国2018年5月・欧州連合2019年5月から使用されている

パリンジックは、PAHの酵素活性を代替する治療薬です。PAHと異なり、フェニルアラニンをアンモニアとケイ皮酸に分解することで血中のフェニルアラニン濃度を低下させます。海外と国内の3つの臨床試験の結果に基づき、日本では3月に承認。臨床試験では、プラセボとの比較で、血中フェニルアラニン濃度変化量の統計学的に有意な差が確認されました。

パリンジックは、米国では2018年5月から、欧州連合では2019年5月から使用可能となっており、フェニルケトン尿症患者さんに提供されています。日本では、約30年ぶりとなるフェニルケトン尿症の新規治療薬となりました。(遺伝性疾患プラス編集部)

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