重症血友病Aの乳児、ヘムライブラ早期予防投与の有効性を確認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 薬の効果を低下させる「インヒビター」保有に関係なく、出血抑制効果が期待される治療薬
  2. 重症血友病A乳児の出血コントロール達成、忍容性も良好
  3. 皮下投与可能なヘムライブラ、静脈内投与が困難な乳児の負担軽減に期待

非常に血が止まりにくくなる遺伝性疾患「血友病A」

中外製薬株式会社は12月11日、へムライブラ(R)(一般名:エミシズマブ)について、未治療または治療歴の短い血液凝固第VIII(8)因子に対するインヒビターを保有しない(以下、非保有)重症血友病Aの乳児を対象とした、第3相HAVEN 7試験の主要解析の結果を発表しました。

血友病Aは、血液凝固第VII因子の活性が全くない、もしくは十分な活性が得られないために非常に血が止まりにくくなる遺伝性疾患です。複数の臨床試験の結果より、早期からの出血抑制を目的とする治療が長期にわたり症状を改善し、頭蓋内出血のリスクを低下させることが示されています。このことから、世界血友病連盟(WFH:World Federation of Hemophilia)の治療ガイドラインでは、定期的な出血抑制を目的とする治療を低年齢で開始することが血友病の標準治療としています。しかし、血友病Aの乳児の多くは、生後1年までは出血抑制を目的とする治療が開始されていません。

ヘムライブラは、第VIII因子と似た働きをするタンパク質で、第VIII因子の代わりとして働く効果がある抗体医薬です。血友病Aでは、不足する凝固因子を補う補充療法が行われます。しかし、繰り返す補充療法により、薬の効果を低下させる「インヒビター(抗体)」の発生が課題でした。同剤は、このインヒビターの保有に関係なく、出血を抑制する効果が期待される治療薬です。現在、インヒビター保有・非保有の先天性血友病Aに対して、あわせて世界115か国以上で承認されています。日本では、インヒビター保有の先天性血友病Aに対して2018年3月に承認され、その後、インヒビター非保有の先天性血友病A、後天性血友病Aに対しても適応が拡大されています。

治療を必要とする自然出血は認められず

今回行われた臨床試験(HAVEN 7試験)の結果、ヘムライブラは重症血友病Aの乳児(生後12か月まで)を対象に臨床的意義のある出血コントロールを達成し、忍容性は良好でした。

55人のデータを含む解析結果では、追跡調査101.9週間(中央値)の時点で、治療を必要とする出血が認められなかった人の割合は54.5%(30人)、治療が必要かどうかに関わらず全ての出血が認められなかった人の割合は16.4%(9人)でした。治療を必要とする自然出血が認められた人はおらず、治療を必要とする出血は全て外傷性でした。46人(83.6%)で合計207件の出血が認められ、そのうち87.9%が外傷性でした。治療を必要とする出血のモデルに基づく年間出血率(ABR:annualized bleeding rate)は0.4(95%信頼区間:0.30~0.63)でした。

新たな安全性シグナルは認められず、ヘムライブラと関連のある重篤な有害事象、頭蓋内出血または死亡は報告されませんでした。血液凝固第VIII因子インヒビター陽性となった人は、3.6%(2人)。これは、ヘムライブラの投与により第VIII因子製剤の使用が少なかったことが理由と推察されました。また、抗薬物抗体が陽性となった人はいませんでした。

乳児への出血抑制治療、早期開始を支持

同社の奥田修代表取締役社長CEOは、「重症血友病Aに対する出血抑制を目的とした治療において、静脈内投与が困難な乳児に対し、皮下投与可能なヘムライブラは治療負担を軽減する選択肢となります。今回の試験では、乳児に対して初めて、ヘムライブラが有効な出血コントロールを示しました。これは、これまでに実施された臨床試験において示された幅広い年齢層におけるデータを補完し、ヘムライブラによる乳児における出血抑制を目的とした治療をより早期に開始することを支持するものです」と、コメントしています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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