ニーマンピック病C型、治療薬候補の有効性/安全性向上につながる構造特性を解明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ニーマンピック病C型は、小児期より進行性の中枢神経障害が発症する
  2. シクロデキストリン(CD)誘導体の一つが治療薬候補として治験実施中だが有効性や安全性に課題
  3. 複数のCD誘導体解析から治療効果や毒性に関与するコレステロールとの複合体形成様式が判明

コレステロールを運ぶタンパク質機能が失われる病気

宮崎大学を中心とした研究グループは、ライソゾーム病の一つであるニーマンピック病C型(NPC)の治療薬候補シクロデキストリン(CD)について、有効性や毒性に関わる分子構造の特性を見出したと報告しました。

NPCは、細胞の中のライソゾームと呼ばれる場所において、コレステロールを運ぶ機能を持つタンパク質であるNPC1やNPC2の機能が遺伝的に失われ、細胞内のコレステロールバランスが崩れることで発症する遺伝性疾患です。「小児の認知症」とも表現され、小児・新生児期に進行性の中枢神経障害が発症し、精神発達の遅れ、運動失調、肝脾腫、呼吸不全など全身に症状が見られ、10歳前後で命を落とすケースも多い疾患です。

この病気の治療薬として、CD(グルコースが複数結合して環状になった構造の物質)が着目されており、その構造の一部を変更した物質(CD誘導体)である「2-hydroxypropyl-β-CD(HP-β-CD)」が、体内のコレステロールを強力に可溶化する薬の候補として開発されました。現在、HP-β-CDを静脈または髄腔内に投与する世界規模の治験が行われています。しかし、劇的な治療効果は得られておらず、聴覚障害の有害事象が数多く引き起こされたことから、より有効で安全な治療薬の開発が期待されています。

そこで研究グループは、複数の別な分子構造をもつCD誘導体について、コレステロールとどのように結合して複合体を形成するかなどを予測する解析を行いました。

CD誘導体の治療効果や毒性に関わる構造

解析の結果、各CD誘導体とコレステロールとの分子レベルでの詳細な関わり方や、細胞や動物実験レベルでの、治療薬としての安全性や効果などがわかりました。

具体的には、グルコース6分子から成るα-CD誘導体とコレステロールは複合体を作らないこと、グルコース7分子のβ-CD誘導体は、コレステロールと1対1、もしくは2対1の複合体を形成すること、またグルコース8分子のγ-CD誘導体は、コレステロールと1対1の複合体だけを形成することが明らかになりました。

さらに、これらのCD誘導体について細胞やマウスを用いた実験を行ったところ、コレステロールと1対1の複合体を作ることが治療効果に関わること、2対1の複合体がこの治療薬の毒性に関与している可能性が示唆されました。

研究グループは今後、この成果を基にCDの分子構造を最適化し、HP-β-CDを上回る有効性と安全性をもったCD誘導体の開発につながると期待される、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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