難治性てんかん発作のほか、進行性の歩行障害が引き起こされる
名古屋大学を中心とした研究グループは、ドラベ症候群の症状の一つである進行性歩行障害に対し、「レボドパ」と呼ばれるパーキンソン病の治療薬が有用かどうかについて世界で初めて検証したと報告しました。
ドラベ症候群は、有熱時のけいれん重積(長く続く)を特徴とする発達性てんかん性脳症で、発症頻度は2〜4万人に1人と推定されています。この病気では、難治性のてんかん発作だけでなく、知的障害や進行性の歩行障害なども引き起こされることがあります。進行性の歩行障害は患者さんの生活の質や日常生活の活動度に大きく影響する症状の一つですが、これまでのこの病気に関する研究の多くはてんかん発作のコントロールに関するもので、確立した治療法はありませんでした。
これまでに、ドラベ症候群の歩行の改善にレボドパが有効だったとする症例報告がありました。レポドパは、パーキンソン病などで広く使用されている薬剤で、脳内でドパミンという神経伝達物質に変換されて作用します。しかし、その有効性を検証するための試験などは行われていませんでした。
その理由の一つとして、歩行を定量的に評価する方法が限られていることがあります。研究グループは三次元歩行解析と呼ばれる、整形外科領域で脳性麻痺(まひ)などに臨床応用されてきた解析方法に着目しました。そして、この三次元歩行解析を用いてドラベ症候群の歩行障害の定量的な評価を行い、レポドパの有効性を解析しました。
ランダム化クロスオーバー試験で有効性示す
研究グループは、ランダム化クロスオーバー試験と呼ばれる方法を使って検証を実施しました。歩行障害が見られる6~20歳のドラベ症候群患者さん9人を、レボドパ先行(レボドパを先に内服する)のグループと非レボドパ先行(レボドパを後で内服する)グループに分けて試験が行われました。
解析の結果、レボドパの内服によって、歩容(歩くときの姿勢・動作・歩幅など)を点数化した指標であるGait Deviation Index、6分間歩行距離、バランステストといった結果がそれぞれ統計学的に有意に改善していることが示されました。
また、サブグループ解析では、レボドパは若年で、試験に参加した段階での歩行能力が高い症例でより有効であることが示され、歩行障害が軽度の時期に治療介入することが必要と考えられました。有害事象は、1人に薬剤との因果関係不明の発熱で内服を中止した以外には目立ったものはありませんでした。
これらの結果から、ドラベ症候群の歩行障害に対し、レボドパは有効かつ忍容性の高い治療法となりうると考えられました。
研究グループは、これまで不明な点の多かったドラベ症候群での運動障害の病態解明にもつながることが期待される、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)