多発性嚢胞腎、家族歴のない成人患者さんの遺伝学的背景を明らかに

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 日本国内27施設、家族歴がない成人の多発性嚢胞腎患者さん157人を網羅的遺伝子解析
  2. 多発性嚢胞腎の新たな原因遺伝子IFT140変異を7人で確認
  3. IFT140変異の患者さんは、腎機能障害進行が緩やかで嚢胞の形が特殊と判明

家族歴がない/PKD1・2遺伝子変異を認めない患者さん、原因遺伝子変異は?

東京医科歯科大学の研究グループは、家族内に同じ病気を認めない成人の多発性嚢胞腎患者さん157人を対象に網羅的遺伝子解析を行い、この中にIFT140遺伝子の変異を原因とする患者さんが7人いることを明らかにしたと発表しました。

News0920
(画像はリリースより)

多発性嚢胞腎は両方の腎臓に嚢胞(内部に分泌物が溜まった袋状の構造)が多く生じ、腎臓の機能が徐々に低下する遺伝性疾患です。腎機能の低下に伴い腎不全となり、透析や腎移植が必要となります。なお、指定難病対象疾病小児慢性特定疾病の対象疾患です。

多発性嚢胞腎には、常染色体優性(顕性)遺伝と常染色体劣性(潜性)遺伝の2つのタイプがあります。常染色体顕性多発性嚢胞腎の原因は、PKD1またはPKD2遺伝子の変異によるものと考えられています。しかし、多発性嚢胞腎患者さんのうち、家族内に同じ病気を認めない(=家族歴がない)人が約1割いることが知られています。これらの患者さんの中には、PKD1またはPKD2の遺伝子に変異を認めない患者さんがいることがわかっていました。

近年の遺伝子解析技術の進歩により、PKD1やPKD2以外にも多発性嚢胞腎の原因となる遺伝子が明らかになっています。しかし、家族歴がない患者さんでは、PKD1やPKD2遺伝子に変異を認めない場合、どのような遺伝子が原因で病気を発症しているかはわかっていませんでした。

患者さん157人のうちPKD1・2変異51人、IFT140変異7人

今回の研究では、日本国内27施設で、家族歴がない成人の多発性嚢胞腎患者さん157人を対象に網羅的遺伝子解析を行いました。その結果、7人(4.5%)で、多発性嚢胞腎の新たな原因遺伝子とされているIFT140に変異を認めました。また、51人で従来の原因遺伝子であるPKD1またはPKD2に変異を認めました。

IFT140を原因遺伝子とする患者さんは、従来の原因遺伝子であるPKD1を原因遺伝子とする患者さんと異なり、腎機能障害の進行が緩やかで、腎臓にできる嚢胞の形も特殊であることがわかりました。

IFT140変異、PKD1・PKD2に次ぐ3番目に多い原因遺伝子

今まで、日本ではIFT140を多発性嚢胞腎の原因遺伝子とする報告はありませんでした。しかし、家族歴がない多発性嚢胞腎患者さんでは、IFT140を原因遺伝子とする患者さんが約5%おり、従来の原因遺伝子であるPKD1やPKD2に次ぐ、3番目に多い原因遺伝子であると考えられます。

今回の研究によって、日本でもIFT140を原因遺伝子とする患者さんが比較的多く存在していることが明らかになりました。この研究結果は、家族歴がない成人の多発性嚢胞腎患者さんの診断、薬剤治療適応の決定や遺伝カウンセリングなどさまざまな臨床への還元が期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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