開発中の血液脳関門通過型α-N-アセチルグルコサミニダーゼ製剤「JR-446」
株式会社メディパルホールディングスとJCRファーマ株式会社は、血液脳関門通過型α-N-アセチルグルコサミニダーゼ製剤(開発番号:JR-446)について、ムコ多糖症IIIB型(サンフィリッポ症候群B型、以下、MPS IIIB)を対象とした日本国内での臨床第1/2相試験で被験者第1例目への初回投与が行われたと発表しました。
酵素の働きで細胞の不要物を分解する細胞内小器官「ライソゾーム」。不要物が分解されず溜まることで、さまざまな症状が現れる病気の総称を「ライソゾーム病」と言います。MPS IIIBは、ライソゾーム病の一つ「ムコ多糖症」の一種です。世界における患者さんの数は500~1,000人と推察されている超希少疾患。現在までに、世界で承認されている治療法はありません。
MPS IIIBは、ヘパラン硫酸の分解に関わるライソゾーム酵素をコードするNAGLU遺伝子の変異によって生じる常染色体潜性遺伝疾患です。脳内に中枢神経系へのヘパラン硫酸が蓄積されることにより、睡眠障害、言語消失、行動の変化などの神経症状が急速に進行するとされています。
18歳未満の患者さん対象のJR-446臨床試験、安全性や潜在性有効性などを評価
JCRが創製したJR-446は、非臨床試験で独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo(R)」を使用し、MPS IIIBに関連する症状に対する効果を示すことが確認されています。株式会社メディパルホールディングスとJCRファーマ株式会社は2023年9月に、JR-446のMPS IIIBを対象疾患とした海外事業化に関する実施許諾契約と日本における共同開発・商業化契約を締結しています。
今回の臨床試験は、18歳未満のMPS IIIBの患者さんを対象とした多施設共同の単群非盲検試験。主な目的は、JR-446の安全性、忍容性、潜在的有効性の評価です。
同試験の医学専門家で国立成育医療研究センター小児内科系専門診療部遺伝診療科診療部長の小須賀基通先生は、「これまで治療法のなかったMPS IIIBに対する新たな治療法が提供できることを喜ばしく思います。我が国では、MPS IIIの中でもMPS IIIBの頻度は高く、中枢神経系症状が主であることから、中枢神経をターゲットにした新たな治療法が長く待たれていました。本臨床試験がMPSIIIBの患者さんの病状や日常生活を変える大きな転換点になることを願ってやみません」とコメントしています。(遺伝性疾患プラス編集部)