フェニルケトン尿症、新たな経口薬の臨床試験で食事制限を緩和できる可能性を示唆

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. フェニルケトン尿症の治療薬候補「セピアプテリン」の臨床延長試験結果を発表
  2. 同剤は二重作用でフェニルアラニン水酸化酵素活性高める経口薬、国内で承認申請中
  3. 97%以上が治療中に自由に食事ができ、タンパク質摂取量は平均126%増加と報告

治療をしないとフェニルアラニンが体内に蓄積し、知的障害やてんかん発作引き起こす

米国のPTC Therapeutics社は、フェニルケトン尿症の治療薬として開発中の「セピアプテリン(開発コード:PTC923)」を評価する、進行中の第3相臨床試験「APHENITY試験」に続く非盲検延長試験の結果を発表しました。

フェニルケトン尿症は、アミノ酸の一つであるフェニルアラニンを分解するために必要な酵素であるフェニルアラニン水酸化酵素の設計図となる遺伝子の変異により、フェニルアラニンが体内で異常に蓄積することで引き起こされる遺伝性疾患です。フェニルアラニンは、多くの食品に含まれているため、適切な治療や食事の管理が行われない場合、蓄積したフェニルアラニンが有害なレベルに達し、知的障害、てんかん発作、発達の遅れ、行動の問題など、さまざまな症状が引き起こされる可能性があります。

セピアプテリンは、フェニルアラニン水酸化酵素の活性を二重の作用で高めるように設計された経口薬です。セピアプテリンは吸収された後、フェニルアラニン水酸化酵素の働きを補助する役割を持つ「BH4」に変換されます。さらに、セピアプテリンは、フェニルアラニン水酸化酵素の構造を矯正して酵素機能を高める働きもあります。この二重の作用によって、セピアプテリンは血中のフェニルアラニン濃度を低下させることが期待されています。

セピアプテリンは2025年1月14日、APHENITY試験の良好な結果をもとに、フェニルケトン尿症の小児および成人患者さんの治療薬として、国内における製造販売承認申請が行われました。

古典的フェニルケトン尿症の遺伝型にも有効な可能性

今回発表された非盲検延長試験のデータでは、セピアプテリン治療により、フェニルケトン尿症の患者さんが必要とされる食事制限が大幅に緩和できる可能性を示す結果が示されました。

延長試験では、APHENITY試験に参加してセピアプテリン治療を受けた患者さんを対象に、食事中のフェニルアラニン量とタンパク質摂取量について、ベースラインからの変化が評価されました。結果として、延長試験に参加した人の97%以上が、セピアプテリン治療中に食事を自由にすることができ、タンパク質の摂取量は平均126%増加したことがわかりました。そして、66%が血中フェニルアラニン濃度をコントロールしながら、フェニルケトン尿症ではない人に推奨される1日のタンパク質摂取量と同等かそれ以上を摂取することができていました。

また、遺伝子変異解析により、参加者の70%以上は古典的なフェニルケトン尿症とされるBH4に反応しない重症型の変異を持っていることがわかり、今回の試験でこれらの患者さんでも治療効果が実証されたことから、幅広い患者さんにセピアプテリンが有効である可能性が示唆されました。

同社の最高経営責任者であるマシュー・B・クライン医師は、「これらの新たなデータは、セピアプテリンがフェニルケトン尿症の小児および成人、特に最も重症の患者にもたらす意義深い効果をさらに裏付けている」と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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