遺伝学的検査/遺伝子検査はどのような用途で行われますか?

遺伝性疾患プラス編集部

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遺伝学的検査/遺伝子検査では、検査を受けた人の遺伝的背景について情報を得ることができます。遺伝学的検査の用途は以下の通りです。

新生児スクリーニング

新生児スクリーニングは、生まれた直後の早い段階で治療が可能な遺伝性疾患を特定するために行われます。米国では、毎年数百万人の赤ちゃんが検査を受けています。日本でも、2023年3月現在、20の疾患を対象に、基本的に全ての生まれた赤ちゃんが、新生児マススクリーニング検査を受けています。

疾患の診断

診断のために行われる検査は、遺伝子または染色体の状態から(遺伝性)疾患の診断や、疑わしい疾患を除外するために行われます。多くの場合、身体的な徴候や症状などから特定の疾患が疑われた時、その診断を確定するために遺伝学的検査/遺伝子検査が行われます。この検査は、出生前を含めて生涯のいつでも実施することができますが、すべての遺伝子やすべての遺伝性疾患について行われる訳ではありません。また、検査の結果は、医師が病気の治療方法を選択する際にも参照されることがあります。

保因者(キャリア)であるかどうか

保因者であるかどうかの検査は、両親から引き継いだ2つ(2コピー)の遺伝子の両方に原因となる変異が存在する場合に発症する遺伝性疾患において、原因となる遺伝子のコピーを1つ保有する人を特定するために使用されます。この種類の検査は、遺伝性疾患の家族歴がある人や、特定の遺伝性疾患のリスクが高い民族の人に行われる場合があります。夫婦が二人で検査を受けることで、遺伝性疾患の子どもが生まれる可能性について情報を得ることができます。

出生前診断

出生前診断のための検査は、胎児の遺伝子変異や染色体異常などを見つけ出すために、妊娠中に実施されます。出生前検査は、場合によっては夫婦の不安を軽減したり、妊娠に関する決断を助けたりすることができます。しかし、遺伝性疾患や先天性異常の可能性をすべて特定できるわけではありません。

着床前診断

着床前診断の検査は、体外受精などの生殖補助医療(不妊治療)の際に、胚の遺伝的な状態を検査し、遺伝子変異や染色体異常の可能性を減らすために行われます。体外受精は、女性の卵巣から卵子を取り出し、体外で精子と受精させるものです。着床前検査では、体外受精で得られた胚から少数の細胞を採取し、特定の遺伝的な変化を検査し、変化のない胚だけを子宮に移植して妊娠を開始させます。

予測・予防を目的とした検査

疾患の予測や早期発見のための検査は、多くの場合、出生後すぐではなく、人生の後半になってかかりやすい病気と関連する遺伝子変異を検出するために行われます。これらの検査は、家族や親せきなどに遺伝性疾患を持つ人がいるものの、検査の時点では自分自身にその疾患の症状や徴候がない場合に役立つ可能性があります。例えば、特定の種類のがんや、遺伝性のヘモクロマトーシス(鉄過剰症)など、遺伝的背景と関連する疾患について、その発症リスクを高める変異の有無を検査することで、徴候や症状が現れる前に発症を予測することができます。検査の結果によって、今後の受診に関する意思決定に役立てることができます。

法医学的な検査

法医学的な目的で行われる検査は、病気に関連する遺伝子変異を検出するのではなく、法律上の目的で、多くの場合DNA配列から個人を特定する検査です。この種類の検査は、災害時の被災者や犯罪被害者/容疑者の特定などの他、人と人の生物学的関係(例えば親子関係)を調べる目的でも使用されます。

 

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