髪の質感や太さに影響を与える遺伝子は、民族によっても異なる
ストレート、ウェーブ、カールなどの髪の質感や髪の太さには、遺伝的な要因が関わっていると考えられています。これまでの研究により、民族によって異なる遺伝子が髪の質感や太さに影響を与えることが示唆されています。例えば、アジア人の髪の太さの違いとの関連では、EDARとFGFR2という2つの遺伝子の多型(病気の原因とならないDNAの変化)、また北欧に祖先を持つ人々の髪質の違いとの関連においては、TCHH遺伝子の多型が知られています。さまざまな集団における髪の質感や太さには、さらに多くの遺伝子が関係している可能性があると考えられています。
異常な毛髪の特徴を示す疾患と関連する遺伝子
また、異常な毛髪の生え方や質感を特徴とする遺伝性疾患は、髪の構造と安定性に関わる遺伝子の変異によって引き起こされます。髪の細胞をつなぎあわせるデスモソームという特殊な細胞構造、髪に強度と弾力性を与えるケラチンというタンパク質、毛髪成長を促進するリゾホスファチジン酸(LPA)という分子を含む化学シグナル伝達経路に関連する遺伝子などが疾患の原因と関わっていると考えられています。例えば、以下のような疾患があり、関連する遺伝子は健康な人の髪の質感や太さの個人差にも関わっていると考えられています。
- 限局性常染色体劣性遺伝性貧毛症(DSG4、LIPH、LPAR6遺伝子変異が原因)
- 羊毛状毛髪を伴う角皮症(JUP、DSP、DSC2、KANK2遺伝子変異が原因)
- 連珠毛(れんじゅもう・DSG4、KRT81、KRT83、KRT86遺伝子変異が原因)
- 櫛(くし)でとかせない頭髪症候群(PADI3、TCHH、TGM3遺伝子変異が原因)
髪の質感や太さには遺伝以外の要因も、影響を与えます。例えば、ホルモン、特定の薬剤、ヘアリラクサーやパーマなどの化学薬品は、一時的、もしくは永久的に人の髪の特性を変化させます。また、髪の質感や太さは、年齢によっても変化します。(遺伝性疾患プラス編集部)