人間の行動や認知と同じように、知能は「遺伝的要因」と「環境要因」の両方から影響を受けます。
知能の定義や測定方法はさまざまであることから、その研究は難しいとされていますが、多くの場合、知能の定義には「経験から学び、変化する環境に適応する能力」が含まれ、また知能の要素には推論、計画、問題解決、抽象的思考、複雑な考えを理解する能力が含まれます。そして、多くの研究では知能を測定する指標として「知能指数(IQ)」に依存しています。
これまで、知能に影響を与える遺伝子を探すためにさまざまな研究が行われてきました。過去の研究の多くは、家族内でのIQの類似点と相違点に着目したもので、特に、(遺伝的な影響の異なる)養子や(遺伝的な影響がほぼ同じである)双子について調べられました。また、ゲノムの特定の領域がIQと関連しているかどうかを調べるために、ゲノム全体の変異を調べた研究(ゲノムワイド関連解析:GWAS)も多くあります。しかし、これまで知能の差に大きな影響を与える遺伝子を特定することはできていません。その理由として、知能には多くの遺伝子が関与している可能性があり、一つひとつの遺伝子が知能に与える影響は小さいと考えられています。また、記憶力や言語力など、知能に関わる他の分野には、さらに他の遺伝的要因が関与していると考えられています。
知能は、育った環境の影響も強く受けます。子どもの成長過程で知能に影響を与える要因として、家庭環境や子育て、教育や学習資源の有無、健康管理や栄養状態などがあります。実際には遺伝的要因と環境要因は互いに影響し合うため、それぞれの影響を切り分けることが難しいのです。例えば、「自分と両親の知能レベルが似ている」と感じている場合を考えてみた時、それは、親から子へ受け継がれた遺伝的要因によるものなのか、それとも、生まれ育った環境要因によるものなのでしょうか?決してどちらか一つだけの要因によるものではありません。知能には遺伝的要因と環境要因の両方が関わっていると考えられるのです。(遺伝性疾患プラス編集部)