難病相談支援センターではどんなことを相談できる?神奈川県の取り組み

遺伝性疾患プラス編集部

遺伝性疾患の当事者・ご家族は、症状に関連して生活に関わるお悩みと日々向き合っておられます。お悩みの中には、「仕事を続けられるか不安」「利用できる制度を知りたい」など病院へ相談しづらい内容も。「そもそも、どこに相談したら良いか?」と、迷われた経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、難病の当事者やご家族の療養生活に関わるさまざまな相談に対応している「難病相談支援センター」の取り組みをご紹介します。難病相談支援センターは、難病当事者の療養生活の質の維持向上を支援することを目的に、全国の都道府県・指定都市に設置されています。そして、難病診療連携コーディネーター・難病診療カウンセラーといった方々が、当事者・ご家族のお話を伺って必要な情報を提供したり、医療機関と連携したりすることで、支援活動を行っています。その取り組みは、難病確定診断を受けている当事者はもちろん、症状が現れているものの確定診断がついていない未診断疾患の当事者に対しても行われています(関連して、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)の最新情報についてはコチラの記事をご確認ください)。

今回の記事では、神奈川県の難病相談支援センターにご協力いただき、その取り組みをご紹介します。

Nanbyou Kanagawa
公式ウェブサイトより

難病診療連携コーディネーター・難病診療カウンセラーとは?

難病診療連携コーディネーター・難病診療カウンセラーは、それぞれどのような支援を行っていますか?

難病診療連携コーディネーター・難病診療カウンセラーは、かながわ難病相談・支援センターに併設されている「難病情報連携センター」に配置されています。相談窓口では、「指定難病」を含め、全ての「難病」患者さんの相談に対応しています(「指定難病」と「難病」については、コチラからご確認ください)。例えば、実際に「難病」と診断を受けた方や、ご自身で症状を検索して「難病ではないか?」と感じている方など、さまざまな方のお話を伺っています。

難病診療連携コーディネーターは、神奈川県内のさまざまな医療機関からの相談を受け、患者さんの診断を確定するために関係各所へおつなぎする役割を担っています。具体的には、研究班や学会、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)、国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)等、全国の難病医療支援ネットワークや、県内の難病医療連携拠点病院と連携しています。神奈川県では、横浜市立大学附属病院・聖マリアンナ医科大学病院・北里大学病院・東海大学医学部付属病院の4大学病院が難病医療連携拠点病院に指定されています。

続いて、難病診療カウンセラーは、難病相談支援センターの相談支援員と連携して、個別の相談への対応や情報提供、研修企画・実施等の業務を行っています。

神奈川県では、前出の難病医療連携拠点病院と毎年、情報交換・共有を目的とした会議を行い連携しています。また、日々の相談の中では、診断が確定していない未診断の患者さん、セカンドオピニオンを希望されている方の情報なども共有しています。

かながわ難病相談・支援センターでは、どういった職業の方が難病診療連携コーディネーター・難病診療カウンセラーを担当されていますか?

看護師、ソーシャルワーカー等資格を有する方の配置を求められており、かながわ難病相談・支援センターでは看護師が担当しています。

どういったご相談が多く寄せられていますか?

ご相談内容はさまざまで、「療養中の不安」「就労に関わるお悩み」に関するご相談や、「指定難病医療費助成制度」「患者会」に関わる情報を求めている方もおられます。

「療養中の不安」についても、内容はさまざまです。例えば、「自分の病状で受けられる制度・支援を知りたい」「患者の両親の高齢化により、仕事が難しい患者自身の将来が不安」「退院後の病院選択で悩んでいる」「医療費受給者証がなかなか届かない」といったご相談が寄せられています。

他の自治体との連携もありますか?

あります。昨年度も、神奈川県に転居予定の患者さんご家族について、他県の難病診療連携コーディネーターと連携した事例がありました。この事例のように、今後も患者さんの状況にあわせて、自治体を超えての連携も求められると感じます。

就労に関わるお悩みは、難病患者就職サポーターが個別対応

難病患者就職サポーターによる個別就労相談では、どのようなことを行っていますか?

神奈川県労働局に属している難病患者就職サポーターは、神奈川県では横浜市と厚木市の公共職業安定所(ハローワーク)に2人配置されています。難病患者就職サポーターは、難病患者さんの就労に関わる相談に対応しています。

休職後の復職に向けて不安を抱えている方、仕事と治療の両立に向けて今後の働き方を相談したいという方など、皆さん、それぞれお悩みをお持ちです。よくお寄せいただくご相談内容の1つに、「企業側に病気のことを伝えるかどうか」といったものがあります。

企業側に病気のことを伝えずに就職活動をされる方は、多い印象でしょうか?

患者さんそれぞれの状況によります。例えば、症状が安定している方や、過去に企業側に病気のことを伝えて仕事が決まらなかったという経験のある方で、あえて企業側に伝えず就職活動をしている方はいらっしゃいます。難病患者就職サポーターからは、企業側に伝えることをお勧めすることが多いです。なぜなら、伝えておくことで、就職後の通院など急な休みに対応しやすくなるからです。一方、短時間勤務や平日の通院日が確保できるような働き方の場合は、あえて伝えないケースもあります。

最初は病気のことを伏せて就職活動をご希望の場合、どのようにアドバイスされていますか?

病気のことをお伝えするタイミングなどは、相談者の状況にあわせて、個別にアドバイスさせていただきます。例えば、書類選考の段階で落とされないように、あえて最初は病気の情報を伏せることをアドバイスするケースもあります。その後、面接に進み、健康上のことを話す機会があった場合にお伝えします。その際にも、病名をそのまま伝えたり、「難病」という言葉を使ったりせず、「消化器系の病気」「免疫系の病気」といった伝え方をお勧めしています。症状に関連してお伝えしたほうが、誤解なく伝わりやすいからです。その他、「定期的に通院し、治療を受けることが必要」といったことはお伝えしつつ、「医師からは、働けると言われている」と説明するなど、伝え方のアドバイスをさせていただいています。

未診断疾患の当事者支援、確定診断につながった事例も

難病を疑われながら確定診断につながらない未診断の当事者・ご家族からのご相談は、年間どのくらいありますか?

令和4年(2022年)度の相談件数は29件でした。未診断の当事者・ご家族からは、「疾患の情報が欲しい」「生活に活用できる制度を知りたい」「急時の対応と相談場所を確認したい」「指定難病医療費助成制度の概要を知りたい」「確定診断できる医療機関を知りたい」「仕事や療養生活について悩んでいる」など、さまざまな相談が寄せられています。

支援を通じて、実際に確定診断につながった事例を教えてください。

一人暮らしの方から求められた支援の事例です。なかなか確定診断がつかず、ご自身が希望している治療を受けられないとのことで、焦りを感じているご様子でした。その方の場合は、地域の支援機関をご紹介しました。また、ご本人の希望にあわせて、身体障害者手帳取得のため他の病院をご紹介。元々通われていた病院とあわせて通院していただき、結果、ご紹介先の病院で神経難病の確定診断となりました。

遺伝性疾患プラスの読者にメッセージをお願いいたします。

これからも、病気と向き合う当事者、そして、そのご家族の皆さまの支援に関わらせていただき、少しでもお力になれればと思います。


今回、神奈川県の取り組みをお伺いし、難病相談支援センターでは指定難病に限らず、幅広い難病の当事者・ご家族への支援を行っていることや、未診断疾患の当事者・ご家族も対象に活動されていることを改めて知ることができました。

「どこに相談したら良いか?」と迷われた場合には、ぜひ、お住まいの地域の「難病相談支援センター」を選択肢の1つとして思い出していただければと思います。都道府県・指定都市難病相談支援センターの詳細は、コチラのページからご確認ください。(遺伝性疾患プラス編集部)

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