シュワッハマン・ダイアモンド症候群のご家族が経験、医療的ケア児と希少疾患を取り巻く課題

遺伝性疾患プラス編集部

sanakiさん(女性/32歳/シュワッハマン・ダイアモンド症候群のご家族)

sanakiさん(女性/32歳/シュワッハマン・ダイアモンド症候群のご家族)

お子さんが生後10か月の頃にシュワッハマン・ダイアモンド症候群と診断。現在1歳8か月。

sanakiさんご自身は会社員として育休を取得中。

就園のハードルの高さ、同じ疾患を持つ方とつながることの難しさを感じている。(写真はイメージ)

 

※疾患に関わる情報発信はしていませんが、当事者・ご家族の方からのご連絡は受け付けています。

Twitter:https://twitter.com/sanaki86054404/

膵臓、血液細胞を作る骨髄、骨などを中心に、さまざまな症状が現れる遺伝性疾患シュワッハマン・ダイアモンド症候群。特徴の一つとして、膵臓の異常による吸収障害があります。重症度は患者さんによってさまざまですが、多くの場合は、栄養失調により体重がなかなか増加しません。また、脂肪が多く悪臭のある便(脂肪便)も特徴として挙げられます。その他、骨髄にも異常が生じる可能性があります。骨髄の機能不全に関連する重篤な合併症として、骨髄細胞のがん(骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病)が引き起こされる場合があります。なお、小児慢性特定疾病の対象であり、原発性免疫不全症候群として指定難病対象疾病に含まれる場合があります。

今回お話を伺ったのは、シュワッハマン・ダイアモンド症候群のお子さんと向き合うsanakiさんです。出生後すぐ、手足の合指症(隣り合った指の一部、または全部がくっついている状態)がわかりました。一方、一般的に合指症に多いとされる合併症が見られなかったことから「後々手術は必要ですが、日常生活に特段の支障はないです」と説明を受けていたとのこと。その後、1か月健診で「体重の増加不良」を指摘されたことをきっかけに、ミルクアレルギーの疑いから総合病院での入院治療を受けることに。希少疾患であることなどから、なかなか診断のつかない原因不明の時期を過ごし、大学病院へ転院。育児日記などを用いた工夫により、医師とのコミュニケーションを円滑に進めながら、ようやく確定診断に至ったそうです。

診断後は医療的ケアを理由に、お子さんの就園活動が難航。同じ疾患の方やご家族の経験を聞きたいと思うものの、患者数が少ない希少疾患であることから、実際につながることが難しいと感じられています。今回のインタビューも、「当事者・ご家族とつながる機会が増えれば」と考え、受けてくださいました。今回は、sanakiさんのお子さんが確定診断に至るまで、そして、診断後の生活について詳しくお話を伺いました。

ミルクアレルギー疑いから大学病院へ転院、育児日記・写真の症状記録で医師とコミュニケーション 

最初、どのような症状をきっかけに受診されましたか?

最初は、子どもの便回数が多いことが気になり、医師に相談しました。当初は、医師から「乳児は、個人差が大きいですから」と説明を受け、医師も特に重要視していない様子だったように感じます。私自身も、第一子だったことから「そういうものなのかな?」と考えるしかありませんでした。

その後、生後1か月健診で「体重の増加不良」を指摘されたんです。当時、ほぼミルクで育てており、出生時から呼吸がやや浅く、全身に湿疹が出ていました。これらの状況から「ミルクアレルギー」が疑われ、健診翌日から入院治療を受けることとなりました。この時入院したのは、出産でお世話になっていた総合病院の小児科です。アレルギー対応ミルクに変更し、数日様子を見て退院。しかし、数日後、再度全身に湿疹が現れて緊急入院となりました。引き続き、呼吸は浅かったのですが、「酸素濃度は正常に保たれている」と説明を受け、経過観察となりました。血液検査なども受け、医師からは「アレルギー対応ミルクでもまれに生じるアレルギーでしょう」と説明を受けました。ミルクアレルギーの中でも、乳成分にも反応が出るものと判断され、点滴と成分栄養剤による対応期間を経て、大豆ミルクへ移行しました。ミルクの切り替えは毎回、数週間の入院で行いました。しかし、大豆ミルクへ移行後も再び湿疹が出たり、便の色がやや白みがかっていたり、といった症状が現れました。気になり主治医に報告しましたが、その時は「恐らく、アトピーでしょう」とのことで、そのまま治療を継続。しかし、大豆ミルクを必要量飲んでもいっこうに体重が増えません。原因不明のまま、生後5か月の頃に総合病院から大学病院へ転院となりました。

大学病院への転院後、医師にお子さんの状況を伝えるために工夫されたことはありますか?

大学病院へ転院してすぐ、主治医に育児日記と、記録していた湿疹状態・便の写真を見ていただきました。育児日記は、市販のものに手書きで記録していました。スマートフォンのアプリなどを試したこともあったのですが、自分は手書きの記録があっていたようです。出産した総合病院から配布された記録用紙をきっかけに育児日記が習慣になり、退院後も症状などを記録するようになりました。

写真による症状の記録を始めたのは、友人の話がきっかけです。「受診時、医師に写真を見せながら説明する」と聞き、私も記録を始めました。特に、医師への症状の説明は、写真で直接見ていただいたほうが正しく伝わるだろうと考え、気になる症状は写真として記録を残すように意識していました。結果的に、時系列で経過を確認していただけたので良かったと感じています。もちろん、アプリによる記録も、短期間の経過確認などには良いと考えています。ただ、大学病院のように複数の診療科の医師が関わる場合には、紙媒体の記録が数か月単位の長期間の記録も一度に渡しやすく、一緒に見ていただきやすいと感じました。

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「大学病院のように複数の診療科の医師が関わる場合には、紙媒体の記録が渡しやすかった」と、sanakiさん(写真はイメージ)

アレルギーでなく膵臓の機能不全、遺伝学的検査を経て診断

そこから、どのように確定診断に至ったのでしょうか?

ミルク変更後に生じる湿疹の生じ方や、便回数の多さなどから、「一般的なアレルギーとは症状が異なります」と説明を受けました。入院中に精査を進めていただく中で、脂肪便が出ていることがわかり、栄養素や脂肪をうまく吸収できていないことが判明。追加検査の結果、膵臓の機能不全の可能性が指摘され、膵臓のMRIの所見とも一致しました。同時に、遺伝学的検査も進めており、生後10か月の頃に「シュワッハマン・ダイアモンド症候群の可能性が高い」と検査結果が届きました。この結果と、それまでの所見と合わせて、確定診断を受けました。

「シュワッハマン・ダイアモンド症候群」と確定診断を受けた時、どのようなお気持ちでしたか?

さまざまな感情はありましたが、中でも「診断がついてホッとした」「やっと治療の方向性が定まる」という安心した気持ちが強かったです。というのも、確定診断を受ける頃には、ミルクではなく成分栄養剤主体の治療方針が示されていたからです。我が子の体重も少しずつ増加しており、小柄ながらも頑張って成長してくれている実感がありました。

また、病名が確定したことにより、骨髄にも異常が生じる可能性がわかり、骨髄検査を受けました。我が子の場合は今のところ検査結果は良好で、骨髄細胞のがんの発症には至っていません。一方、最大の心配ごとではあるので、定期的な検査を受けて経過を見ることになっています。

診断を受けた時、ご家族とはどのようなお話をしましたか?

主に、夫とは確定診断に至る過程でも、さまざまな話をしてきました。何よりも、ここまで頑張って生きてくれた我が子に対して、「感謝だね」と話したことを覚えています。栄養の吸収が難しい中で、「ここまで頑張ってくれて、えらいね」といったことを話しました。

医療的ケア児のハードルの高さを痛感、周囲で「仕事を辞めた」ケースも

診断を受けた後の生活で、印象的だったご経験はありますか?

子どもの就園活動について、ハードルの高さを感じました。医療的ケアへの対応をお願いしなければならないため、退院後すぐ、診断が確定する前の生後8か月頃から役所へ相談を始めたのですが、すぐに入園が決まらなかったんです。我が子の医療的ケアの状況は、必要量の食事が取れるようになるまでの対応予定ですが、経鼻経管栄養で栄養を摂取することとなり、現在は胃管をつけて生活しています。一方で、体調的にも保育園への入園は可能な状態です。2021年に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(以下、医療的ケア児支援法)」が施行され、保育所側は「医療的ケア児に対し、適切な支援を行う責務を有する」とされています。それに伴い、自治体側のガイドラインは一応あると伺いました。ただ、実際には、自分の地域の認可保育園で「医療的ケア児の受け入れ実績はほぼない」とのことで、自宅近くの園では、見学さえ、なかなか進まない状況が続きました。その後、我が子が1歳半頃にようやく、自宅から少し離れた園を見学できました。これは、知人からの情報のおかげです。現在は、我が子が2歳になるのを目処にその園へ入園する方向で話を進めている段階です。

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「診断前から役所へ相談を始めたが、すぐに入園が決まらなかった」と、sanakiさん(写真はイメージ)
医療的ケアがある状況により、結果、1年以上就園活動の時間が必要だったんですね。

そうなんです。他の医療的ケア児の保護者のお話も伺ったところ、私たちの住む地域では特に、医療的ケア児の就園のハードルが高いように感じます。もしかすると、地域による差があるのかもしれません。我が子より年齢が上の医療的ケア児の保護者から、就園がうまくいかないことなどを理由に「仕事を辞めた」と伺うことも多くありました。医療的ケア児支援法の施行により、自治体側でも、以前に比べると就園先を探そうという動きはあるのだと思います。しかし、現実は厳しいものだと痛感しました。

今後、希少疾患の早期診断の体制が整うことに期待

sanakiさんご自身のお仕事は、現在どのような状況ですか?

会社員として、育児休業(以下、育休)中です。職場に、我が子の状況とともに育休の延長のお願いをした経緯があります。その際、ありがたいことに上司や同僚から「仕事のことは気にせずに、お子さんの治療に専念して。大丈夫」と言っていただきました。当初は復帰出来るかわからない状況だったので、正直、「退職しないといけないかもしれない」と考えた時期もあります。また、保育所に入所できない場合は2歳まで育休を延長できることから、自分の場合は育休を2年間取得できました。その間に、我が子の状態も落ちつき、社会的なサポート環境も整えることができたので、非常にありがたく感じています。

ご自身の経験から、希少疾患を取り巻く課題にはどのような支援が必要だと感じられましたか?

今はまだ子どもが小さいので、今後、どのような課題に直面するかはわからないというのが正直な感想です。一方で、早期に確定診断を受けられる仕組みが、今後、どの希少疾患でも、どの地域でも整っていくようになればと考えます。例えば、私の住む自治体では、我が子が産まれた翌年の4月から、拡大新生児スクリーニング(任意・検査費用は有料)でより多くの先天性疾患の検査を受けられる体制が整いました。大前提として、共に治療に携わってくれている主治医や、医療従事者の方々には感謝しかありません。ただ、もし我が子が早期に確定診断を受けることが出来ていれば、入院・検査期間を短縮できていたのではないか、とも感じています。早期に正しく診断・治療を受けることで、もっと早くから体重を増やすこともできたかもしれません。我が子の症例のように、現段階では骨髄の異常が見られず、膵臓の機能不全が主症状の場合もあります。ですので、疾患の認知とあわせて早期に確定診断を受けられる仕組みが、どの希少疾患でも整っていって欲しいと感じています。

シュワッハマン・ダイアモンド症候群の当事者・ご家族から、日々の楽しい話も聞いてみたい

診断を受けた当時、「知りたかったけどわからなかった情報」はありましたか?

シュワッハマン・ダイアモンド症候群の当事者の「成長の経過」が知りたいと思い、それは今でも変わりません。診断を受けた段階で、主治医から治療方針とあわせて、「今後の経過は個人差が大きく、わかっていないことも多い」と説明を受けました。私自身、可能な限り、国内の論文も含めて情報を探しましたが、わからないことが多く、成長に関わる情報はよくわかっていません。

主治医に相談したところ、私の住む地域では現在、同じ疾患で治療を受けている方はいらっしゃらないそうです。当事者や家族会の活動も見つけられません。SNSでも情報を探しましたが、情報を得るのは難しい状況です。お一人、SNSで当事者のご家族とつながることができました。ただ、すでに成人されているとのことで、我が子とは年代も大きく違います。やはり、我が子と年代の近い方ともつながり、お話を伺いたいと感じています。これは希少疾患ならではの悩みなのかもしれませんが、当事者・ご家族とつながることの難しさを感じています。

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「我が子と年代の近い方ともつながり、お話を伺いたい」と、sanakiさん(写真はイメージ)
同じシュワッハマン・ダイアモンド症候群と向き合う当事者やご家族に、メッセージをお願いいたします。

疾患とともに生きる上で、治療に関しては主治医や医療従事者に相談することができます。一方で、実際の生活における悩みをともに相談しあえる仲間がいると、さらに心強いのではないかと感じています。例えば、自分が苦労した就園のことも、その一つの例だと思います。今後も、疾患に関連して悩むことがあると思います。きっと同じような経験をされている場合が多いと思いますので、その話を伺ったり、逆に我が子がもう少し大きくなった時に「当時は〇〇でしたよ」とお伝えできたり、といったことができるようになりたいです。また、当事者ご本人やご家族から、日々のうれしいことや楽しいことも聞きたいですし、「こんな大変なこともあったけど、こんな風に工夫して乗り越えたよ」というお話を一緒に出来たらうれしいです。

最後に、遺伝性疾患プラスの読者にメッセージをお願いいたします。

我が家の場合は、子どもがまだ小さいこともあり、この先のことは未知数です。子どもが成長するにつれて、いろいろな葛藤を抱えたり、壁にぶつかったりする機会も出てくると思います。そういった時、親として我が子にどのように話し、行動で示せばいいのだろうか?と今から考えることもあります。それでも、まずは我が子なりの「楽しい」を見つけて育って欲しいです。そして、我が子自身で人生を選択していけるように、症状が落ちついていくことを願いながら、一緒に過ごしていきたいです。疾患は違ったとしても、さまざまな疾患と歩む皆さんの姿から、我が子も私たち親も学ぶことが多いです。ぜひ今後も、たくさんの経験を教えていただけたらうれしいです。


今回、ご自身が経験された、医療的ケア児や希少疾患の当事者を取り巻くさまざまな課題をお話ししてくださった、sanakiさん。今後、少しずつでも当事者やご家族の環境が整っていくことが期待されます。また、今回のインタビューにご協力くださった理由の一つが、「同じ疾患の方とつながる機会を増やしたい」という思いです。sanakiさんのX(旧:Twitter)アカウントは、シュワッハマン・ダイアモンド症候群の情報発信専用ではないものの、「当事者やご家族の方から個別に連絡いただけたら嬉しいです」とのこと。同じ疾患に関わらず、お子さんの就園における経験など、もしお話ししてみたいと思った方がいらっしゃったら、ぜひご連絡してみてください。(遺伝性疾患プラス編集部)

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