レット症候群と生きるご家族~「娘をオシャレで楽しませたい!」を叶えました~

遺伝性疾患プラス編集部

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遺伝性疾患プラスはサイトオープン2周年を記念し、グループ会社であるエムスリー株式会社が展開する『CaNoW(カナウ)』と共に、3名の患者さん・ご家族の願いを無償で叶えるイベントを開催しています。2022年のテーマは、「願いを叶え、疾患啓発につなげる」。今回ご紹介するのは、レット症候群と谷岡哲次さんご家族です。

※CaNoW(カナウ)は『病や障がいと共にある方』の願いを叶えるプロジェクトです。

乳幼児期に発達障害といった症状が現れるレット症候群X連鎖優性(顕性)遺伝と呼ばれる形式をとる遺伝性疾患のため、患者さんのほとんどは女性です。発症頻度は10万人の女児に8~9人程度と報告されており、国の指定難病、および、小児慢性特定疾病の対象疾患です。

谷岡さんのお子さん・紗帆さんは、2歳の頃にレット症候群と診断されました。紗帆さんに症状が現れ始めたのは、生後10か月を過ぎた頃。谷岡さんは、さまざまな情報を集める中で「レット症候群なのでは?」と感じていたそうですが、なかなか確定診断に至らない日々を過ごしました。紗帆さんがレット症候群と確定診断されたことを受け、2011年にレット症候群支援機構を設立。現在、同機構は認定NPO法人レット症候群支援機構として、治療法確立に向けた研究支援やレット症候群の疾患啓発活動などを行っています。

今回は、毎年10月に行われるレット症候群啓発月間にあわせて、「娘をオシャレで楽しませたい!」という願いをお寄せいただきました。紗帆さんだけでなく、レット症候群支援機構で一緒に活動されているお子さんたちも含めてオシャレを楽しんでいただき、皆さんの写真を撮影しました。

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谷岡さんご家族

みんなでかわいいプリセンスに変身!オシャレをいっぱい楽しんで

今回は、谷岡さんご家族と認定NPO法人レット症候群支援機構で一緒に活動をしている3家族、合わせて4家族の写真撮影となりました。撮影に向けて、ヘアメークアーティストが、ヘアスタイルとメークを仕上げる準備を開始。初めての場所・人に、最初は緊張気味だったお子さんたちでしたが、少しずつ笑顔が見え始めました。

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最初は緊張気味だったお子さんも、少しずつ笑顔に。

徐々にかわいくオシャレに変身していくご自身の姿を見て、自然と笑顔になるお子さんもいました。

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かわいくオシャレに変身中のお子さん。

毎年10月は、世界的にレット症候群の啓発月間です。そこで今回の撮影では、レット症候群の啓発カラーである紫色をテーマに、お花をモチーフとした特別なセットを用意しました。また、お子さんたちには同じく啓発カラーの紫色をテーマにしたドレスを着ていただき、かわいくオシャレに変身していただきました。

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お揃いのドレスを着て、お花と一緒にみんなで写真撮影

撮影会場からは「かわいい!」という声があふれ、プリンセスのようなかわいい皆さんの姿を写真に収めることができました。

遺伝性疾患啓発Tシャツでの撮影も。ご家族の笑顔があふれる

その後、遺伝性疾患プラス編集部から「遺伝性疾患啓発Tシャツ」を皆さんへプレゼントしました。「遺伝性疾患啓発Tシャツ」は、2周年イベントを記念し、遺伝性疾患に関わる皆さまから募集したエピソードをもとにつくったTシャツです。遺伝性疾患プラス編集長・二瓶さんから、紗帆さんたちへ手渡しさせていただきました。

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編集長・二瓶さんと紗帆さん

ドレスに続いて、ご家族で「遺伝性疾患啓発Tシャツ」に着替えていただき、写真撮影は続きました。

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今回、「オンラインではお会いしていたけど、実際にお会いするのは初めて」というご家族もいらっしゃったそうです。撮影を通じて徐々に皆さんの緊張もほぐれていき、ご家族同士で楽しくお話しされる場面もありました。これからも、レット症候群支援機構での活動を通じて、チームとしての皆さんのつながりは続いていきます。

谷岡哲次さんとレット症候群

ここからは、レット症候群と向き合って来た谷岡さんに、これまでのご経験や今回のイベント参加への思いについて、お話を伺いました。

紗帆さんの赤ちゃんの頃の様子と、今現れている症状について教えてください。

生後半年くらいまで、特に目立った症状は見られませんでした。他の子と同じようにずりばい、はいはいをしたり、手を使っておもちゃで遊んだりなどしていた様子を覚えています。その後少しずつ、ずりばいができなくなったり、お座りをしていても自然と倒れることが増えたりなど、「少しずつ」できないことが増えているような印象を受けました。

当時、さまざまな病気の情報を調べる中で「レット症候群なのでは?」と思い始めたのですが、実際にレット症候群と診断が確定するまでは長い時間を要しました。紗帆がレット症候群と診断を受けたのは、2歳の頃でした。紗帆は、レット症候群の中でも重度なグループに分類されるそうで、14歳となった現在はほぼ寝たきりの状態です。一人で座ることができないので、支えてやっと座れる状態です。言葉は、まだ発したことはありません。食事も、以前はやわらかい固形に近いものも食べていましたが、今は流動食に近いものを食べています。食べ物を戻す時もあるので、食事の時も常にそばで見ておかないといけないですね。基本的に24時間、紗帆からは目が離せません。

そんな中で、笑顔を見せてくれたときは、本当にありがたいと感じています。これからも紗帆の一日一日を大切に、一緒に過ごしていけたらと思います。

今回願いを応募した理由について、教えてください。

レット症候群は、患者さんのほとんどが「女の子」という特徴があります。この特徴をいかして、「写真撮影を通じて、疾患啓発につなげられたら」と思ったことがきっかけでした。紗帆はもちろん、レット症候群支援機構で一緒に活動をしている友だちとともに写真を撮影できたらと考えたんです。最近はオンラインでの活動が中心で、紗帆も友だちと直接会う機会がほとんどなかったので。久しぶりに友だちと会う機会としても、みんなに楽しんでもらえたらと考えました。

また、レット症候群のお子さんたちは、みんな表情が豊かで本当にかわいいんです。直接話すことはできないですが、紗帆も楽しい時はにこにこしたり、悲しい時は涙をぽろぽろ流したり、また、好きなお風呂の時間は幸せそうな顔をしてくれたりして、思いを伝えてくれます。そういった表情を見ていると、紗帆が一日一日を精いっぱい生きていることが伝わってきます。かわいくオシャレをして、その時の表情に写真に収めることで、紗帆の中に思い出がまた一つ残ってくれたらうれしいなと考えました。

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豊かな表情から「一日一日を精いっぱい生きていることが伝わってきます」と、谷岡さん。

レット症候群のご家族とのつながり、仲間のありがたみを実感

当日、紗帆さんの様子をご覧になっていかがでしたか?

移動の影響もあり少し疲れている様子でしたが、普段なかなかできない髪型やメークをプロの方にやっていただき、楽しんでいたように感じます。私たち家族も、「紗帆は、こういう髪型も似合うんだね」と新しい気付きがあり、新鮮な気持ちでした。他のご家族も、皆さん「かわいいね」と喜ばれていました。

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谷岡さんご家族

また、久しぶりに友だちと会った時、紗帆はニコっとした表情でした。話すことはできないかもしれないですが、友だちと互いに心が通じ合っているのかなと感じまたね。対面で会うのは久しぶりだったので、きっと紗帆も喜んでいたのではないかと思います。同じレット症候群のお子さんたちは、学校の友だちとはまた違う、特別な仲間のような存在なのかもしれません。

願いを実現する前と今とで、お気持ちの変化はありましたか?

同じレット症候群のご家族と集まったことで、改めて「僕たちはチームなんだ」と実感しました。久しぶりにお会いした方も、オンラインではお会いしていたけれど初めてお会いできた方も、実際にお会いして話せたことがうれしかったです。僕自身、改めて仲間のありがたみを感じました。今回のイベントを通じて、みんなで一緒に疾患啓発活動をできて本当に良かったと思います。

僕たちが大切にしている言葉に、「Care today! Cure tomorrow!」という言葉があります。「Care today!」は「今日は精一杯のケア(療育や介護)を!」、「Cure tomorrow!」は「明日(未来)はキュア(完治)を目指しましょう!」という意味です。今は根治療法がないレット症候群ですが、完治を目指してさまざまな研究が進められています。だから、僕たちはこれからも研究を進めている研究者の皆さんを支援していきますし、仲間と一緒にレット症候群の完治を目指して活動していきます。

「レット症候群」まずは名前を知ることから

レット症候群について、社会に「知って欲しい」ことはありますか?

レット症候群という難病があることを知っていただきたいです。今回の写真をきっかけに、ぜひレット症候群という名前だけでも知っていただけたらうれしいですね。もし、少しでもレット症候群に興味を持っていただけたら、そこから何か一つアクションをしてもらえたらさらにうれしいです。インターネットで「レット症候群」と検索してみたり、周りの方に「レット症候群という難病があるらしいよ」と話してみたりなど、小さなアクションでかまいません。一人ひとりのアクションをきっかけに、レット症候群への理解が日本中に広がってほしいと願っています。

2011年にレット症候群支援機構を立ち上げて、10年以上の月日が経ちました(レット症候群支援機構の活動の詳細はコチラの記事をご覧ください)。この活動を通じて、少しずつレット症候群を知ってくださる方々が増えてきたと感じる一方で、まだまだ、疾患の認知度には課題があるとも感じています。私たちは、これからもレット症候群を皆さんに知っていただくために活動を続けていきます。

最後に、遺伝性疾患プラスの読者にメッセージをお願いいたします。

ご自身やお子さんが遺伝性疾患であるという事実に、皆さん、きっとさまざまな思いをお持ちではないでしょうか。だけど私は、その事実以上に「人間の心には、科学では説明できないような力があるのではないか」と感じています。レット症候群の子どもたちの笑顔を見ていると、そう感じるのです。

紗帆は、言葉を使って話すことはできません。でも、かわいい笑顔でいつも僕たちに語りかけてくれます。その姿に、僕たちは何度も元気をもらってきました。ですから、これからも紗帆には毎日をできるだけ笑顔で過ごしてもらえたらうれしいです。これからもレット症候群の根治療法を確立するため、また、疾患のことを多くの方々に知っていただくため、僕たちは活動を続けていきます。


コロナ禍の影響もあり、直接お会いするのは「初めて」「久しぶり」だったという、それぞれのご家族。皆さんが楽しそうにお話しされている様子から、谷岡さんもおっしゃっていたように「チーム」であることが伝わってきました。皆さんのとびきりの笑顔を写真に収めることができて、遺伝性疾患プラス編集部とCaNoWチーム一同、本当にうれしく思っています。

毎年10月は、レット症候群の啓発月間。今年は、お子さんたちのかわいくオシャレな写真とともに、遺伝性疾患プラスもレット症候群について発信していきます。もし、「レット症候群という名前、初めて聞いた」という方がいらっしゃったら、以下の関連リンクにある記事を読むことから始めてみませんか?(遺伝性疾患プラス編集部)

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