拡大新生児スクリーニング調査①「一般の方、患者さんとご家族、医療関係者の認知度の違い」

遺伝性疾患プラス編集部

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「拡大新生児スクリーニング」地域によって導入状況に差、認知度の課題も

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日本で生まれた赤ちゃん(以下、新生児)は、基本的に全員「新生児マススクリーニング」を受けます。これは、生まれてすぐに治療を始めることで、発症を防ぐことができる病気を見つける検査です。具体的には、新生児のかかとから少量の血液を採取し、20種類の病気の有無について確認します。一方、早期治療で発症を防ぐことができる病気は、新生児マススクリーニングで調べる20種類の他にも複数あります。そうした病気を、同じく生まれてすぐのタイミングで調べる検査が「拡大新生児スクリーニング」です。例えば、一般社団法人希少疾患の医療と研究を推進する会(CReARID、クレアリッド)では、「ムコ多糖症I型」「ムコ多糖症II型」「ムコ多糖症IVA型」「ムコ多糖症VI型」「ポンペ病」「ファブリー病(男児のみ対象)」「重症複合性免疫不全症(SCID)」「副腎白質ジストロフィー(男児のみ対象)」「脊髄性筋萎縮症(SMA)」を対象に拡大新生児スクリーニングを行っています。

「新生児マススクリーニング」は日本で生まれた全ての新生児を対象に提供されている一方、「拡大新生児スクリーニング」は任意で希望した人だけが受ける検査です。また、公費負担(無償)で受けられる「新生児マススクリーニング」と異なり、「拡大新生児スクリーニング」は基本的に検査費用がかり、その費用は病院や地域によってさまざまであるだけでなく、「拡大新生児スクリーニング」が導入されていない自治体もあります(例として2024年1月31日現在の脊髄性筋萎縮症における拡大新生児スクリーニングのデータについて、コチラの記事をご参照ください)。さらに、1977年から行われ始めた「新生児マススクリーニング」と比べて、数年前から徐々に開始されてきている「拡大新生児スクリーニング」はまだ認知度も高くないという課題もあるとされています。

一般生活者/遺伝性疾患の当事者・ご家族/医療従事者へ調査

遺伝性疾患プラスでは、専門医の先生方や当事者・ご家族のお話を伺う中で、「拡大新生児スクリーニング」の啓発活動の必要性を痛感してきました。そこで今回、一般生活者/遺伝性疾患の当事者・ご家族/医療従事者を対象に調査を実施しました。ご回答いただきました皆さま、ありがとうございました。

今回の調査の目的は、それぞれの立場による「拡大新生児スクリーニングの認知度」、そして「拡大新生児スクリーニングを受けたい/受けないと考える理由」の違いを明らかにすることです。調査結果をもとに、「拡大新生児スクリーニング」を多くの方々に知っていただくための活動を行っていきたいと考えています。今回の記事では、「拡大新生児スクリーニングの認知度」の結果を中心にご紹介します。

「新生児マススクリーニング」「拡大新生児スクリーニング」について、どの程度知っていますか?

今回の調査では、「以下の検査について、あなたがどの程度知っているかを教えてください」という設問で、「新生児マススクリーニング」と「拡大新生児スクリーニング」に関わる6つの内容について「どのようなものかよく理解している」「どのようなものか多少理解している」「今回初めて知った」のいずれかで回答していただきました。

  • 新生児は、生まれて数日後に「かかと」から採血され病気の有無を検査される
  • 「新生児マススクリーニング」と「拡大新生児スクリーニング」は、どちらも早期治療で発症を防ぐことができる病気を調べる検査である
  • 「拡大新生児スクリーニング」は、「新生児マススクリーニング」に含まれない病気を調べることができる
  • 「新生児マススクリーニング」は、日本で生まれた全ての新生児を対象に公費負担(無償)で提供されている検査である
  • 「拡大新生児スクリーニング」は任意で、希望した人だけが受ける検査である
  • 「拡大新生児スクリーニング」は基本的に検査費用がかかり、病院や地域によって費用が異なる

一般生活者の半数以上が、新生児に行われる検査についてあまり認知していない

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まず、一般生活者では、「新生児は、生まれて数日後に『かかと』から採血され病気の有無を検査される」について、「どのようなものかよく理解している」34人(18.1%)、「どのようなものか多少理解している」65人(34.6%)、「今回初めて知った」と回答した人は89人(47.3%)となり、新生児マススクリーニングなどの名称だけでなく、新生児がかかとの採血で検査を受けていることを認識していない人が半数近くいることが示唆されました。それ以外の設問についても、6割以上の方が「今回初めて知った」と回答。日本で生まれた全ての新生児を対象に公費負担(無償)で提供されている「新生児マススクリーニング」と比べて、任意で希望した人だけが受けられる、かつ、基本的に検査費用がかかる「拡大新生児スクリーニング」は、より啓発活動の必要があると考えられました。

遺伝性疾患の当事者・ご家族では、一般生活者より認知度が高い傾向

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続いて、遺伝性疾患の当事者・ご家族では、一般生活者の回答と比べると「今回初めて知った」と回答した方の割合が少ない結果となりました。特に、「新生児は、生まれて数日後に「かかと」から採血され病気の有無を検査される」と「『新生児マススクリーニング』と『拡大新生児スクリーニング』は、どちらも早期治療で発症を防ぐことができる病気を調べる検査である」については、「今回初めて知った」と回答した方がそれぞれ37.1%と34.4%となり、6割以上の方がこれらの試験について少しは認識しているという結果に。一般生活者と比べて、関心が高いことがうかがえました。

その一方、「拡大新生児スクリーニング」についての詳細をお聞きする設問、「『拡大新生児スクリーニング』は任意で、希望した人だけが受ける検査である」、「『拡大新生児スクリーニング』は、『新生児マススクリーニング』に含まれない病気を調べることができる」、「『拡大新生児スクリーニング』は基本的に検査費用がかり、病院や地域によって費用が異なる」といった設問では、「初めて知った」と答えた方が過半数を超えており、関心の高い遺伝性疾患の患者さんやご家族であっても「拡大新生児スクリーニング」が完全に認知されているとは言えない、ということが見えてきました。

医療従事者でも、拡大新生児スクリーニングをよく理解していると答えた人は多くない

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最後に医療従事者は、一般生活者や当事者・ご家族と比べて、それぞれの検査に対し「どのようなものかよく理解している」「どのようなものか多少理解している」と回答している方の割合が高い結果となりました。一方で、「『拡大新生児スクリーニング』は任意で、希望した人だけが受ける検査である」や「『拡大新生児スクリーニング』は基本的に検査費用がかかり、病院や地域によって費用が異なる」については、一般生活者や当事者・ご家族よりは少ないものの「今回初めて知った」と回答した方が4割以上いることが明らかになりました。「拡大新生児スクリーニング」に関しては、医療従事者に対しても詳細な情報提供が必要であると考えられます。

どれだけ情報を知っているか?が大切

日本で生まれた全ての新生児を対象に公費負担(無償)で提供されている「新生児マススクリーニング」と比べ、任意で希望した人だけが受ける、かつ、基本的に検査費用がかかる「拡大新生児スクリーニング」の場合、どれだけ情報を知っているか?が大切なポイントになると考えられます。今回の調査では、拡大新生児スクリーニングが多くの一般生活者に認知されていないことが改めて確認できただけでなく、関心があると予想される遺伝性疾患の当事者やご家族や専門家でも、認知度がそれほど高いわけではないことがわかりました。このことは、この検査について、より一層多くの人に周知していくことの重要性を示していると考えられました。次回は、「拡大新生児スクリーニング」を受けたい・受けたくないと考える理由などについての結果をご紹介します。(遺伝性疾患プラス編集部)

調査概要

目的

「拡大新生児スクリーニングの認知度」「拡大新生児スクリーニングを受けたい/受けないと考える理由」の把握

対象

一般生活者/遺伝性疾患の当事者・ご家族/医療従事者

方法

インターネット調査

期間

一般生活者(2024年9月10日~9月24日)遺伝性疾患の当事者・ご家族(2024年9月5日~9月24日)医療従事者(2024年9月4日~9月18日)

実施者

株式会社QLife 遺伝性疾患プラス編集部

回答数

一般生活者(192(有効回答188))遺伝性疾患の当事者・ご家族(151)医療従事者(844)

【回答者の背景】

一般生活者

性別 全部で192人、内訳は男性63人(32.8%)、女性128人(66.7%)、その他1人(0.5%)

年代

30代50人(26.0%)、40代76人(39.6%)、50代66人(34.4%)だった。

居住地

上位は大阪府22人、東京都14人、京都府12人、愛知県11人、神奈川県11人

遺伝性疾患の当事者・ご家族

性別

全部で151人、内訳は男性22人(14.6%)、女性127人(84.1%)、その他2人(1.3%)

年代

10代以下2人(1.3%)、20代12人(7.9%)、30代38人(25.2%)、40代50人(33.1%)、50代29人(19.2%)、60代18人(11.9%)、70代2人(1.3%)だった。

居住地

上位は東京都33人、神奈川県16人、大阪府11人、千葉県10人、埼玉県9人

立場

当事者75人(49.7%)、家族76人(50.3%)

医療従事者

性別

全部で844人、内訳は男性502人(59.5%)、女性342人(40.5%)

年代

20代以下55人(6.5%)、30代129人(15.3%)、40代174人(20.6%)、50代221人(26.2%)、60代193人(22.9%)、70代66人(7.8%)、80代以上6人(0.7%)だった。

居住地

上位は東京都127人、大阪府68人、愛知県56人、神奈川県53人、兵庫県51人

職種

医師410人(48.6%)、薬剤師220人(26.1%)、看護師106人(12.6%)、歯科医師42人(5.0%)、理学療法士10人(1.2%)、作業療法士2人(0.2%)、その他医療従事者26人(3.1%)、学生28人(3.3%)

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