神経線維腫症I型・叢状神経線維腫で国内初の治療薬発売、専門医が講演

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 外見の変化や痛み、運動機能障害などを引き起こす叢状神経線維腫
  2. 「手術困難」「障害あり」の叢状神経線維腫への治療薬
  3. 今後、NF1診療での多科連携にも期待

NF1患者さんの30~50%が発症の叢状神経線維腫

アレクシオンファーマ合同会社は11月16日、コセルゴ(R)カプセル 10mg/25mg(一般名:セルメチニブ硫酸塩)を発売しました。コセルゴは、神経線維腫症I型(レックリングハウゼン病、以下、NF1)の叢状神経線維腫(そうじょうしんけいせんいしゅ)を対象とした、国内初の経口治療薬です。発売に伴い、同社は12月8日に記者発表会を実施。同会で、名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション科教授の西田佳弘先生らによる講演が行われました。

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名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション科教授 西田佳弘先生

NF1は、皮膚にカフェ・オ・レ斑というミルクコーヒー色の色素斑や、神経線維腫という腫瘍などの症状が現れる遺伝性疾患です。今回コセルゴの適応となった「叢状神経線維腫」は、神経線維腫の中でも神経鞘(神経を覆う膜)にできる腫瘍です。皮膚や皮下の浅いところにある神経線維腫よりも、体の内側に生じます。NF1患者さんの30~50%が発症するとされています。

叢状神経線維腫は、外見の変化や痛みを引き起こし、また、運動機能障害、気道障害、視力障害、膀胱・腸の機能障害などを引き起こすことがあります。これらは、細胞増殖に関わる特定の酵素が過剰に活性化され、腫瘍細胞の増殖を制御できなくなることで起こります。コセルゴは、この細胞増殖に関わる酵素の1つ「分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MEK1、MEK2)」を阻害して、腫瘍細胞の増殖を抑制する薬です。

「手術困難」「障害あり」の叢状神経線維腫へ、新たな治療選択肢

西田先生は、講演の中で、叢状神経線維腫の診療で重要なポイントの一つとして「悪性化」を挙げました。NF1患者さんでは、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)という悪性腫瘍(がん)の発症リスクがあるとされています。「叢状神経線維腫が悪性化することが多い」と、西田先生。定期的な診療を受けることで、MPNSTになる前の段階で発見し、早期に治療を受けることが大切です。

叢状神経線維腫に対しては、手術を中心とした治療が検討されます。しかし、腫瘍の状況によっては手術が困難な場合もあります。コセルゴは、こういった手術が困難で、かつ、障害が生じている症例に対する新しい治療選択肢です。西田先生は、コセルゴの治療により、患者さんのQOLが改善されることに期待を寄せられました。

名大病院、院内NF1診療ネットワークでの多科連携

全身にさまざまな症状が生じ、悪性腫瘍の可能性もあるNF1。一つの診療科だけではなく、さまざまな診療科による連携が求められています。名古屋大学医学部附属病院では、日本初の多科多職種によるNF1院内診療ネットワークを開始。2014年から6年の成果を公表しています(詳細は、コチラの記事をご覧ください)。

西田先生の講演の中でも、院内NF1診療ネットワークの取り組みの一部が紹介されました。眼科、皮膚科、脳外科、小児科、整形外科などの診療科、専任の認定遺伝カウンセラー、チャイルド・ライフ・スペシャリスト、ソーシャルワーカーなどが連携。症候に応じて、さらに他の診療科とも連携しています。

NF1患者さんでは、特定の診療科のみで診療を受けていたり、どこの診療科を受診するか迷う場合があったりするなどの状況があると言います。院内NF1診療ネットワークの取り組みの良かった点として、西田先生は「各診療科で診てもらえるようになり、患者さんご本人の安心感が増したこと」を挙げられました。また、医療従事者側としても「新たな疾患を早期に見つけられる場合がある」とし、院内NF1診療ネットワークのメリットについて改めて紹介されました。

コセルゴによる治療が検討されるのは、叢状神経線維腫の中でも「障害あり」「手術不能」な場合です。検討の際に「障害があるか、近い将来に障害が出るか」「手術可能か」「悪性化の可能性があるか」の評価が必要になり、ここでもさまざまな診療科による連携が求められるのだそうです。今後、NF1診療におけるさまざまな診療科の連携が進むことに期待を寄せられました。(遺伝性疾患プラス編集部)

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