進行性の視覚障害を伴う遺伝性網膜疾患の総称「遺伝性網膜ジストロフィー」
ノバルティス ファーマ株式会社は、遺伝子治療用ベクター「ルクスターナ(R)注」(一般名:ボレチゲン ネパルボベク)について、両アレル性RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィーを対象に発売したことを発表しました。
遺伝性網膜ジストロフィーは、進行性の視覚障害を伴う遺伝性網膜疾患の総称です。これまで、原因となる遺伝子は260以上が同定されています。そのうち、今回発売されたルクスターナによる治療の対象となるのは、RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィーです。例えば、遺伝性網膜ジストロフィーの1つである網膜色素変性症は、一般的に10歳前後で発症し、夜盲や視野狭窄といった症状が現れ、進行とともに視力が低下します。
これまで治療法がなかった遺伝性網膜ジストロフィー、視機能改善に期待
ルクスターナは、それぞれの眼につき、網膜下へ1回の注射で治療が完了するとされる遺伝子補充療法。治療の対象となるのは、「両アレル性RPE65遺伝子変異(2つ持つRPE65遺伝子の両方に変異がある)と診断されている」「視覚障害が生じている」「検査により十分な生存網膜細胞がある」と確認された成人・小児の患者さんです。
ルクスターナは、遺伝子の運び屋アデノ随伴ウイルス2型(AAV2)により、正常なRPE65遺伝子を運び、正常なヒトRPE65タンパク質を長期間安定して発現させます。これにより、視覚障害が生じている視機能の改善が期待されます。米国およびEUで、それぞれ2017年12月および2018年11月に承認。日本では、2023年6月26日に製造販売承認を取得していました。
同社のレオ・リー代表取締役社長は、「対象となる患者さんは非常に希少ですが、日本における眼科疾患で初めての画期的な遺伝子補充療法「ルクスターナ」を提供できることを大変嬉しく思います。これまで治療法がなかったため、暗がりでの活動が制限されたり、視野が狭く、失明の不安を抱えながら生活している患者さんおよびそのご家族の人生を変えられる可能性があります」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)