ポンペ病、新規治療薬の開発につながる化合物の創製に成功

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ポンペ病はライソゾームで働く酵素の一種が欠損する
  2. マメ科植物に含まれる「DAB」と呼ばれる化合物に着目し、ポンペ病治療薬への応用を検討
  3. DABにさまざまな化学変化を起こして検討し、酵素活性を向上させる化合物を発見

継続的に高濃度の酵素を点滴し続ける必要がある病気

富山大学を中心とした研究グループは、ライソゾーム病の一種であるポンペ病の治療薬開発に有望な化合物の創製に成功したと報告しました。

ライソゾーム病とは、細胞内小器官のひとつであるライソゾームで働くたくさんの種類の酵素の中のどれかに異常が生じることで、不要物が分解されずにライソゾームに蓄積するためにさまざまな症状が現れる病気です。ライソゾーム病の一種であるポンペ病はライソゾーム酸性α-グルコシダーゼと呼ばれる糖加水分解酵素が欠損することで、細胞内のグリコーゲンが異常に蓄積してしまう病気です。

現在、ポンペ病の治療法は、欠損した酵素を外部から補充する酵素補充療法が行われていますが、2週間に1回酵素製剤を点滴で静脈注射し続ける必要があります。この治療は一生続くため治療費も高額で患者さんの負担が大きい点や、継続的に高濃度の酵素を点滴するため、徐々に効果が失われてしまう点が問題となっていました。

ポンペ病の低分子医薬品として、糖の構造と似た構造を持つ化合物が有効と考えられています。これまでに、この病気に対する有効な低分子医薬品としてグルコースにとても似た構造をした1-デオキシノジリマイシン(DNJ)が見出され、その有効性について現在臨床試験が行われています。

研究グループは今回、天然に存在する糖に似た化合物の中で、マメ科植物などに含まれる1,4-ジデオキシ-1,4-イミノ-D-アラビニトール(DAB)と呼ばれる化合物に着目し、医薬品としての応用を検討しました。

酵素活性を増加させる化合物「5g」の創製に成功

DABは糖の一種であるD-フルクトースに似た構造であり、さまざまなグリコシダーゼ(糖加水分解酵素の一種)に対して阻害活性を発揮することが知られていますが、幅広く反応してしまうこと(選択性が低い)や活性の強さもそれほど高くないことから、これまで医薬品としての応用は期待されていませんでした。

研究グループはまず、DABの化学構造に着目し、DABの窒素原子上にさまざまな構造(置換基)を結合させ、その活性を調べました。その結果、DABの窒素原子上に(p-トリフルオロメチル)フェニルブチル基を導入した化合物「5g」は、ポンペ病のライソゾーム酸性α-グルコシダーゼの活性を増加させる可能性が示唆され、臨床試験中のDNJと同等の活性を持っていることがわかりました。

今回見出された化合物5gは低分子化合物で、経口投与が可能であると考えられるため、患者さんの負担軽減につながるだけでなく酵素製剤との併用により相乗的な治療効果が期待されます。研究グループは、今後はポンペ病治療薬としての有効性について臨床研究を通して検証していく、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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