小児の異染性白質ジストロフィー、造血幹細胞遺伝子治療レンメルディが米FDAで承認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 小児の早期発症型異染性白質ジストロフィー治療として、遺伝子治療が米国で初承認
  2. 異染性白質ジストロフィーはライソゾーム病の一種、運動・認知機能の低下や神経症状が現れる
  3. 1回の治療で酵素機能の正常化が期待されるレンメルディ、日本では未承認

異染性白質ジストロフィーの小児患者さん、24時間集中治療を必要とすることも

協和キリン株式会社の子会社の英国Orchard Therapeutics plcは、Lenmeldy(一般名:atidarsagene autotemcel、以下、レンメルディ)について、(早期発症型)小児の異染性白質ジストロフィーの治療法として米国食品医薬品局(FDA)から承認されたことを発表しました。

異染性白質ジストロフィーは、厚生労働省の指定難病小児慢性特定疾病の対象疾患ライソゾーム病の一種で、10万人に1人の割合で発症すると推定されています。アリルスルファターゼA(ARSA)という酵素コードする遺伝子の変異により、運動・認知機能の低下、重度の痙縮(けいしゅく)、痙攣(けいれん)などの神経症状が現れます。異染性白質ジストロフィーの小児患者さんは24時間の集中治療を必要とすることもあり、また、多くの患者さんが発症から5年以内に命を落とす可能性があることから、患者さんとその家族には大きな負担がかかるとされています。

造血幹細胞遺伝子治療レンメルディ、未治療患者さんの運動機能・認知機能を維持

レンメルディは、レンチウイルスベクターという運び屋を用いて、患者さん自身の造血幹細胞のゲノムに機能的なヒトARSA遺伝子を挿入することで、発症の原因となる遺伝的要因の修復を目指す造血幹細胞遺伝子治療です。1回の治療で酵素機能が正常化し、病気の進行を止めたり遅らせたりできる可能性があるとされています。レンメルディ治療の対象となるのは、臨床症状を伴わない乳児期遅発型、臨床症状を伴わない早期若年型、初期の臨床症状が現れた早期若年型異染性白質ジストロフィーで、いずれも早期発症型異染性白質ジストロフィーとされています。今回の承認により、レンメルディは、この3病型に対して、米国で唯一承認されている治療法となりました。なお、同治療は日本では未承認となります。

今回のFDAによる承認は、造血幹細胞遺伝子治療を一回受けた早期発症型異染性白質ジストロフィーの小児患者さん37人と、自然歴データとの比較に基づくものです。小児患者さん37人は、2つの単群非盲検試験、Expanded Access Program(代替治療薬の存在しない重篤な疾患等の治療のために人道的見地から未承認薬の提供を行う制度)のもとで治療を受けた患者さんからなります。全ての患者さんは、イタリアのOspedale San Raffaele病院でレンメルディの投与・治療後の管理を受けました。

最も早期に治療を受けた患者さん(中央値6.76年)における12年以上の追跡調査では、レンメルディ治療により全生存期間が有意に延長しました。また、ほとんどの乳児期遅発型患者さんにおいて、未治療の患者さんが重篤な運動機能・認知機能障害をきたす年齢を過ぎても、運動機能や認知機能が維持されました。早期若年型症例の一部でも、未治療症例と比較して運動機能や認知機能が維持されました。

臨床検査値以外の主な有害事象は(発現率10%以上)は、発熱性好中球減少症(85%)、口内炎(77%)、呼吸器感染症(54%)、発疹(33%)、デバイスに関連した感染症(31%)、その他のウイルス感染症(28%)、発熱(21%)、胃腸炎(21%)、肝腫大(18%)。臨床検査値の異常は、Dダイマー上昇(67%)、好中球減少(28%)、肝酵素上昇(23%)でした。(遺伝性疾患プラス編集部)

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