遺伝性疾患プラスが情報発信で心がけていること、二瓶編集長が講演
「第21回DIA日本年会2024」が10月27日(日)~29日(火)に開催され、遺伝性疾患プラスの二瓶秋子編集長が登壇の機会をいただきました。今回、二瓶編集長からは、「希少疾患におけるアンメットメディカルニーズ:ウェブメディアからのアプローチ」をテーマに講演をさせていただきました。この記事では、登壇内容を一部ご紹介しつつ、「遺伝性疾患プラスでは、どういったことを心がけて情報発信しているか?」について、改めてご紹介させていただきます。
二瓶編集長が登壇したセッションは、「デジタルが拓く新潮流!:患者中心のアンメットメディカルニーズへのアプローチ」です。解決されていない医療の課題を「アンメットメディカルニーズ」と呼びます。今回のセッションでは、研究者、患者さん、企業といったさまざまな立場からアンメットメディカルニーズについて意見を出し合いました。また、アンメットメディカルニーズの解消に向けて、今後、デジタルテクノロジーを活用しながら何ができるかを、話しあう場となりました。
当事者やご家族のお困りごとを踏まえて情報発信
日々、遺伝性疾患プラスには当事者やご家族からの声が届いており、その多くが希少疾患におけるアンメットメディカルニーズに関わる内容です。例えば、「専門医のいる病院が知りたい」「病院での病気の説明が難しい」「信頼してよいネット情報がわからない」といった声です。講演では、当事者やご家族がどういったことでお困りなのかを、実際の声とあわせてご紹介させていただきました。
こういった読者の皆さんからのお声をもとに、遺伝性疾患プラスでは企画・コンテンツ制作を進めています。その結果、遺伝性疾患プラスの記事をきっかけに、「専門医の先生にアクセスできた」という声が寄せられるなど、読者の皆さんの課題解決につながっていると感じています。また、取材をした専門医の先生から、「『遺伝性疾患プラスの記事を読んで受診した』と訪れてきた患者さんがおられた」と伺うこともありました。
その他、「病気の診断をつけてほしい」というアンメットニーズにもアプローチするため、未診断疾患に関する情報発信にも力を入れています。未診断疾患イニシアチブIRUDに関する専門家インタビューや、未診断の当事者の声を紹介する記事なども掲載しています。
医学的根拠に基づいた正しい情報をわかりやすくお届けしたい理由
遺伝性疾患と診断され、病院で説明を受けた時、当事者やご家族は「専門的な言葉が多く、内容が難しくてすぐには理解できなかった」「そもそも病名も聞いたことがなかった」と感じておられることが多い印象を受けます。そこで、インターネットやSNSで病気を検索すると、特に希少疾患の場合は、日本語の情報が全く見つからない場合もあります。その他、根拠のないネガティブな情報や非科学的な情報を目にする方も多くおられます。
そのため、遺伝性疾患プラスでは、医学的根拠に基づいた正しい情報をわかりやすくお届けするために情報発信を行っています。当事者やご家族の困りごとや不安の解消の手がかりとなれば、という思いで運営しています。
「同じ疾患の人たちとつながりたい」声にも応えたい、希少疾患オンラインコミュニティ
また、遺伝性疾患プラスを運営している株式会社QLifeでは「希少疾患オンラインコミュニティ」を運営しています。特定の希少疾患の患者さんやそのご家族同士が集い、いつでも、どこでも、スマホ一つあれば、情報交換など交流ができる場です。「同じ疾患の人たちとつながりたい」というアンメットメディカルニーズへのアプローチするために運営しています。詳細はコチラからご覧ください。
最新・正確な治療情報へのアクセス困難/地域差など、当事者が感じるアンメットメディカルニーズ
続いて、登壇者の一人で血友病Aの当事者・鈴木さんは、講演の中で「患者が感じるアンメットメディカルニーズは、世代や生活環境によって異なるのではないか」と述べました。その上で、ご自身の感じている2つのアンメットメディカルニーズに触れました。(鈴木さんを含めた、血友病の当事者の皆さんのご経験はコチラの記事をご覧ください。)
1つ目は、最新の正確な治療情報へのアクセスが難しいことです。血友病治療の進歩により、最新情報のキャッチアップの必要性を感じているため、鈴木さんは、主治医の先生から情報を得るように心がけているそうです。一方で、誰もが主治医から簡単に情報を得られる環境にないなど、当事者が正しい情報を得るためには、まだまだ課題が多い状況もうかがえました。
2つ目は、地域によって疾患への理解度が異なることです。鈴木さんは、都内から近郊の県へ引っ越された経験があります。そこで感じたのは、役所や医療施設において理解度に差があるということ。役所の職員の方が、そもそも血友病を知らなかったり、地域の医師に血友病の診療経験がないことがわかったりしたそうです。引っ越しだけでなく、旅行などを理由に当事者が普段とは別の地域の医療施設に行く可能性は十分に考えられます。そのため、こういった地域差を解消していくことも、今後の課題の一つです。なお、遺伝性疾患プラスでは、東西南北の専門医が徹底討論!「お住いの地域における受診のお困りごと」として、各地域の医療の特徴や課題などを記事掲載しています。
当事者の声を聞き、研究や治療開発へいかす仕組みが求められる
後半では、登壇者の皆さんによるパネルディスカッションを実施。さまざまなアンメットメディカルニーズに触れられる中で、「患者さんの“声にならない声”をどのように言語化し、必要な場所へ伝えていけるか」といった話があがりました。
当事者の鈴木さんは、アンメットメディカルニーズを普段から発信する機会はあまり多くはないと感じているほか、「そもそも、患者自身が言語化することが難しいアンメットメディカルニーズもあると思う」と指摘。今後、当事者のお話を伺い、実際の研究や治療開発へいかしていく仕組みがますます求められそうです。
遺伝性疾患プラスでは、今後も最新の正しい情報をわかりやすくお届けし、また、当事者のお声を必要な場所へお届けしていく役割も担っていけるように活動していきます。(遺伝性疾患プラス編集部)