拡大新生児スクリーニング調査②「お子さんやお孫さんが生まれた場合、受けたいと思いますか?」

遺伝性疾患プラス編集部

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「拡大新生児スクリーニング」地域によって導入状況に差、認知度の課題も

Results Of A Survey 02

日本で生まれた赤ちゃん(以下、新生児)は、基本的に全員「新生児マススクリーニング」を受けます。これは、生まれてすぐに治療を始めることで、発症を防ぐことができる病気を見つける検査です。具体的には、新生児のかかとから少量の血液を採取し、20種類の病気の有無について確認します。一方、早期治療で発症を防ぐことができる病気は、新生児マススクリーニングで調べる20種類の他にも複数あります。そうした病気を、同じく生まれてすぐのタイミングで調べる検査が「拡大新生児スクリーニング」です。例えば、一般社団法人希少疾患の医療と研究を推進する会(CReARID、クレアリッド)では、「ムコ多糖症I型」「ムコ多糖症II型」「ムコ多糖症IVA型」「ムコ多糖症VI型」「ポンペ病」「ファブリー病(男児のみ対象)」「重症複合性免疫不全症(SCID)」「副腎白質ジストロフィー(男児のみ対象)」「脊髄性筋萎縮症(SMA)」を対象に拡大新生児スクリーニングを行っています。

「新生児マススクリーニング」は日本で生まれた全ての新生児を対象に提供されている一方、「拡大新生児スクリーニング」は任意で希望した人だけが受ける検査です。また、公費負担(無償)で受けられる「新生児マススクリーニング」と異なり、「拡大新生児スクリーニング」は基本的に検査費用がかり、その費用は病院や地域によってさまざまであるだけでなく、「拡大新生児スクリーニング」が導入されていない自治体もあります(例として2024年1月31日現在の脊髄性筋萎縮症における拡大新生児スクリーニングのデータについて、コチラの記事をご参照ください)。さらに、1977年から行われ始めた「新生児マススクリーニング」と比べて、数年前から徐々に開始されてきている「拡大新生児スクリーニング」はまだ認知度も高くないという課題もあるとされています。

一般生活者/遺伝性疾患の当事者・ご家族/医療従事者へ調査

遺伝性疾患プラスでは、専門医の先生方や当事者・ご家族のお話を伺う中で、「拡大新生児スクリーニング」について多くの方に正しく知ってもらうことの必要性を痛感してきました。そこで今回、一般生活者/遺伝性疾患の当事者・ご家族/医療従事者を対象に調査を実施しました。それぞれの立場による「拡大新生児スクリーニングの認知度」の違いは、コチラの記事をご覧ください。今回の記事では、一般生活者/遺伝性疾患の当事者・ご家族/医療従事者の「拡大新生児スクリーニングを受けたい/受けないと考える理由」の結果を中心にご紹介します。

拡大新生児スクリーニングを受けたい傾向は8割以上、知ることで「受けたい」につながった可能性

Percentage

「仮にご自身のお子さんやお孫さんが生まれた場合、『拡大新生児スクリーニング』を受けたいと思いますか?」という問いに対して、一般生活者/遺伝性疾患の当事者・ご家族/医療従事者それぞれで、「そう思う」「ややそう思う」(以下、「受けたいと思う」)の合計割合が8割以上を占めました。また、立場ごとの違いとして、遺伝性疾患の当事者・ご家族では「そう思う」と答えた方が63.6%となり、一般生活者(53.2%)や医療従事者(56.2%)と比較してやや多いこともわかりました。

前回の記事で報告した、認知度に関する設問では、拡大新生児スクリーニングを「今回初めて知った」と答えた方の割合は予想以上に多く、一般生活者に関しては、6割以上の方が「今回初めて知った」と回答していました(認知度の結果詳細はコチラの記事をご覧ください)。それに対し、今回、拡大新生児スクリーニングを「受けたいと思う」方の割合は、そうでない方よりも多かったことから、今回の調査により拡大新生児スクリーニングを知ったことで、受けたいという意向につながったのではないかと示唆されました。病気に関心のある立場の人だけでなく、一般の人でも、拡大新生児スクリーニングを知る機会があればこの検査に関心を持つ人は増える可能性があると考えらえました。

受けたい人の多く「病気の場合に発症を防ぐことができる可能性があるから」

Reason1

次に、「(『拡大新生児スクリーニング』を受けたいと思いますか?という問いに対し)「そう思う」「ややそう思う」と回答した理由を教えてください」という設問では、複数回答可として理由をお聞きしました。

その結果、「受けたいと思う」理由として最も多かったのは、一般生活者/遺伝性疾患の当事者・ご家族/医療従事者の3者とも「もし病気の場合、発症を防ぐことができる可能性があるから」で、8割を超える方が選択していました。

また、この設問では、その他として自由回答での理由もお聞きしました。当事者・ご家族からは「早期治療による本人の将来の可能性を広げられる」「親や家族の心構えなどができる」といった考えも寄せられました。

受けたいと思わない理由、最多は「受けるメリットがわからない」

Reason2

反対に、「(『拡大新生児スクリーニング』を受けたいと思いますか?という問いに対し)「そう思わない」「あまりそう思わない」と回答した理由を教えてください」という設問(複数回答可)では、拡大新生児スクリーニングをどちらかと言えば受けたいと思わない(以下、「受けたいと思わない」)方にその理由をお聞きしました。

その結果、「受けたいと思わない」理由として最も多かったのは、どの立場でも「検査を受けるメリットがよくわからないから」という結果になりました(一般生活者:63.2%、当事者・ご家族:31.3%、医療従事者:62.5%)。

一方、一般生活者と医療従事者では「公費負担(無償)ではないから」と答えた方が2番目に多かったのに対し、当事者・ご家族で2番目に多かった理由は「病気のリスクを知るのが怖いから」となり、それぞれの立場による理由の違いも見られました。

今回、「受けたいと思わない」と回答した方の割合は比較的少なかったものの、多くの方に拡大新生児スクリーニングを理解し利用してもらうためには、この検査を受けることのメリットに重点を置いたコミュニケーションが重要であると考えられました。

また、この設問でも「その他」として自由回答で受けたいと思わない理由をお聞きしました。現状、対症療法による治療が中心の遺伝性疾患の当事者・ご家族からは、「治療方法がない今の状況では、知らない方がいいと思うから」などの声が寄せられました。

遺伝性疾患の当事者・ご家族の声「一般の方にとっては、やはり遠い話なのではないかと思う」「生まれた地域で(お子さんの)運命が決まる状況」など 

また、情報を得る手段として、「どこから情報を得た場合に『受けたい』と思いますか?(複数回答可)」という問いでは、3者ともに「医療者・医療施設」と回答した方が9割以上となり、医療者・医療施設を主体とした情報発信の重要性についても明らかになりました。

その他、遺伝性疾患の当事者・ご家族から、遺伝性疾患プラス編集部へ寄せられたコメントを一部ご紹介します。

  • 「スクリーニング検査の大切さ」や「数万人に1人という確率は決して自分に関係ない話では無いということ」を私自身は経験から知っています。しかし、一般の方にとっては、やはり遠い話なのではないかと思います。公費負担になるのが1番だと考えますが、そうなる前の期間に1人でも多くの赤ちゃんが検査を受けられるよう、必要性や大切さの啓発をぜひお願いしたいです
  • 生まれた地域で(お子さんの)運命が決まってしまう状況が考えられ、あってはならないことだと強く思います

拡大新生児スクリーニングの認知度向上・正しい理解へ向けた情報発信へ

今回の調査では拡大新生児スクリーニングの認知度に課題があることは明らかになったものの、この検査を知ることで、受けたいと思う方もいることがわかりました。拡大新生児スクリーニングをより多くの方に知ってもらえるように、早期治療で発症を防ぐことができる病気があること、拡大新生児スクリーニングを受けたほうが良いと考えられる理由など、引き続き遺伝性疾患プラスでも情報発信を進めてまいります。(遺伝性疾患プラス編集部)

調査概要

目的

「拡大新生児スクリーニングの認知度」「拡大新生児スクリーニングを受けたい/受けないと考える理由」の把握

対象

一般生活者/遺伝性疾患の当事者・ご家族/医療従事者

方法

インターネット調査

期間

一般生活者(2024年9月10日~9月24日)遺伝性疾患の当事者・ご家族(2024年9月5日~9月24日)医療従事者(2024年9月4日~9月18日)

実施者

株式会社QLife 遺伝性疾患プラス編集部

回答数

一般生活者(192(有効回答188))遺伝性疾患の当事者・ご家族(151)医療従事者(844)

【回答者の背景】

一般生活者

性別 全部で192人、内訳は男性63人(32.8%)、女性128人(66.7%)、その他1人(0.5%)

年代

30代50人(26.0%)、40代76人(39.6%)、50代66人(34.4%)だった。

居住地

上位は大阪府22人、東京都14人、京都府12人、愛知県11人、神奈川県11人

遺伝性疾患の当事者・ご家族

性別

全部で151人、内訳は男性22人(14.6%)、女性127人(84.1%)、その他2人(1.3%)

年代

10代以下2人(1.3%)、20代12人(7.9%)、30代38人(25.2%)、40代50人(33.1%)、50代29人(19.2%)、60代18人(11.9%)、70代2人(1.3%)だった。

居住地

上位は東京都33人、神奈川県16人、大阪府11人、千葉県10人、埼玉県9人

立場

当事者75人(49.7%)、家族76人(50.3%)

医療従事者

性別

全部で844人、内訳は男性502人(59.5%)、女性342人(40.5%)

年代

20代以下55人(6.5%)、30代129人(15.3%)、40代174人(20.6%)、50代221人(26.2%)、60代193人(22.9%)、70代66人(7.8%)、80代以上6人(0.7%)だった。

居住地

上位は東京都127人、大阪府68人、愛知県56人、神奈川県53人、兵庫県51人

職種

医師410人(48.6%)、薬剤師220人(26.1%)、看護師106人(12.6%)、歯科医師42人(5.0%)、理学療法士10人(1.2%)、作業療法士2人(0.2%)、その他医療従事者26人(3.1%)、学生28人(3.3%)

 

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