遺伝性痙性対まひ、運動を支援する機器「医療用HAL」が保険適用に

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 遺伝性痙性対まひを含む脊髄疾患2疾患において、装着タイプの運動支援機器「HAL医療用下肢タイプ」が保険適用された
  2. HALは、神経の信号で皮膚に現れた微弱な生体電位と、機器内蔵のセンサからの情報で支援動作を決定し関節動作をアシスト
  3. 臨床試験で2疾患の歩行改善効果が確認され、2022年に適応追加が承認された

身体に装着し運動を支援する機器

CYBERDYNE株式会社は、身体に装着することで運動を支援する機器、「HAL医療用下肢タイプ」(一般的名称:生体信号反応式運動機能改善装置、以下「医療用HAL(R)」)について、遺伝性痙性対まひを含む脊髄疾患2疾患で2023年10月1日に厚生労働省より保険適用通知が発出されたことを報告しました。

医療用HALは、装着した人が筋肉を動かす時に、脳から筋肉に送られた神経信号によって皮膚表面に現れた微弱な生体電位信号と、機器に内蔵された角度、足底荷重、体幹絶対角度のセンサから得られた情報を使って支援動作を決定、各関節のパワーユニットを動かして、足の関節動作をアシストします。

遺伝性痙性対まひは、筋肉がこわばって動きにくくなる痙縮(けいしゅく)と、足の筋力が徐々に低下する症状が見られる遺伝性疾患です。どの年齢でも発症する可能性があり、筋緊張の亢進やまひなどのために歩くことが次第に困難になるなどの症状が現れます。

中枢神経に病変を持つ2疾患を対象とした臨床試験で、歩行改善効果を確認

医療用HALは、これまでに脊髄性筋萎縮症(SMA)球脊髄性筋萎縮症(SBMA)筋萎縮性側索硬化症(ALS)シャルコー・マリー・トゥース病、遠位型ミオパチー、封入体筋炎、先天性ミオパチー、筋ジストロフィーの8つの進行性神経筋難病疾患において承認されていましたが、昨年10月、脊髄疾患2疾患(遺伝性痙性対まひ、HTLV-1関連脊髄症)が適応追加されました。以前承認されていた8疾患は脊髄運動ニューロンやそれに接続する筋線維といった運動単位に病変を持つ疾患であるのに対し、脊髄疾患2疾患は上位の中枢神経に病変を持つ疾患です。

適応追加は、NCY2001試験の結果に基づいて行われ、主要評価項目と臨床的に重要な副次評価項目において、通常の歩行運動療法を有意に超える歩行改善効果が検証されました。

2022年10月の適応追加承認を受けて、同社は各医療機関で診療報酬算定ができるように保険適用に係る手続きを進めていました。適正使用ガイドの改訂が完了し次第、2疾患の患者さんへの治療にも各医療機関が診療報酬を算定できるようになります。

同社は、今回の保険収載により、日本に全国で推定4,500名とされる脊髄疾患患者さんに対する新しい治療の選択肢として医療用HALの普及を加速させると共に、世界でもこれらの脊髄疾患に対する標準治療として確立する取り組みを推進する、と述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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