ファブリー病の新たな遺伝子治療薬、臨床試験で腎機能改善効果を確認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ファブリー病の新たな遺伝子治療薬「isaralgagene civaparvovec」の臨床試験結果を発表
  2. 治療を受けた32人の患者さん全員において、52週時点で腎機能の改善を示す結果を確認
  3. 良好な安全性と忍容性を示し、有害事象の大部分は軽度から中等度

酵素の活性低下により複数の臓器に深刻な症状を引き起こす可能性

米国のSangamo Therapeutics社は、ファブリー病の新たな遺伝子治療薬「isaralgagene civaparvovec(ST-920)」の臨床試験において良好な結果を得たと発表しました。

ファブリー病は、ライソゾーム病の一つで、ライソゾームで機能するα-ガラクトシダーゼA酵素の設計図である、ガラクトシダーゼアルファ遺伝子(GLA)の変異により引き起こされます。GLA遺伝子の変異によって、酵素の活性が低下することにより細胞内に不要な物質が異常に蓄積し、腎臓、心臓、神経、眼、腸、皮膚などの臓器に深刻な症状を引き起こす可能性があります。症状としては、発汗量の減少または消失、暑熱不耐性、被角血管腫(皮膚のシミ)、視力障害、腎疾患、心不全、胃腸障害、気分障害、神経障害性疼痛、四肢のチクチク感などがあります。

isaralgagene civaparvovecは、前処置なしで1回の点滴を受けるだけの遺伝子治療薬です。米国食品医薬品局(FDA)からオーファンドラッグ、ファストトラック、RMATの指定を受けており、欧州医薬品庁からもオーファン医薬品指定などを取得しています。また、同社は米国で生物学的製剤を販売するために必要となる生物学的製剤のライセンス(BLA:Biologics License Application)を申請予定です。

既存薬を上回る治療効果が期待

第1/2相STAAR試験は、ファブリー病患者さんを対象にisaralgagene civaparvovecを評価するための臨床試験で、酵素補充療法(ERT)を受けている患者さん、ERTを6か月以上中断していた患者さん、ERT未治療の患者さんが登録されました。

今回発表された試験結果(追跡期間の中央値24か月)では、この遺伝子治療を受けた32人の全員の患者さんにおいて、52週時点で腎機能の指標となる年間推定糸球体濾過率が改善を示し、FDAによる薬事承認の判断材料となり得る結果が得られました。さらに、104週間の追跡調査を達成した19人の患者さんにおいても、年間推定糸球体濾過率が改善傾向のままでした。

また、観察研究によると、市販されている他の治療薬「リプレガル(一般名:アガルシダーゼ アルファ)」「ファブラザイム(一般名:アガルシダーゼ ベータ)」「ガラフォルド(一般名:ミガーラスタット塩酸塩)」では年間推定糸球体濾過率が低下傾向を示すのに対し、isaralgagene civaparvovecでは改善傾向を示しており、治療効果の優位性が期待されます。

薬の効果を示すα-ガラクトシダーゼA酵素の活性は最長4.5年間維持され、従来の酵素補充療法(ERT)を受けていた18人の患者さん全員がERTを中止することが可能になりました。ERT中止後も血液中の指標は安定した状態を保っていました。

また、患者さんの生活の質(QOL)を示すさまざまな指標(疾患重症度スコア、胃腸症状評価など)においても改善が確認されました。

isaralgagene civaparvovecは、良好な安全性と忍容性を示し、有害事象(副作用)の大部分は軽度から中等度でした。最も多く認められた治療関連有害事象は、発熱(参加者の60.6%)、COVID-19(36.4%)、頭痛(33.3%)、鼻咽頭炎(33.3%)でした。確認された有害事象は全て適切な治療により改善し、安全性に関連する試験中止はありませんでした。

STAAR試験の全データについては現在も解析が進められており、今後も追加データが発表される予定です。同社は2026年の承認申請に向けた準備を進めている、と伝えています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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