患者さんの身体的特徴、家族歴、スクリーニング検査などの結果から、医師が遺伝性疾患を疑う場合、診断のためにどのような方法がとられるのでしょうか。
例えば、遺伝子検査は、遺伝性疾患を診断するためのアプローチのひとつですが、診断を行うための検査や調査には、以下のようなものがあります。
身体検査
特徴的な顔立ちなど身体的な特徴が、遺伝性疾患の診断に重要な根拠となる場合があります。必要に応じて、頭囲、目と目の間の距離、手足の長さの測定などの身体検査の他に、神経や眼の検査など専門的な検査が行われることもあります。また、医師は、X線検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、または磁気共鳴画像(MRI)などの画像検査により、内臓や骨格など体内の構造を確認することもあります。
個人の病歴
生まれてから現在までの個人の健康に関する情報が、遺伝性疾患の診断の大きな手がかりとなることがあります。個人的な病歴とは、過去の健康問題、入院や手術の経験、アレルギーの有無、薬の治療歴、これまでに医療機関で受けた検査や遺伝子検査の結果などが含まれます。
家族の病歴
遺伝性疾患は家族内で同じ疾患を発症する場合もあるため、家族の病歴に関わる情報は、遺伝性疾患を診断するためにとても大切な情報です。医師や遺伝カウンセラーは、当事者の両親、きょうだい、子ども、場合によってはさらに遠い親戚の病歴について確認します。家族の病歴に関わる情報は、遺伝性疾患の診断だけでなく家族内での遺伝様式を知る手がかりとなります。
遺伝子検査を含む臨床検査
遺伝性疾患の確定診断となることもある遺伝子検査では、分子的手法、染色体手法、生化学的手法のほか、ゲノム全体を調べるゲノム検査などいくつかの方法が用いられます。また、血液や尿中の特定の物質を測定するその他の臨床検査も、診断を示唆するのに役立ちます。
遺伝子検査は現在、多くの遺伝性疾患の診断で利用されています。しかし、疾患によっては、遺伝子検査によって診断ができない場合もあります。その遺伝性疾患の遺伝的原因が不明だったり、検査法がまだ開発されていなかったりするためです。このような場合は、全ゲノム解析によって、原因となる遺伝子変異を突き止めることができるかもしれません。
また、上記のアプローチを組み合わせて診断を行うこともあります。例えば複数の病気の可能性が考えられる場合には、遺伝子検査が利用できる場合でもそれ以外のアプローチを用いて可能性を絞り込み(鑑別診断)、その上で、最も適切な遺伝子検査を選択して診断につなげます。
遺伝性疾患の診断は、疾患の症状が現れる時期や検査の可能性に応じて、出生前から老齢期まで、いつでも行われる可能性があります。正しい診断を受けることは、治療や疾患管理に役立ちます。また、原因となる遺伝子が明確になったうえでの診断は、家族が病気の影響を受けているか、またはそのリスクがあるかの可能性を知ることにもつながります。診断を受けた疾患に治療法がない場合でも、正しい診断を受けることはこれからどのような症状や障がいが現れるかを知る手掛かりになり、サポートにつながることが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)