エピジェネティクスとは?

遺伝性疾患プラス編集部

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エピジェネティクスとは、DNAの塩基配列を変えずに細胞が遺伝子の働きを制御する仕組みを研究する学問です。「エピ」はギリシャ語で「上」を意味し、「エピジェネティック」は遺伝暗号を超えた要因を意味します。エピジェネティックな変化とは、遺伝子のオン、オフを制御するためにDNAに起こる化学的な修飾となります。これらの修飾はDNAに対して起こるものの、DNAを構成している塩基配列を変えることはありません。細胞内のDNA全体(ゲノム)の中で、遺伝子の活動(発現)を制御する修飾のすべてをまとめてエピゲノムと呼んでいます。

エピジェネティックな変化は、遺伝子のオン、オフを決定するため、細胞内のタンパク質の合成に影響を与えています。この制御により各細胞はその機能に必要なタンパク質のみを合成することができます。例えば、骨の成長を促進するタンパク質は、筋肉細胞では作られません。エピジェネティックな変化のパターンは、個人ごとに、同じ個人の中でも組織ごとに、さらには同じ組織の中でも細胞ごとに異なっています。また、食生活や汚染物質への暴露などの環境的な要因も、エピゲノムに影響を与えます。エピジェネティックな修飾は、細胞の分裂に伴って細胞から細胞へと保たれることがあり、場合によっては世代を超えて継承されることもあります。

エピジェネティックな修飾の代表的なものに「DNAメチル化」があります。DNAメチル化はメチル基と呼ばれる小さな化学基(1つの炭素原子と3つの水素原子で構成される)のDNAへの結合のことを言います。メチル基が遺伝子上に存在すると、その遺伝子はオフまたはサイレンシングされ、その遺伝子からタンパク質が合成されなくなります。

このほかエピジェネティックな変化にはヒストンの修飾も挙げられます。ヒストンは細胞核内の構造タンパク質です。DNAはヒストンに巻き付き、染色体の形を取っています。ヒストンは、メチル基やアセチル基(炭素原子2個、水素原子3個、酸素原子1個からなる)などの化学基の付加や除去により修飾されています。この化学基は、DNAがヒストンにどれだけしっかりと巻きついているかに影響を与え、遺伝子のオン、オフに影響を与えています。

エピジェネティックなプロセスにおいて、誤った遺伝子を修飾したり、特定の遺伝子やヒストンへの化学基の付加に失敗したりすると、遺伝子の発現に異常が起きたり、発現しなくなったりします。エピジェネティックなプロセスの誤りによるものも含め、遺伝子発現の変化は、遺伝性疾患の一般的な原因となっています。がん、代謝性疾患、変性疾患などの症状にも、エピジェネティックなプロセスの誤りが関係していることがわかっています。

科学者はゲノムと修飾に関わる化学物質について、研究を続けています。特に研究されているのは、エピジェネティックな修飾やプロセスの誤りが、遺伝子の機能、タンパク質の合成、ヒトの健康に与える影響です。(提供:ステラ・メディックス)

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