どのような病気?
遠位型ミオパチーは、遺伝的な原因で引き起こされる筋肉の病気のうち、胴体から遠い筋肉(遠位筋)に筋力低下や萎縮などの症状が見られる遺伝性疾患です。ミオは筋肉、パチーは病気を意味しており、遠位型ミオパチーとは遠位筋に見られる病気という意味です。遠位型ミオパチーは、10種類以上の疾患が含まれる複数の疾患の総称となっており、それぞれ症状や特徴、原因遺伝子などが異なります。多くは、小児期以降~成人期に発症し、体幹から遠い筋肉、例えば足首や指先を動かすような筋肉に異常が生じます。なお、生まれた時から遠位筋に症状が見られる疾患については、先天性ミオパチーに含まれるとし、この解説では取り扱いません。
複数の疾患が含まれる遠位型ミオパチーの中で、日本で多い疾患は、縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(GNEミオパチー)、三好型ミオパチー、眼咽頭遠位型ミオパチーの3つです。
その他に含まれる疾患として、遠位型前脛骨筋ミオパチー、Non-dysferlin distal muscular dystrophy、ウェランダー遠位型ミオパチー、Laing遠位型ミオパチー、遠位型ミオパチーTateyamaタイプ、声帯および咽頭麻痺を伴う遠位型ミオパチー、Distal VCP-mutated myopathy、Distal nebulin(NEB) myopathy、脛骨筋ジストロフィー、筋原線維性ミオパチーなどがあります。
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーは、前脛骨筋(ぜんけいこつきん)と呼ばれる、膝の下の脛(すね)の前面にあり、足首を上に持ち上げるために必要な筋肉で最初に症状が見られることが多いとされます。前脛骨筋が弱くなると、気付かないうちに足首が十分に持ち上がらず段差などでつまずくなどします。また、歩き方が変わり、走ったり階段を上ったりするのが難しくなります。発症は15~40歳が多いとされ、走りにくい・歩きにくいといった症状で気が付かれることがあります。症状は時間の経過とともに悪化し、個人差はありますが、筋肉が徐々に痩せていき、発症後10数年ほどで車椅子が必要な状態になる場合もあります。日本人、イラン系ユダヤ人、インド地域の人に多く見られるという報告があります。なお、この疾患は、国際的にGNEミオパチーという名称に統一される動きがありますが、この疾患解説では、現在国内で用いられることの多い名称で記載しています。
三好型ミオパチーは、ふくらはぎ(下腿後面、下腿とは膝から足首までのこと)の筋肉において異常が見られることが多く、片方または両方のふくらはぎ筋肉で萎縮や筋力低下が見られます。片方の足だけに症状が出ている場合は、ふくらはぎの太さが左右非対称に見えることがあります。ふくらはぎの筋肉は、足首を下に曲げるために必要な筋肉であるため、つま先立ちをするのが難しくなることがあります。発症は成人初期から中期ごろとされ、症状は進行性で徐々に悪化します。走りにくいと感じたり、歩き方が変化するなどし、さらに進行すると筋力低下や筋肉の萎縮が、ふくらはぎから体の中心に近い筋肉 (近位筋)である大腿部(太もも)や臀部(お尻)など下半身の筋肉に広がり、階段を上る、椅子から立ち上がる、長時間歩くなどが困難になることがあります。上腕部や肩の筋肉に症状が出る場合もあります。発症10数年で歩行が難しくなり、車椅子が必要になる人もいます。まれに不整脈の症状が見られる人もいます。三好型ミオパチーでは、筋肉疾患の兆候として、血液中のクレアチンキナーゼ(CK)値が高くなる特徴が見られます。
眼咽頭遠位型ミオパチーは、成人期~老年期にかけて発症し、主に目、喉(咽頭)、足、腕の筋肉に症状が見られます。まぶたが下がる(眼瞼下垂)、飲み込みにくくなる(嚥下障害)、しわがれ声や鼻声、構音障害、顔面・足・腕の筋萎縮などが見られます。足の筋肉は特に下腿三頭筋と呼ばれるふくらはぎの筋肉に症状が見られ、歩き方が変わったり、つまづきやすくなるなどします。呼吸をするための呼吸筋に筋力低下が見られると、呼吸器系の問題が生じます。まれに、難聴、前腕や大腿部の筋力低下も見られます。病気が進行すると、それ以外の筋肉にも異常が見られることがあります。眼咽頭遠位型ミオパチーでは、血液中のクレアチンキナーゼ(CK)値の上昇やEMG(筋電図)検査の異常が認められることがあります。
その他、遠位型ミオパチーに含まれる主な疾患と特徴
疾患名 | 特徴 |
---|---|
遠位型前脛骨筋ミオパチー | ・10代~成人期に発症 ・主に膝下の脛(すね)の前面にある前脛骨筋(ぜんけいこつきん)に症状が見られる ・進行すると足だけでなく腕の筋肉などにも筋力低下が見られ、車椅子が必要になる場合もある ・経過は三好型に似ているが、主に下腿前面の筋肉に症状が見られることが特徴 ・血液中CK値の上昇が見られる |
Non-dysferlin distal muscular dystrophy | ・三好型に似た症状や特徴を示す |
ウェランダー遠位型ミオパチー | ・40代以降に発症 ・主に手や指を伸ばす筋肉に筋力低下が見られる ・進行すると手と足のつま先と足首を伸ばす筋肉にも症状が見られる ・北欧地域で多く見られる |
Laing遠位型ミオパチー | ・小児期に発症する傾向がある ・症状は非常にゆっくりと進行する ・初期症状は足と足首、その後手と手首の筋力低下が見られるようになる ・発症から10年以上で、軽度の筋力低下が足、腰、肩に広がる ・ほとんどの場合生涯を通じ動くことができ、平均余命は正常の範囲とされる |
遠位型ミオパチーTateyamaタイプ | ・10代後半~40代頃発症 ・症状はゆっくりと進行 ・手足の小さな筋肉の萎縮や筋力低下が見られる(手の親指や小指の付け根の筋肉など) ・前腕の筋肉などにおいて突然衝撃が加わると、筋肉の過剰興奮(急速収縮)が見られる場合がある ・ふくらはぎの筋肉の肥大が見られる場合もある ・大腿部や上腕部などの近位筋は正常とされる |
声帯および咽頭麻痺を伴う遠位型ミオパチー | ・成人期に発症 ・喉、足、前腕の筋肉に特に影響が見られる ・初期は足首の筋力低下が見られることが多いが、手、手首、肩の筋力低下も見られる ・症状は体の片側だけに現れる場合もあるが、最終的には両側で見られる ・筋力低下は徐々に進行、歩く、指を上げるなどが困難になる ・声帯および咽頭筋力低下を示し、しわがれ声、鼻声となる場合や、嚥下障害を引き起こすこともある |
Distal VCP-mutated myopathy | ・中年期に発症することが多い ・足の遠位筋、前脛骨筋などの筋力低下などで下垂足(足首を甲側へ持ち上げられなくなる)と呼ばれる症状が見られる ・前頭側頭型認知症のほか、骨パジェット病と呼ばれる骨が弱くなる病気を合併する場合がある |
Distal nebulin(NEB) myopathy | ・小児から若年成人期に発症 ・遠位筋(前脛骨筋、下肢伸筋、指伸筋、頸屈筋)などに筋力低下や萎縮が見られる ・ゆっくり進行する ・ネマリン小体と呼ばれる筋線維内部の構造は必ずしも見られるとは限らない |
脛骨筋ジストロフィー | ・40~70歳頃に発症 ・主に前脛骨筋の筋力低下や萎縮が見られ、症状は比較的軽度 ・非常にゆっくりと進行、10~20年経つと足指を伸ばす筋肉に筋力低下が見られ、下垂足や、足指を上げたりかかとで歩いたりが困難になるなどする |
筋原線維性ミオパチー | ・多くは成人期中期頃に筋力低下を発症 ・症状や特徴は原因遺伝子によって異なるが、組織の検査を行うと、筋肉を構成する線維状の細胞にさまざまなタンパク質が蓄積していることが特徴 ・ほとんどの場合、手足の遠位筋で筋力低下が始まるが、人によっては近位筋に影響が出ることもある ・症状は進行性で、全身の筋力低下を発症する人もいる ・顔面筋の筋力低下は、嚥下障害や発話障害を引き起こす可能性がある |
遠位型ミオパチーは、患者数の少ない筋疾患の中でも、さらに遠位筋だけに主要な症状が見られる疾患であり、極めてまれな疾患の一つとなっています。正確な発症頻度や患者数はわかっていません。
日本で比較的患者さんが多い疾患は、「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー」と「三好型ミオパチー」で、それぞれ400人程度、3番目に多い「眼咽頭遠位型ミオパチー」は120人前後の患者さんがいると推測されています。
遠位型ミオパチーは、指定難病対象疾病(指定難病30)となっています。
何の遺伝子が原因となるの?
遠位型ミオパチーは、疾患や病型によって原因となる遺伝子や遺伝形式が異なります(下表参照)。
遠位型ミオパチーの原因遺伝子と遺伝形式
疾患名 | 原因遺伝子(染色体領域) | 遺伝形式 |
---|---|---|
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー | GNE(9p13.3) | 常染色体劣性(潜性)遺伝 |
三好型ミオパチー | DYSF(2p13.2)、ANO5(11p14.3) | 常染色体劣性(潜性)遺伝 |
眼咽頭遠位型ミオパチー | LRP12(8q22.3)、GIPC1(19p13.12)、NOTCH2NLC(1q21.2)、RILPL1(12q24.31) | 常染色体優性(顕性)遺伝など |
遠位型前脛骨筋ミオパチー | DYSF(2p13.2) | 常染色体劣性(潜性)遺伝 |
Non-dysferlin distal muscular dystrophy | ANO5(11p14.3) | 常染色体劣性(潜性)遺伝 |
ウェランダー遠位型ミオパチー | TIA1(2p13.3) | 常染色体優性(顕性)遺伝 |
Laing遠位型ミオパチー | MYH7(14q11.2) | 常染色体優性(顕性)遺伝 |
遠位型ミオパチーTateyamaタイプ | CAV3(3p25.3) | 常染色体優性(顕性)遺伝 |
声帯および咽頭麻痺を伴う遠位型ミオパチー | MATR3(5q31.2) | 常染色体優性(顕性)遺伝 |
Distal VCP-mutated myopathy | VCP(9p13.3) | 常染色体優性(顕性)遺伝 |
Distal nebulin(NEB) myopathy | NEB(2q23.3) | 常染色体劣性(潜性)遺伝 |
脛骨筋ジストロフィー | TTN(2q31.2) | 常染色体優性(顕性)遺伝 |
筋原線維性ミオパチー | MYOT(TTID、5q31.2)、LDB3(10q23.2)、CRYAB(11q23.1)、DES(2q35)、FLNC(7q32.1) | 常染色体優性(顕性)遺伝など |
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーは、GNE遺伝子の変異が原因で引き起こされます。このGNE遺伝子は、シアル酸と呼ばれる分子を生合成する経路に関わる酵素である、UDP-N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼの設計図となります。シアル酸は、体全体の細胞においてさまざまな細胞機能(細胞の移動、細胞同士の接着、細胞間のシグナル伝達、炎症反応)に機能する働きを持ちます。GNE遺伝子の変異によって、酵素の活性が低下すると、シアル酸が減少し、この病気の症状につながると考えられますが、シアル酸はさまざまな細胞や組織の正常な機能に重要であり、なぜこの病気の症状が筋肉だけに見られるのかについての理由はわかっていません。
三好型ミオパチーは、DYSF遺伝子、またはANO5遺伝子の変異によって引き起こされます。DYSF遺伝子は、ジスルフェリンと呼ばれるタンパク質の設計図となる遺伝子です。ジスフェリンは、筋肉を構成するたくさんの筋線維と呼ばれる細い筋細胞の集合において、筋線維を包む細胞膜である筋鞘(きんしょう)と呼ばれる薄い膜に存在しています。ジスルフェリンは、筋肉の緊張によって筋鞘が損傷や断裂した際、その修復を助けると考えられています。DYSF遺伝子の変異によってジスルフェリンが不足すると、筋鞘に生じた損傷を修復する能力が低下し、筋線維の萎縮につながります。しかし、この遺伝子の変異によって、三好型ミオパチーの症状である特定の筋肉の筋力低下やと萎縮が見られる理由について詳細はわかっていません。また、DYSF遺伝子の変異は、三好型ミオパチーだけでなく遠位型前脛骨筋ミオパチー、筋ジストロフィーの1つである肢帯型筋ジストロフィー2B型の原因としても知られています。
ANO5遺伝子は、アノクタミン5と呼ばれる、塩化物イオンチャネルタンパク質の設計図となります。このタンパク質の具体的な機能はよくわかっていませんが、小胞体と呼ばれるタンパク質の生成、処理、輸送などに関与する細胞内小器官に存在しています。アノクタミン5、小胞体内へ塩化物イオンが適切に出入りするために機能すると考えられています。筋肉細胞内への塩化物イオンの流れは、筋肉の収縮や弛緩を制御するために重要です。また、アノクタミンタンパク質は、細胞膜の維持や、膜の損傷の修復にも関与しているとされています。しかし、ANO5遺伝子の変異が、三好型ミオパチーの症状を引き起こす詳細な仕組みはまだわかっていません。
眼咽頭遠位型ミオパチーは、LRP12、GIPC1、NOTCH2NLC、RILPL1遺伝子の領域内に存在する「CGG」の繰り返し配列が異常に長くなる「リピート伸長」が原因であることが明らかにされています。国内の患者さんにおいて、ほとんどがLRP12、GIPC1、NOTCH2NLCの3つの遺伝子のいずれかにリピート伸長が見られたことが研究で報告されています。これらの遺伝子のリピート伸長が、どのように眼咽頭遠位型ミオパチーの症状を引き起こすのかについての詳細はまだわかっていません。
遠位型ミオパチーは、常染色体劣性(潜性)遺伝形式または常染色体優性(顕性)遺伝形式で遺伝します。また、親には遺伝子変異がなく、偶発的に孤発例として生まれる場合もあります。
常染色体劣性(潜性)遺伝形式は、両親から受け継いだ遺伝子の2つのコピーの両方に変異があることで発症します。それぞれの親は、変異のある遺伝子を1つ持っていますが、症状は見られません(保因者)。
常染色体優性(顕性)遺伝形式は、父親と母親から受け継いだ2つの遺伝子のうち、どちらかに変異があると発症する遺伝形式です。親が病気の場合、病気が子どもに引き継がれる確率は50%です。
どのように診断されるの?
難病情報センターによれば、遠位型ミオパチーの診断基準は、以下のように定められています。
遠位型ミオパチーとして、下記の各疾患群が含まれる
(1)縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー
(2)三好型ミオパチー
(3)眼咽頭遠位型ミオパチー
(4)その他の遠位型ミオパチー
(1)縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー診断基準
A.臨床的特徴として、以下のaかつbを満たす
a.常染色体劣性(潜性)遺伝形式または孤発性
b.進行性の筋力低下および筋萎縮:前脛骨筋や大腿屈筋(だいたいくっきん、太ももの関節を曲げるために働く筋肉)群、大内転筋(だいないてんきん)が侵されるが、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)は多くは保たれる。
(参考所見)
・発症年齢は15歳から40歳までが多い
・5〜20年の経過で歩行不能となることが多い
・血清CK値は正常から軽度高値(1,500 IU/L以下)
・針筋電図で筋原性(筋肉自体が障害される)変化(ただし、fibrillation potentialや高振幅MUPが認められることがある)
B.筋生検所見として、「縁取り空胞を伴う筋線維」を満たす
(参考所見)
・通常強い炎症反応を伴わない。
・筋線維内のβ-アミロイド沈着
・筋線維内のユビキチン陽性封入体
・筋線維内のp62陽性凝集体
・筋線維内のリン酸化タウ
・(電子顕微鏡にて)核または細胞質内の15~20nmのフィラメント状封入体(tubulofilamentous inclusions)の存在
C.遺伝学的検査
GNE遺伝子のホモ接合型または複合へテロ接合型変異
【除外すべき疾患】
臨床的鑑別
・遠位筋を侵し得る他の筋疾患(他の遠位型ミオパチーを含む)
・神経原性疾患
病理学的鑑別
・縁取り空胞を来す他のミオパチー
【診断のカテゴリー】
確定診断(Definite):AまたはBの少なくとも一方を満たし、かつCを満たす
ほぼ確実(Probable)と診断:A+Bを満たす
(2)三好型ミオパチー診断基準
A.臨床的特徴として、以下のaかつbを満たす
a.常染色体劣性(潜性)遺伝形式または孤発性
b.進行性の筋力低下および筋萎縮:下肢後面筋群、特に腓腹筋が侵される
(参考所見)
・発症年齢は30歳までに多い
・進行すれば近位筋の筋力低下が出現する
・針筋電図で筋原性変化(ただし、fibrillation potentialや高振幅MUPが認められることがある)
・歩行可能な時期に血清CK値が異常高値(1,000 IU/L以上)を示す
B.ジスルフェリン(dysferlin)の評価として、以下のaかつbを満たす
a.ジスルフェリン欠損(骨格筋免疫染色またはウェスタンブロット解析)
b.DYSF(ジスルフェリン)遺伝子のホモ接合型または複合ヘテロ接合型変異
(参考所見)
・CD14陽性リンパ球のウェスタンブロット解析でジスルフェリン欠損
【除外すべき疾患】
臨床的鑑別
・遠位筋を侵し得る他の筋疾患(他の遠位型ミオパチーを含む。)
・神経原性疾患
病理学的鑑別
・他の筋ジストロフィー
・多発性筋炎
【診断のカテゴリー】
確定診断(Definite):A+Bを満たす
ほぼ確実(Probable)と診断:Aを満たすが、Bが実施されていない
(3)眼咽頭遠位型ミオパチー診断基準
A.臨床的特徴として、以下のaかつbを満たす
a.眼瞼下垂を呈する
b.下腿三頭筋の筋力低下・筋萎縮を呈する
(参考所見)
・緩徐進行性である
・外眼筋麻痺、嚥下・構音障害を呈する
・常染色体優性(顕性)遺伝形式の家族歴を認めることがある
B.一般的検査(aを満たす)
a.血清CK値は正常から軽度高値(1,000 IU/L以下)
(参考所見)
・針筋電図で筋原性変化(ただし、fibrillation potentialや高振幅MUPが認められることがある)
C.筋生検所見
縁取り空胞を伴う筋線維の存在
D.遺伝学的検査
国内例のほとんどはLRP12、GIPC1、NOTCH2NLCのいずれかの遺伝子にCGGリピート伸長を有する
【除外すべき疾患】
臨床的鑑別
・遠位筋を侵し得る他の筋疾患(他の遠位型ミオパチーを含む)
・眼咽頭型筋ジストロフィー(OPMD)
・ミトコンドリア病(慢性進行性外眼筋麻痺:CPEO)
病理学的鑑別
・縁取り空胞を来す他のミオパチー
【診断のカテゴリー】
確定診断(Definite):A+B+Dを満たす
ほぼ確実(Probable)と診断:A+B+Cを満たす
(4)その他の遠位型ミオパチー診断基準
【疾患概念】
その他の遠位型ミオパチーは原因遺伝子の同定されていないものを含めて、各種の報告がある。ここでは、その他の遠位型ミオパチー例を以下A+Bの全てを満たすものと定義する。
A.臨床的特徴として、以下のaからdの全てを満たす
a.遠位筋が優位に侵される
b.両側性である
c.日内変動を伴わず、固定性または進行性である
d.2年以上の経過である
B.筋生検所見として、以下のaかつbを満たす
a.筋原性変化の存在
b.神経原性変化はないか、あっても筋力低下を全て説明できるものではない
※代表的な遠位型ミオパチーの原因遺伝子は「2.何の遺伝子が原因となるの?」をご覧ください。
【除外診断】
先天性ミオパチー:遠位型ミオパチーの臨床型をとることもあるが、生まれた時より症状が見られる場合は先天性ミオパチーとして分類する。
どのような治療が行われるの?
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーについては、アセノベル(R)徐放錠が2024年3月に承認されました。また、海外では他のシアル酸補充療法の臨床試験が行われています。
それ以外の遠位型ミオパチーの治療は、疾患により異なりますが、多くは対症療法が中心となります。転倒による外傷などのほか、拘縮を防ぐ目的でのリハビリ、「眼咽頭遠位型ミオパチー」では嚥下障害による誤嚥性肺炎に対する治療も行われることがあります。
装具を用いることで歩行可能な期間をある程度延長できることがわかっており、2016年から 遠位型ミオパチーを含む8つの神経・筋疾患を対象に歩行リハビリテーションとしてHAL医療用下肢タイプによる「歩行運動処置」が保険適用となっています。
どこで検査や治療が受けられるの?
日本で遠位型ミオパチーの診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。
- 東北大学病院 脳神経内科
- 東京大学医学部附属病院
- 北里大学北里研究所病院
- NCNP病院国立精神・神経医療研究センター 筋疾患センター
- 東京都立神経病院
- 大阪医科薬科大学病院 難病総合センター脳神経内科
- 大阪大学医学部附属病院 神経内科・脳卒中科
- 兵庫県立尼崎総合医療センター
※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。
患者会について
難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。
参考サイト
- 難病情報センター
- MedlinePlus
- Genetic and Rare Diseases Information Center
- Online Mendelian Inheritance in Man(R) (OMIM(R))
- KEGG DISEASE:三好型筋ジストロフィー
- KEGG DISEASE:遠位型前脛骨筋ミオパチー
- KEGG DISEASE:Welander 遠位型ミオパチー
- KEGG DISEASE:Laing 遠位型ミオパチー
- KEGG DISEASE:遠位型ミオパチー, Tateyama タイプ
- KEGG DISEASE:脛骨筋ジストロフィー