“病気そのもの以外”のお悩み相談はどうする?難病の当事者と医療従事者のコミュニケーション課題

遺伝性疾患プラス編集部

アレクシオンファーマ合同会社は、指定難病の当事者と看護師それぞれを対象に「難病患者さんと医療従事者のコミュニケーションと連携に関する意識調査」を実施した結果を発表しました。調査対象は直近半年間に通院または入院歴のある20〜69歳の指定難病の当事者500人(潰瘍性大腸炎17.8%、全身性エリテマトーデス8.4%、クローン病7.4%など)、直近半年間に通院または入院歴のある20〜69歳の指定難病以外の病気の当事者500人、指定難病の当事者の看護に関わったことのある20〜69歳の現職の看護師464人。2023年7月21日〜8月22日の期間、インターネット調査によって実施されました。

記事の前半では、調査結果により明らかになった難病の当事者と医療従事者のコミュニケーションの課題をご紹介。記事の後半では、課題の“解決のヒント”につながる支援活動をご紹介していきます。

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(写真はイメージ)

看護師の回答結果

難病の看護「専門的な知識やスキルの高さが求められる」

最初に、看護師に対して、指定難病以外で通院・入院している当事者と比べ、難病の当事者の看護でどのような困りごと・大変さがあるかを質問しました。その結果、「専門的な知識やスキルの高さが求められる」(52.8%)が最も多く、次いで「心理的なサポートとカウンセリングが難しい」(34.7%)、「症状・状態を、看護師が理解することが難しい」(30.0%)が挙げられました。

病状に伴うステージごとの看護の困りごとや大変さを尋ねたところ、最多項目に変化はなかったものの、<(難病患者さんが)体に異変を感じてから病名が判明するまで>では、「症状をわかりやすく説明するのが難しい」(39.9%)、<(治療を開始後)症状が安定している状態>では、「次の病期(ステージ)の心構えなどを伝えるタイミングが難しい」(31.0%)が2位に挙がったそうです。難病では専門的な知識が求められるため、症状の説明や時期などにおいて、看護師が当事者とのコミュニケーションの難しさを感じていることがうかがえる結果となりました。

対応が難しい「病気そのものに関すること以外」の相談

次に、難病の当事者にどのような情報提供や相談対応を行っているか尋ねたところ、「症状の変化・状態」「治療内容・治療の方向性」「日常生活の過ごし方」「精神面(心持ち)」「保険・制度活用」「医療費」については約5割、「就学・就労」「結婚・出産・介護」「患者団体」については約3割の看護師が対応していると回答。看護師が、難病の当事者に病状や治療に関することだけでなく、日常生活、就労や結婚・出産など、さまざまな相談対応を行っていることがわかりました。

一方で、相談を受けているなかで対応が難しいものを尋ねたところ、「精神面(心持ち)について」「医療費」「保険・制度活用」「就学・就労」など、病気そのものに関すること以外が上位を占めました。この結果から、看護師は難しいと感じながらも、当事者とさまざまな事柄についてコミュニケーションをとっていることが明らかになりました。

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リリースより

医師と当事者のコミュニケーションサポートに課題、看護師の7割以上

看護師に対する最後の質問は、難病の当事者の診療において「医師と患者のコミュニケーションサポートができているか」です。回答の結果、看護師の7割以上が課題を感じていることがわかりました(「できていない」(19.2%)、「どちらともいえない」(52.4%)と回答)。「医師と患者とのコミュニケーションサポートをするために、医療現場にどのような課題があるか」に対しては、最多が「十分な時間を割くことが難しい」(60.1%)、次いで「看護師、医師、患者の三者で直接コミュニケーションできる場が少ない」(56.3%)が挙げられました。

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リリースより

難病の当事者の回答結果

約6割「医師とコミュニケーションがとれている」、約4割「看護師とコミュニケーションがとれている」

ここからは、難病の当事者の回答結果をご紹介します。まず、ご自身の病気に関して、診察時に「医師・看護師それぞれと納得できるコミュニケーションがとれているか」を尋ねたところ、63.8%が「医師と納得できるコミュニケーションがとれている」、38.0%が「看護師と納得できるコミュニケーションがとれている」と回答しました。なお、「医師と納得できるコミュニケーションがとれていない」(10.0%)、「看護師と納得できるコミュニケーションがとれていない」(20.8%)でした。

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リリースより

日常生活介助の要否と病状により、類型1(要介助、病状不安定・悪化)、類型2(自立、病状不安定・悪化)、類型3(自立、病状安定)に類型化しました。その結果、「看護師と納得できるコミュニケーションがとれている」は、類型3が34.7%、類型2が38.2%、類型1が46.8%とスコアが高くなりました。この結果より、症状や日常生活障害の程度が重くなるほど、看護師とのコミュニケーションの満足度が上がっていることが推測されます。

「医師と看護師の連携はできていない」当事者の約4割

続いて、難病の当事者自身の治療や看護において、医師と看護師の連携がとれているかを尋ねたところ、61.8%が「よく連携できている」「連携できている」と回答。一方、38.2%が「あまり連携できていない」「まったく連携できていない」と回答しました。

これは、同じ質問を行った「難病以外の病気で通院または入院した当事者」の回答結果「あまり連携できていない」「まったく連携できていない」(25.2%)と比べ、13ポイント高い結果でした。このことから、難病の当事者と看護師どちらも、医療従事者の連携に関して疑問や課題を感じていることがうかがえます。

看護師に求めること最多は「精神面(心持ち)について支えてほしい」

最後に、看護師に求めること、これまで看護師の看護で嬉しかった/助かったことを難病の当事者に尋ねました。その結果、看護師に求めることは「精神面(心持ち)について支えてほしい」(17.6%)、「症状の変化・状態について相談にのってほしい」(15.2%)、「治療内容・治療の方向性について(薬の効果や、副作用など含む)説明して欲しい」(13.8%)などが挙げられました。また、これまで看護師の看護で嬉しかった/助かったことの最多は、「親身に接してくれた」(24.0%)だったそうです。

課題“解決のヒント”につながる支援活動

この調査を監修した、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センター難病ケア看護ユニットユニットリーダーの中山優季先生は、「本調査を通じて、難病患者さんが、看護師に対して専門的な知識やスキルだけでなく、治療における精神面での支えや情報提供など、多岐にわたるサポートを求めていることがわかりました。一方で、医療従事者間の連携が必要とされながらも、看護師の方々が「十分な時間を割くことが難しい」「医師・看護師・難病患者さんの三者で直接コミュニケーションできる場が少ない」などの課題を感じており、医療現場の仕組みや体制面からも、難病患者さんのサポートを考える必要があることがわかりました」と、述べています。

今回の調査で明らかになった課題について、今後、改善されていくことが期待されます。一方で、看護師の方々が「十分な時間を割くことが難しい」と感じている状況など、早急な解決が難しいものもあるかもしれません。

そこで最後に、相談先の1つの選択肢として、さまざまな支援団体・自治体の取り組みをご紹介します。ご自身の病気に関わること、治療などのお悩みは医療従事者へ相談する必要がありますが、“病気そのもの以外”の生活に関わるようなお悩みについては、相談先として支援団体・自治体もあることを、この機会にぜひ知っていただければと思います。今回の調査結果の中でも、特に、看護師が「相談を受けているなかで対応が難しい」と感じていた内容にあわせて、遺伝性疾患プラスでこれまでご紹介してきた「生活のヒント」をご紹介します。

「精神面(心持ち)について」

自治体の相談窓口

当事者やご家族向け支援団体・コミュニティ

「就学・就労」

なお、「医療費」「保険・制度活用」に関わるコンテンツは、今後、新たに企画していく予定です。その他、「〇〇を知りたい」というお悩みをお持ちの方がいらっしゃいましたら、「お問い合わせ」から遺伝性疾患プラス編集部までお知らせください。(遺伝性疾患プラス編集部)

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