遺伝学研究の進歩により、人々の疾病予防行動に向けた新たな方法、そして個別化医療による治療法が生み出されています。
なぜ家族歴を知ることが重要なのですか?
心臓病、喘息、がん、糖尿病といったよくある病気が、家族内で見られることは昔から知られています。例えば、親が高血圧だと、子どもも大人になってから高血圧になりやすいとされています。また、血友病(血友病A/血友病B)、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血などの希少疾患も、同じ家族内で見られることがあります。
自分の家族がどんな病気にかかったことがあるか知っておくと、自分も同じような病気になりやすいかどうかがわかります。そういった情報を医師に伝えておくことで、自分の健康管理に役立てることができます。
例えば以下のような項目について、医師が個々人に対して具体的なアドバイスを行うことができます。
- 定期的な検診について
- 食生活について
- 定期的な運動について
- 喫煙やアルコールの摂取について
- 特定の遺伝学的検査を受けるかどうかについて
遺伝子について知ることは、病気の治療に役立ちますか?
人はそれぞれ体質が違うため、多くの人に効果のある治療法でも、人によっては副作用が出てしまうことがあります。そこで、遺伝学研究によって、一人ひとりの体質に合わせて、薬がその人にどのような効果があるかを予測できるような方法が開発されています。こういった研究は「薬理遺伝学」や「薬理ゲノミクス」と呼ばれています。
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遺伝子の情報は、病気の治療にどのように活用されているのでしょうか?
個々人の遺伝子の特徴によって、体内で特定の薬がどのように分解されるのかは異なるため、遺伝学的検査で肝臓の特定の酵素の遺伝子を調べることで、その人の体が薬をどのように分解して排出するかがわかります。中には、これらの肝臓の酵素の働きが弱い人もいるため、薬を上手く分解して体外に出せず、深刻な副作用が出る可能性があります。
このような遺伝学的検査は、特に抗うつ薬のような精神疾患の治療薬で、その人に合った適切な量を決めるのに役立っています。
その他には、以下のような例があります。
- ハーセプチンと呼ばれる薬が乳がんの治療に効果的かどうかについて、腫瘍内の「エストロゲン受容体」を調べる
- 小児白血病において、化学療法の適切な投与量を見つけるための検査
遺伝情報を病気の治療に利用することの懸念事項は何ですか?
病気の治療に遺伝情報を利用することについて、懸念を抱いている人もいます。例えば、懸念されるのは次のようなことです。
- オーダーメイドの医薬品はより高価になる可能性がある
- 誰もが新しい治療法にアクセスできるわけではない
- 遺伝情報が秘密保持されるかどうか
- 職場や健康保険会社からの差別の可能性
- このようなタイプの薬については、まだ解明されていない点が多く継続的な研究が求められている