ヒトの細胞には通常、23本×2組、計46本の染色体があります。これら染色体の数が変化すると、成長や発達、体の機能などに影響する可能性があります。染色体数の変化は、生殖細胞(卵子と精子)の形成時、胎児の初期発生時に起こる可能性があり、生後も体の細胞で起こる可能性があります。細胞の染色体数が46本から、増えたり減ったりした状態のことを「異数性」と呼びます。
染色体が1本余分に存在し、合計3本になった状態は、「トリソミー」といいます。「トリ(Tri-)」はギリシャ語で「3」という意味です。例えば、ダウン症候群は「21トリソミー」といわれます。これは、各細胞に21番染色体が3コピーあり、細胞あたり合計47本の染色体があることを意味します。
染色体の数が1本少なく、合計1本になった状態は「モノソミー」といいます。「モノ(Mono-)」はギリシャ語で「1」を意味します。例えば、ターナー症候群は「モノソミーX」といわれます。女性はX染色体を2本持っていることが通常ですが、ターナー症候群の女性の多くは、2本のX染色体のうち1本が欠失しており、細胞あたり合計45本の染色体があります。
まれに、一部の細胞で、23本の染色体セットが丸々余分にみられる場合があります。1セット追加、つまり、23本×3組で合計69本の染色体を持つ細胞は「3倍体」といい、2セット追加、つまり、23本×4組で合計92本の染色体を持つ細胞は「4倍体」といいます。このような細胞が体中にある場合、生きていくことはできません。
体の中の特定の細胞でのみ染色体数が異なる場合もあります。つまり、染色体数が通常通りでない(46本でない)細胞と通常(46本)の細胞の両方をもっている人もいます。こうした状態を「モザイク」といいます。染色体のモザイクは、卵子や精子以外の細胞が分裂する際に起きたエラーにより発生します。一般的に、一部の細胞で染色体の数が一本多かったり、(合計47本)1本少なかったり(合計45本)しており、その他の細胞は通常の46本の染色体を持っています。
先ほどご紹介したターナー症候群も、モザイクで発症する場合があり、これは「モザイクターナー症候群」と呼ばれます。モザイクターナー症候群の女性は、一部の細胞ではX染色体が1本になっており染色体が合計45本ですが、正常な46本の染色体をもつ細胞もあります。
最後に、がん細胞でも、染色体数に変化が生じる場合が多くあります。しかし、がん細胞でみられる染色体数の異常は、子どもに受け継がれません。がん細胞は、遺伝に関わらない体細胞で発生するためです。(遺伝性疾患プラス編集部)