【教えて!編集長 Radio ver.】⑧遺伝子治療に有用?バキュロウイルスのシステム

遺伝性疾患プラス編集部

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二瓶: 皆さん、こんにちは!「遺伝性疾患プラス」編集長の二瓶です。「教えて!編集長」は、遺伝性疾患に関わる難しい内容をわかりやすくお届けするコーナーです。

山田: 皆さん、こんにちは!遺伝性疾患プラス編集部の山田です。今回も、ラジオ感覚で聞いて頂ける音声コーナーでお届けします。

二瓶: 今回も「日本語で聞く!海外ニュース」をテーマに、解説していきます。

今回の海外ニュースは、遺伝性のステロイド抵抗性ネフローゼ症候群、患者さん由来腎細胞の遺伝子治療に成功です。

英ブリストル大学は、遺伝子治療に活用できる新たなシステムを開発し、遺伝性の腎臓病、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(SRNS)患者さん由来の腎臓の細胞で、病気の原因となる遺伝子を修復することに成功しました。

このシステムのどこが新しいかというと、治療用遺伝子の“運び屋”として、「バキュロウイルス」を使用しているところです。

山田: 「バキュロウイルス」って初めて聞きました!どういうものなんですか?

二瓶: バキュロウイルスは、昆虫に感染するウイルスです。これをヒトに感染できるように改変して、遺伝子の運び屋として使えるようにしたんですよ。

山田: “遺伝子の運び屋”っていうことは、アデノ随伴ウイルス(AAV)とかと同じような役割のウイルスですか?

二瓶: そうです。遺伝子治療で使用されるウイルスとして、アデノ随伴ウイルスやレトロウイルスなど、聞いたことがある人もいると思います。これらのウイルスは、もともとヒトに感染するウイルスなのですが、遺伝子の運び屋(ベクター)として使われているものは、基本的に病原性を無くして、安全に改変したものです。

今回使用したバキュロウイルスは、もともとヒトに感染しないものを感染できるようにしたもので、感染した後も、昆虫の体内ではないので増殖することはなく、安全だと考えられているんですよ。

山田: バキュロウイルスは、安全に使えるというわけですね。そのほかに何かこのシステムを使うメリットはありますか?

二瓶: 実は、バキュロウイルスを使ったシステムでは、ある課題を解決することが期待されています。

ウイルスを用いた遺伝子導入システムでは、用いたウイルスの大きさによって、治療に必要な遺伝子DNA)を入れられるスペースが決まっています。よく使われるアデノ随伴ウイルスは、比較的小さいウイルスなので、大きな遺伝子は入り切らない場合があるという課題があったんです。

今回の研究では、遺伝性の腎臓病の治療をするために、治療に必要な遺伝子とゲノム編集に必要なDNAを導入する必要があり、アデノ随伴ウイルスでは入りきらないことがわかっていました。そこで研究グループが目を付けたのが、バキュロウイルスでした。バキュロウイルスは、相当大きなDNAでも運ぶことができますが、昆虫細胞にしか使えませんでした。これをヒトに感染できるようにして、遺伝子治療に応用可能なシステムを作り上げたというのが、画期的なところだったんです。

山田: すごいですね!今後、実際にこの遺伝子治療を受けられるようになる可能性はあるのでしょうか?

二瓶: 今の時点では、まだ細胞を対象とした研究段階なのでわかりませんが、期待したいですね。

それでは、今日の海外ニュースのポイントをおさらいしましょう。

  1. 「バキュロウイルス」を用いた新しい遺伝子治療のシステムを開発
  2. 患者さん由来の腎臓細胞で、病気の原因となる遺伝子の修復に成功
  3. まだ承認されたわけではなく、研究段階の遺伝子治療

詳しい情報は、YouTubeの説明欄、もしくは記事の関連リンクにある海外ニュース記事をチェックしてみてくださいね。

今日はここまでです。それでは、次回もお楽しみに。さようなら!

山田: 二瓶さんのウクレレと一緒にお届けしました!(遺伝性疾患プラス編集部)

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